フィリピン人監督が、東日本大震災の傷跡を背景に、アイデンティティの再生を描く 「この場所」公開決定

映画スクエア

 フィリピン人監督のハイメ・パセナ2世が、心の復興と東日本大震災の傷跡を背景としたアイデンティティの再生を描いた映画「この場所」が、2026年春に劇場公開されることが決まった。

 「この場所」の舞台は、東日本大震災から十数年後の岩手県陸前高田市。28歳のフィリピン在住の女性・エラ(ギャビー・パディラ)は、日本人の橋本あつ子(片岡礼子)と再婚した父・エマンの訃報を聞き来日。腹違いの妹・橋本レイナ(中野有紗)に出会う。父の残した遺言書を巡り姉妹は激しく衝突するが、エラには遺産が必要な複雑な事情があった。またエラは、この街が経験した震災について、そして住む人々にもたらしている傷の深さを理解していく。

 監督は、東日本大震災の直後から、“アーティストの表現で大切な記憶を取り戻し、新しい未来を作る”ことを目的とする「陸前高田アーティスト・イン・レジデンスプログラム」に参加するなど、アート活動のために東北への訪問を重ねてきたフィリピン人監督のハイメ・パセナ2世。復興を見守る中で、自身の苦悩と向き合っていた監督は、東北の地と人々の中に“ピース(平和)”を見いだし、逆に救われたと語っている。この経験を元に、過去を忘れて生きてきたフィリピン人のエラが生き別れた父の葬儀のために陸前高田を訪れ、腹違いの妹・レイナと出会って互いの思いをぶつけ合い、心を通わすまでの“心の復興”と、東日本大震災の傷跡を背景とした“アイデンティティの再生”の物語を描き出した。

 エラ役には、2019年に「ビリーとエマ」でセクシャリティに揺れる高校生・エマを演じ、フィリピン映画芸術科学アカデミー賞で最優秀女優賞にノミネートされたギャビー・パディラ。主演作「ハイフン」でも日本人キャストと共演するなど、日本に縁の深い。橋本レイナ役を「PERFECT DAYS」などの中野有紗が演じるほか、レイナの母・橋本あつ子役に片岡礼子、エラの叔母・マイタ役に市川シェリル、その夫・安倍左太役に二階堂智、市役所の職員・西役に薬丸翔が顔をそろえる。

 ハイメ・パセナ2世監督のコメントも公開された。コメントは以下の通り。

【ハイメ・パセナ2世監督 コメント】
 映画『この場所』は、私が東北地方でビジュアルアーティストとして活動した10年以上に渡る旅路から生まれました。その中で、2011年の東日本大震災と津波によって変貌を遂げた陸前高田の回復力を目の当たりにしました。壊滅的な津波は、私自身の心の激動期と重なり、街の復興と私自身の静かな回復の両方から、この映画の物語が紡ぎ出されました。本作は、13年間のアーカイブ写真と映像を基に、ディアスポラ(離散)と家族という視点を通して、記憶、喪失、そして再生を深く考察しています。
今回、『この場所』が誕生の地・日本で上映されるにあたり、この作品を感謝のしるしとして皆様にお届け出来れば嬉しいです。本作は、フィリピン人と日本人の間の揺るぎない絆、そして本当に大切なものを再建するために記憶することの力の証しです。

【作品情報】
この場所
2026年春 新宿K's Cinema、フォーラム仙台、フォーラム盛岡ほか順次公開
配給:Spanic Films
©2024 映画「この場所」Film Partners

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