映画スクエア
太宰治による戦争を描いた同名短編小説を、監督・福間雄三、主演・窪塚俊介のタッグで映画化した「未帰還の友に」が、2023年12月15日より劇場公開されることが決まった。
原作「未帰還の友に」は、1946年5月号の「潮流」に発表された短編。戦争に出征したまま帰って来ない教え子の身を案じながら、太宰を思わせる語り部の”先生”が過去を回想する物語で、戦争下で当たり前の生活が一変していく様子だけでなく、出征した教え子の恋愛心理の機微や、戦争によってちりぢりになってしまった人間のはかなさも描かれている。また映画オリジナルとして、当時の新宿ムーランルージュの舞台で出征する学生たちにも絶大な人気を博した明日待子や、教え子と恋に落ちる新人ダンサーのマサ子も登場する。
監督は、「女生徒・1936」の福間雄三。主人公の”先生”を窪塚俊介、教え子の”鶴田”を「ロボット修理人の愛(Ai)」に主演した土師野隆之介が演じる、鶴田と恋に落ちる居酒屋の娘”マサ子”役に清水萌茄、”井伏鱒二”役に萩原朔美が顔をそろえる。
監督・キャストのコメントも公開された。コメントは以下の通り。
【コメント】
■窪塚俊介(先生役)
太宰治氏による私小説ということで、この作品の奥行きが一気に広がるのは確かだが、純粋に短編小説としてとても味わい深いものを感じました。語り部である「先生」なる人が、後に愛人とともに入水しない人物だとしても。太宰治氏の人生の中の切り取られた一時期を演じるのではなく、「未帰還の友に」に登場する「先生」として生きることを大切に過ごしました。
■土師野隆之介(鶴田役)
平和な生活を送っている僕が、当時の若者の声を代弁することの怖さと責任を感じ、だからこそ形だけの演技であってはならない、嘘であってはならないという思いで演じました。
この作品の中で鶴田の存在は、戦禍における一縷の希望であり、同時に絶望の象徴でもありました。演じていて辛かったです。人が人を想うことの強さ、美しさを感じていただけたらと思います。戦争の足音を感じる昨今、この作品が小さな波紋となって広がっていってくれることを願っています。
■清水萌茄(居酒屋の娘・マサ子役)
戦争に翻弄され、絶望の淵であっても真っ直ぐに鶴田さんを愛するマサ子を演じられたことは、とても嬉しいと同時に身が引き締まる思いでした。作中の随所に織り込まれているマサ子のシーンからでも、彼女の人生や覚悟の変化が伝わるように、またあの時代に人を愛するとはどういうことなのか観た方が考えられるように、悩みながら自分なりに試行錯誤しました。文語的な美しい台詞が沢山あるので、新しい読書体験をする感覚で楽しんで頂きたいです。
■萩原朔美(井伏鱒二役)
映画の中の井伏鱒二は、人間のさがの様なものを語る人物のような気がしたので、そのように心がけました。セリフの中に諦念を感じました。諦めとは、あきらかになる事なので、きっとあきらかになった事があったに違いありません。実際には私よりも年齢的には若いのです
が、後期高齢者の私よりも達観している感じです。役者としての私は、新人ですのでよろしくお願いします(笑)。
■福間雄三(監督)
原作(1946)にある「生活人の強さというのは、ノオと言える勇気ですね。…」と、太宰の言葉『かくめい』(1948)の「自分でしたことは、そのように、はっきり言わなければ、かくめいも何も、おこなわれません。…」をオーバーラップさせ、
この映画化を考え始めました。本作では、いままでの映画にはない、新鮮な太宰治像が生まれてきたな、表現できたなと思っています。さらに、鶴田は、土師野君でなければできないナイーブな鶴田像ができていると感心しています。
この映画が、参加されたスタッフ・キャスト、それぞれのものになっているように、これから観られる方も、きっと自分のものにしていただけると確信しています。
【作品情報】
未帰還の友に
2023年12月15日(金)よりアップリンク吉祥寺ほか全国ロードショー
配給:トラヴィス
©️GEN–YA FILMS 2022