オリジナルへのリスペクトにあふれ、新世代キャストも充実 2022年版「スクリーム」【飯塚克味のホラー道】

映画スクエア

スクリーム(2022) ブルーレイ+DVD (C) 2021, 2022 Paramount Pictures.

飯塚克味のホラー道 第20回「スクリーム(2022)」

 メタ・ホラーというジャンルをご存じだろうか?登場人物たちが、ホラー映画の定義やルールを語り、「こういう時は、裏口から逃げようとすると犯人が先回りしているんだ」とか言って、危機を回避しようとしたりする作品のことだ。諸説はあるが、この設定を大々的に取り上げて成功を収めたのが、1996年に公開された『スクリーム』だった。この映画は、80年代から続くホラー映画のシリーズ作品に飽き飽きしていた当時の観客に受けまくり、世界中で大ヒット。即、続編が作られ、『ラストサマー』『ルール』のような類似シリーズも作られた。2011年にはホラー映画の設定そのものをひっくり返したような『キャビン』が公開され、メタ・ホラーはいったん終息することになる。

 この『スクリーム』を生み出したのはウェス・クレイヴン監督だ。監督になる前は大学の教師で、1972年に『鮮血の美学』で監督デビュー、以降『サランドラ』(1977)、『エルム街の悪夢』(1984)、『ゾンビ伝説』(1988)、『壁の中に誰かがいる』(1991)など、ホラーの中でも新しい表現を追求し、道を切り開き続けてきた。2011年の『スクリーム4:ネクスト・ジェネレーション』を最後に、2015年に他界している。

 そんな『スクリーム』だが、2022年になって、まさかの復活。シリーズ5作目というと、何だか敷居が高いように感じるが、これまでのシリーズ作を観ていなくても全然大丈夫な作りになっているので、安心して楽しんでほしい。(もちろん一作目だけでも見ておいた方がより楽しめるのだが)

 今回、監督を務めたのはマット・ベティネッリ=オルピンとタイラー・ジレットのコンビ。『デビルズ・バースデイ』(2014)や、花嫁が夫一族の殺し合いゲームに強制参加させられる『レディ・オア・ノット』(2019)などを監督してきたが、本作が全米で大ヒットとなり、第一線の監督に躍進した。オリジナルで脚本を担当したケヴィン・ウィリアムソンは製作総指揮として参加している。

 冒頭はまるでオリジナル第1作を思わせる出だし。家で留守番をしている女性に電話がかかってきて、好きなホラー映画を聞かれる。オリジナルではドリュー・バリモアが『13日の金曜日』(1980)の犯人を聞かれ、“ジェイソン”と間違って答えてしまい、殺人鬼に惨殺されてしまう。今回は好きなホラー映画を『ババドック ~暗闇の魔物~』(2014)と答え、登場人物の微妙な心理を描くエレヴェイテッド・ホラーについて解説したりするのが、何とも可笑しいところ。舞台となるのはオリジナルシリーズと変わらないウッズボロー。妹が襲われた報を聞き、彼女の姉サムが街に帰ってきて、犯人捜しが本格的に進みだす。中盤になるとオリジナルキャストであるネーヴ・キャンベルやコートニー・コックス、デヴィッド・アークエットも参加。映画に華を添え、ラストまで大いに盛り上げてくれる。

 日本では残念ながら劇場公開が見送られ、ソフトリリースになってしまったが、決して出来が悪いからではない。それどころか、オリジナルシリーズへのリスペクトにあふれ、新世代キャストの充実ぶりも目を見張るものになっている。痛い描写もたっぷり!あと音響がすさまじい迫力なので、視聴の際はできることならサラウンドシステムでの鑑賞を勧めたい。特典ではウェス・クレイヴン監督の功績について関係者が語る「巨匠に捧ぐ」が感激もの。全米での大ヒットを受けて、すでに更なる続編の制作が決定したとの報道もされている『スクリーム』新章。是非、家庭劇場で飛び上がって楽しんでもらいたい。

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飯塚克味(いいづかかつみ)
番組ディレクター・映画&DVDライター
1985年、大学1年生の時に出会った東京国際ファンタスティック映画祭に感化され、2回目からは記録ビデオスタッフとして映画祭に参加。その後、ドキュメンタリー制作会社勤務などを経て、現在はWOWOWの『最新映画情報 週刊Hollywood Express』(毎週土曜日放送)の演出を担当する。またホームシアター愛好家でもあり、映画ソフトの紹介記事も多数執筆。『週刊SPA!』ではDVDの特典紹介を担当していた。現在は『DVD&動画配信でーた』に毎月執筆中。TBSラジオの『アフター6ジャンクション』にも不定期で出演し、お勧めの映像ソフトの紹介をしている。


■スクリーム(2022) ブルーレイ+DVD
2枚組
4,980円税込
(C) 2021, 2022 Paramount Pictures.

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