映画スクエア
2025年8月29日より劇場公開される、「ウルトラミラクルラブストーリー」「いとみち」の横浜聡子監督最新作「海辺へ行く道」から、主人公の奏介と奏介を取り囲む少しおかしな大人たちの個性が表現された、キャラクター特別動画「予感編」「自由編」が公開された。
「予感編」に登場するのは、いろいろ人にいろいろなことを頼まれがちな中学二年生の美術部員・奏介(原田琥之佑)、奏介と一緒に暮らす寿美子(麻生久美子)、妙な関西弁を使う包丁売りの高岡(高良健吾)、高岡の恋人でパリへ行きたいヨーコ(唐田えりか)の4名。次々と依頼が舞い込む様子、一緒にものづくりをしている先輩・テルオのアトリエに出向いたり、学校で大きな絵を描いたりする奏介、家で飼っている黒猫の行方が気になる寿美子や小さな魚を華麗にさばく高岡、“わたし、宇宙へ帰るとこ”と立花に金魚を預かってほしいと手渡すヨーコの姿が収められている。
「自由編」は、街の不動産屋でアーティストや移住希望者へ住居を案内する理沙子(剛力彩芽)、アーティストから借金を回収しに街へ戻ってきたメグ(菅原小春)、いつも海からランチを食べにやってくる五郎(宮藤官九郎)、海辺でランチ販売をしている静香(坂井真紀)の4名の様子が捉えられている。
「海辺へ行く道」の原作は、漫画家・三好銀の最高傑作とも言われる「海辺へ行く道」シリーズで、本作が初の映画化となる。アーティストの移住支援をうたうある海辺の街を舞台に、あやしげな“アーティスト”たちがウロウロするこの街で、のんきに暮らす14歳の美術部員・奏介とその仲間たちは、大好きなモノづくりをしながら、縦横無尽のイマジネーションで世界を愉快にしていく。
脚本・監督は、「ジャーマン+雨」「ウルトラミラクルラブストーリー」「俳優 亀岡拓次」「いとみち」の横浜聡子。主演をつとめるは、約800人のオーディションを経て主演を射止めた15歳(当時13歳)の原田琥之佑。麻生久美子、高良健吾、唐田えりか、剛力彩芽、菅原小春、諏訪敦彦、村上淳、宮藤官九郎、坂井真紀ら個性豊かな大人たちに加え、蒼井旬、中須翔真、山﨑七海、新津ちせなど、若手俳優たちも出演している。
一足先に本作を鑑賞した著名人によるコメントも公開された。コメントは以下の通り。
■池松壮亮(俳優)
横浜聡子作品が優しい寄り添いと共に、消えることのない深い余韻をまた残してくれた。
驚きや可笑しみや、創造することが日常の隣にあるこの街では、不思議なことや、魔法のような出来事が日々起こる。
アートとは何かという問いに現代からの答えは無いが、ここには神秘的な出会いや喜びが溢れている。
この街の誰でもないところからの眺めは、わたしたちを純粋で豊かで、生き生きとした場所へと誘ってくれる。
■北川フラム(アートディレクター)
真っ青な空と海を背景に、若者の感覚が交錯するやわらかな展開に、こちらの日常性が揺らいだ。
不思議さ、感応、包摂、循環、浸透、ズレ・・・。
発生期の美術が立ち向かう混沌と断絶の現代社会を爽やかに流れゆく、映画ならではの透明な気持ちの良さ。
横浜聡子は断絶の時代のメルヘンを描いた。
■やまだないと(友人・漫画家)
白黒の三好さんのあの海辺の街に色がつくと、きっとこんな風景だったんだな。
無表情なようでいて、みんなこっそり日々のすみっこのできごとににんやりしてる。
ひっそり明日を楽しみにしてる。
吉祥寺でもかかるんだって,三好さん。あ、照れてますね?
■トミヤマユキコ(マンガ研究者/白百合女子大学准教授)
三好銀のマンガを読んだ後に感じる、夢と現実のあわいをふわふわ心地よく漂う感覚を、この映画からも感じることができた。横浜監督が原作を全力で愛しつつ、しかし、ただマンガをなぞって終わりにならないよう、
じっくり丁寧に映像へと昇華してくれたことが伝わってきて、わたしまでうれしい気持ちになった。
へんてこで、かわいくて、どこにも似ていないこの街に、わたしもいつか行けたらいいのに。
■宮代大嗣(映画評論)
横浜監督のフィルモグラフィー上、もっとも大きなスケールと未来への視野を持った傑作!
この道はどこへ続いていくのか?
自分の選んだ道は、果たして正しかったのだろうか?
この映画に吹く潮風の香りは、すべてを笑いとばしてくれる。ウソっぱちな言葉に救われる心を発見する。
思いがけないダンスに救われる体を発見する。
あなたがついてくれた小さなウソに、来世でも感謝したくなる。
■伏見瞬(批評家/ライター)
たくさんの魅力が混ざっている。
少年が新たな世界に出会う青春劇の魅力。うさんくさくて不思議な人々が織りなすコメディの魅力。
太陽と海の間で溢れる光の魅力。
そして、撮影と編集によって躍動を生み出すアクションの魅力。
魅力の混ざった柔らかいメレンゲの中で、アートと資本の関係が再定義されていく。
誰かを糾弾することなく、映画という形式への愛を持って表現と社会を捉え直した。
長く愛されるべき映画。
【作品情報】
海辺へ行く道
2025年8月29日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷、新宿ピカデリーほか全国ロードショー
配給:東京テアトル、ヨアケ
©2025映画「海辺へ行く道」製作委員会