実際の未解決殺人事件 捜査をした刑事本人が主演 真相に迫る異色ミステリー 「とら男」公開決定

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実際の未解決殺人事件 捜査をした刑事本人が主演 真相に迫る異色ミステリー 「とら男」公開決定

 元刑事が本人役で出演し、1992年9月に起きた「金沢女性スイミングコーチ殺人事件」に迫る映画「とら男」が、8月6日より劇場公開されることが決まった。

 「とら男」は、実際の未解決事件の真相に迫る、セミドキュメンタリータッチのミステリー映画。ある事件のことが忘れられないまま孤独に暮らしている元刑事のとら男は、東京から植物調査に来た女子大生のかや子と偶然出会う。とら男の話に興味を持ち、事件を調べ始めるかや子。そして、誰からも忘れられた事件は、ゆっくりと動き出していく。現実とフィクションの二重構造を軸に、闇に葬られた事件の謎と真実を世間に問う作品となっている。

 とら男を演じるのは、未解決事件のまま2007年に時効が成立した「金沢女性スイミングコーチ殺人事件」を実際に捜査した刑事で、犯人の目星をつけながらも逮捕に至らなかった過去を持つ西村虎男。本人役で主演し、第22回TAMA NEW WAVEではベスト男優賞を受賞した。

 脚本・監督は、事件のあった金沢出身で、CM・MVを中心に映像ディレクターとして活躍し、本作が初の劇場用長編映画となった村山和也。小さい頃に野球をしていた遊び場が殺害現場になったことに衝撃を受けた村山は、事件を過去のものではなく今の出来事として描いたという。

 村山和也監督、西村虎男、かや子役の加藤才紀子のコメントも公開された。公開されたコメントは以下の通り。

【コメント】

■村山和也監督
みなさんは、人生で一番幸せな時はいつですか?
私は、何も心配することなく暮らせて親友も父もおばあちゃんもおじさんも、みんな生きていた小学生の頃です。そんな時代にある殺人事件がありました。しかも、よく野球をしていた公園で犯行が起こった事件です。この映画は、そのことなら彼らにも分かるのではという個人的な想いから始まっています。
事件を調べていく中で出会った元刑事の西村虎男さんには、本を書いてまで誰かに伝えたかった積年の想いがあります。それを背負って映画を作ることになるわけですが、撮影しながら取材したりと、事件を再捜査するような感覚で作った映画です。こんな特殊な映画に参加してくれた加藤さんはじめ役者、スタッフのみなさん、そして亡くなった撮影監督の鈴木イヴゲニには本当に感謝の気持ちしかありません。
さまざまな想いの詰まった「とら男」が、この化石のような未解決事件を少しでも動かすことができたらと思います。

■西村虎男
映画の世界とは無縁の私が『とら男』の主演として銀幕に? 未だに信じられないような気持ちでいます。
村山監督とは、私が警察を退職した後、ある目的を持って出版した電子書籍を通じて知り合い「事件を題材にした映画を作る……」との話は聞いていたのですが、私が出演する映画になるとは夢にも思っていませんでした。
3年後に「ロケハンに付き合って欲しい」と言われ、軽い気持ちで撮影場所などの案内をし、その時に初めて私が出演する映画として準備が進められていることを知り、一瞬戸惑ったのですが、村山監督の映画に掛ける熱意と人柄に押し切られ「なるようになれ」との思いで、カメラの前に立つことにしました。
現場では『かや子』役の加藤才紀子さんに合わせてもらうような撮影で「加藤さんは、やりづらかったのでは?」と思っています。
村山監督同様、この映画で「社会の何かが変わるきっかけになれば?」と思っています。

■加藤才紀子
情報過多な時代を生きる中で、誰もが「既に終わった」と思う事柄に対して、「終わることができない」人たちがいます。私が演じた梶かや子という役は、その点に関して強いこだわりを持っているのですが、周りの人は次へ次へと進んでいってしまう。
そんな中、とら男さんと出会い、まるで初めて見つけた同志のような気持ちを抱き、未解決事件に深く関わるようになります。撮影中はドキュメンタリーとフィクションの狭間にいるような、なんとも不思議な感覚でした。俳優として、人の人生にここまで関わったことは、後にも先にも「とら男」が初めてで、村山監督との出会いから撮影、完成に至るまで、たくさんの奇跡の連続だったように思います。ぜひ、スクリーンでご覧ください。

【作品情報】
とら男
2022年8月6日(土)より渋谷ユーロスペースほか全国順次公開
8月20日(土)からシネモンド(金沢)、8月26日(金)から出町座(京都)、8月27日(土)からシネヌーヴォ(大阪)、ほか名古屋シネマテーク(公開日未定)
(C)「とら男」製作委員会

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