2024年8月23日より劇場公開される、永瀬正敏、浅野忠信、佐藤浩市が出演する、安部公房の同名小説を石井岳龍監督の手によって映像化した映画「箱男」から、キャスト陣がそれぞれ箱に入り、のぞき窓から目元だけを出した状態で行われた異例のインタビュー映像が公開された。
インタビュー映像に登場するのは、多くのシーンを箱の中で過ごした主演の永瀬正敏をはじめ、共演の浅野忠信、佐藤浩市、さらには劇中では一度も箱をかぶることがない白本彩奈の4人。27年前に企画が頓挫した当時も、役作りとして滞在先で箱をかぶり続けていたという永瀬正敏は、“箱”に対する思いが人一倍強いようで、「だんだん落ち着いてきて心地よくなってくるんですよね」と語り、「自分のよく知っている場所、家の中などを見ていても少し感じが変わってくるんですよね。空気の流れも変わるし、反響するものも変わっていくし、なんとも言えない気分になる」と、箱の中に入り続けることで、なじみのある景色すら変わって見えることを明かしている。
本作で箱男の存在を乗っ取ろうとするニセ箱男を演じた浅野忠信は、例えばスタッフ間で言い合いなどが生じた時に、止めた方が良いと考える自分がいるのに、箱をかぶっていたことで「自分には関係ないみたいな気持ちになれるのがすごく不思議」と、普段社会に参加していることを実感させられたと語っている。主人公を誘惑する謎の女・葉子を演じる白本彩奈は、「箱の中から失礼します、箱女です」と自己紹介。箱の中については「懐かしさがあって落ち着きますね」と、本編ではかぶることのなかった箱の感想を述べている。
主人公の“わたし”を利用しようとたくらむ軍医を演じる佐藤浩市は、箱を現代における携帯電話に例え、「自分はのぞいているつもりだけど、実はのぞかれているということがいわゆる一つのテーマだと思う」と語りつつ、捉え方は十人十色で、「ひとそれぞれ見方が変わってもいい、それをみんなで映画を観終わったあとに話し合ってほしい作品」と訴えている。
「箱男」は、ダンボールを頭からすっぽりとかぶり、都市を徘徊(はいかい)し、のぞき窓から一方的に世界をのぞき、ひたすら妄想をノートに記述する”箱男”を描いた作品。カメラマンである“わたし”(永瀬正敏)は、街で偶然目にした箱男に心を奪われ、自らもダンボールをかぶり、”箱男”としての一歩を踏み出す。しかし、“わたし”をつけ狙い”箱男”の存在を乗っ取ろうとするニセ医者(浅野忠信)、「箱男」を完全犯罪に利用しようとたくらむ軍医(佐藤浩市)、“わたし”を誘惑する謎の女・葉子(白本彩奈)など、数々の試練な襲いかかる。
安部公房が1973年に発表した小説「箱男」は、「人間が自己の存在証明を放棄した先にあるものとは何か?」をテーマとした作品で、ヨーロッパやハリウッドの著名映画監督が原作権の取得を試みたが、許諾が下りなかった。そんな中、最終的に安部公房本人から直接映画化を託された石井岳龍によって、1997年に製作が決定するも、撮影は突如頓挫した。それから27年後の安部公房生誕100周年となる2024年、当初の予定と同じく永瀬正敏と佐藤浩市に加え、浅野忠信や白本彩奈らが出演する本作が完成した。
【作品情報】
箱男
2024年8月23日(金)全国公開
配給:ハピネットファントム・スタジオ
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