2024年11月8日より、世界最古の歴史と格式を持つパリ・オペラ座のバレエ学校でエトワールを目指す少女ネネの物語「ネネ -エトワールに憧れて-」が劇場公開される。本作の公開にあわせ、芸術に魂をささげた者たちのドラマが魅力の「芸術の秋に観たい映画3作品」を紹介する。
「ネネ -エトワールに憧れて-」は、バレエの世界を描いた作品。バレエの美しさと厳しさを鮮やかに描くのと同時に、人種差別や才能へのねたみなどに苦しみながらも、常に前向きに生きるネネの姿を通して、その周りの人々も成長していく姿を描く。
クラシック音楽の世界を追ったドキュメンタリー作品の「ビバ・マエストロ!指揮者ドゥダメルの挑戦」は、21世紀のクラシック界に彗星のごとく登場し、全世界を魅了するベネズエラの若き指揮者の栄光と苦悩、そして挑戦に密着した。
「恋するピアニスト フジコ・ヘミング」で描かれるのは音楽の世界。数奇な運命をたどり、世間から注目されたのは60代後半だったフジコ・ヘミングが、いくつもの苦難が訪れても、ピアノを弾くことを決してやめなかった姿を追う。
■「ネネ -エトワールに憧れて-」(11月8日公開)
パリ郊外の団地で育った労働者階級の12歳の黒人少女ネネ(オウミ・ブルーニ・ギャレル)。何よりもダンスが大好きで、自宅近くや郊外線RERの駅で伸びやかに踊る喜びを感じさせる彼女のダンスには人を惹きつける“華”があった。ネネはパリ・オペラ座バレエ学校の入学試験に見事合格、毎日時間をかけて髪をシニヨンにまとめ、熱心にレッスンに励むネネは才能を花開かせていく。だがネネが憧れている、パリ・オペラ座の最高位“エトワール”だった校長マリアンヌ(マイウェン)は伝統を守ることに固執し、「バレエは白人のもの」とネネを邪険に扱う。またネネを羨み、あるいは妬む同級生たちの嫌がらせも始まる。このままバレエを続けるか苦悩するネネ…そんな最中、マリアンヌの隠された秘密が明らかになる。
■「ビバ・マエストロ!指揮者ドゥダメルの挑戦」(10月4日より公開中)
ベネズエラに生まれ、10代の頃から天才指揮者として名だたる巨匠たちの薫陶を受けてきたドゥダメルは、弱冠28歳で名門ロサンゼルス・フィルハーモニックの音楽監督に就任。たちまちクラシック界で注目を集めると共に、『TIME』誌が選ぶ「世界で最も影響力のある100人」にも選出。2016年にはコールドプレイ、ビヨンセ、ブルーノ・マーズと共にスーパーボウルのハーフタイムショウに出演。本作は、そんなジャンルの枠を超えスターへの階段を駆け上がり続ける、クラシック界の新ヒーローの物語―――となるはずであった。しかし、2017年、政治的混迷を極めるベネズエラの反政府デモに参加した若き音楽家が殺害され、ドゥダメルは現マドゥロ政権への訴えをNYタイムズ紙に展開。大統領府と対立したことでツアーが中止にさせられ、祖国へ足を踏み入れることすらも禁じられてしまう。祖国の子供達と交わした「いつか必ずまた指揮をしに行く」という約束を守る為、ドゥダメルは世界各地で、タクトで語り続ける。
■「恋するピアニスト フジコ・ヘミング」(10月18日より公開中)
子どもの頃、寝床に着くと聞こえてきたのは、母が弾くショパンの「ノクターン」。その音楽に魅了され、ピアノに触れた時から、フジコの音楽の旅が始まった。数奇な運命をたどり、世間から注目されたのは60代後半。いくつもの苦難が訪れても、フジコはピアノを弾くことを決してやめなかった。90歳を超えてもなお、世界中で精力的に演奏を続け、公演はどこもソールドアウト。2024年もたくさんの公演を控えていた中、フジコは4月に急逝した。演奏の原動力となったのは、家族である動物たちや自分を信じること。各国に家を持ち、愛する猫や犬たちに囲まれ、ピアノを弾く毎日が、彼女の愛すべき世界だった。2018年に異例のロングランヒットを記録した映画『フジコ・ヘミングの時間』から6年。フジコの2020年から4年間の旅路を演奏と共に描くドキュメンタリー作品。