男性同性愛が禁じられた時代 刑務所で育まれた2人の関係 愛する自由を望む魂 「大いなる自由」予告

映画スクエア

 2023年7月7日より劇場公開される、2021年のカンヌ国際映画祭「ある視点部門」で審査員賞を受賞し、2022年アカデミー賞で国際長編映画賞のオーストリア代表作品となった映画「大いなる自由」の、予告編が公開された。

 予告編は、主人公ハンスとかつての恋人オスカーの幸せそうな8ミリフィルムの映像と、戦後ドイツで男性同性愛を禁じた175条の違反者摘発のために隠し撮られた、公衆トイレの監視カメラ映像の対比からスタートする。24カ月の実刑を受けたハンス。長期刑受刑者のヴィクトールと「まだここに?」「おまえは?まだ変態か?」と軽口をたたき合うことから、初めての投獄ではないことがわかる。何度も懲罰房に送られようとも愛を諦めず、新たな関係を築こうとするハンスに、「どうなるか忘れたのか」と語りかけるヴィクトール。刑務所の中での愛、そして別れが描かれている。

 あわせて公開されたビジュアルには、自身の性的指向により何度も投獄された主人公ハンスによる、独房の小窓から手を伸ばすシーンが配置されている。またチラシでは、当初はハンスを嫌悪しながらも次第に心をほどいていく長期刑受刑者のヴィクトールが、通路からハンスをのぞき込むシーンが裏面に配され、チラシの表裏の関係が刑務所の通路と扉を思わせるデザインとなっている。

 実物のポスターやチラシには直径2ミリの小さな穴が開いている仕様となっている。デザインを手がけた須山悠里氏による発案だという。須山氏は、「劇中で印象的な“部屋の小さな窓” “本に穿った穴” “ミシンの針”に象徴される、微かに、あるのかどうかも分からないような自由へのアナロジーとして穴を開けたかった」と語っている。

 「大いなる自由」は、男性同性愛を禁ずる刑法のもと、愛する自由を求め続けた男の20余年にもわたる物語。第二次世界大戦後のドイツ、男性同性愛を禁じた刑法175条のもと、ハンスは自身の性的指向を理由に繰り返し投獄される。同房の殺人犯ヴィクトールはハンスを嫌悪するが、腕に彫られた番号から、ハンスがナチスの強制収容所から直接刑務所に送られたことを知る。己を曲げず何度も懲罰房に入れられるハンスと、長期の服役によって刑務所内での振る舞いを熟知しているヴィクトール。反発から始まった二人の関係は、長い年月を経て互いを尊重する絆へと変わっていく。

 主人公ハンスを演じたのは、ミヒャエル・ハネケ監督「ハッピーエンド」などのフランツ・ロゴフスキ。殺人犯ヴィクトール役を、「Bright Nights」(日本未公開)で第67回ベルリン国際映画祭の最優秀男優賞を受賞したゲオルク・フリードリヒが務めている。監督・脚本は、オーストリア人監督のセバスティアン・マイゼ。2011年の長編デビュー作「Still Life」(日本未公開)以来の劇映画となる。

【作品情報】
大いなる自由
2023年7月7日(金)、Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下ほか全国順次公開
配給:Bunkamura
©2021FreibeuterFilm•Rohfilm Productions

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