第二次大戦後でPTSDを抱えた元女性兵士 生と死の闘いを描く 「戦争と女の顔」公開決定

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第二次大戦後でPTSDを抱えた元女性兵士 生と死の闘いを描く 「戦争と女の顔」公開決定

 カンヌ国際映画祭で監督賞と国際批評家連盟賞を受賞した映画「戦争と女の顔」が、7月15日より劇場公開されることが決まった。

 「戦争と女の顔」は、ノーベル文学賞を受賞した作家・スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチの証言集「戦争は女の顔をしていない」を原案に、戦後の女性の運命を描いた作品。1945年、終戦直後のレニングラード(現サンクトペテルブルグ)。荒廃した街の病院で、PTSDを抱えながら働く看護師のイーヤは、後遺症の発作のせいで面倒をみていた子供を死なせてしまう。そこに、子供の本当の母で戦友のマーシャが、戦地から帰還する。マーシャもまた後遺症を抱えていた。心身ともにボロボロの2人の元女性兵士は、自分たちの生活を再建するための闘いに、意味と希望を見いだしていく。

 監督は、アレクサンドル・ソクーロフに学んだ新鋭カンテミール・バラーゴフ。「ラブレス」「裁かれるは善人のみ」をはじめ、ハリウッドでも実績を持つウクライナ出身のアレクサンドル・ロドニャンスキーがプロデューサーを務めている。新人のヴィクトリア・ミロシニチェンコ(イーヤ役)とヴァシリサ・ペレリギナ(マーシャ役)が、複雑な心理状態にある女性を演じている。

 ロシアによるウクライナ侵攻により、ロシアのカバルダ・バルカル共和国出身のバラーゴフ監督は、国外へ脱出。ウクライナ出身のプロデューサーで、息子がゼレンスキー大統領の経済顧問をしているアレクサンドル・ロドニャンスキーは、政府から名指しで作品のロシア国内での放映が禁止され、SNSで反戦のコメントを連日投稿している。日本での公開に際し、2人から反戦の思いを込めたメッセージが公開された。公開されたメッセージは以下の通り。

■カンテミール・パラーゴフ(監督)
戦争と、それを招いたロシア政府の政治的決断に強く反対している。だから私はロシアを去らなければならないと感じた。
この戦争は、ただ普通に人生を送りたい何百万という人々にとっての悲劇だ。
彼らの多くにとっては、この戦争を乗り越えること、これからの人生を送ることが難しくなるかもしれない。
ましてや、不可能になるかもしれない。これは、『Beanpole』で描かれていることと一緒だ。戦争より悪は存在しない。  

■アレクサンドル・ロドニャンスキー(プロデューサー)
私は今までロシア大統領選で投票をしたことがないが(ウクライナのパスポートを持っているので)、
耐え難いほど恥じている。そして、とてつもなく深い悲しみにいる。戦争に言い訳などはない。どんな主張があったとしても。
私はよく覚えている。ソ連が私たちにアフガニスタン戦争の絶対的な必要性を説明した時のことを。
それが悲劇的な間違いだったと認めるまで、10年の月日を費やし、15,000人のソ連兵士と100万人近くのアフガニスタン人の命を犠牲にしたことも。
今日、ベトナム、イラク、アフガニスタン戦争など自国の戦争について言い訳できるアメリカ人はほとんどいない。
そして、またしてもこの戦争は痛ましい過ちだ。
国家の経済が崩壊し、私たちの国が世界的な孤立の中停滞し、かつてないテクノロジーの格差が深まるから、という理由ではなく、この過ちにおける恥は消え去ることがないからだ。これは私たちの子供や孫の代にも残る。
私たちは黙ってはいられない。戦争に「NO」を。

【作品情報】
戦争と女の顔
2022年7月15日(金)、新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開
配給:アット エンタテインメント
© Non-Stop Production, LLC, 2019

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