谷口ジローの思いを引き継いで映画化 リアルを追求 「神々の山嶺」スケッチ画・絵コンテ公開

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谷口ジローの思いを引き継いで映画化 リアルを追求 「神々の山嶺」スケッチ画・絵コンテ公開

 7月8日より劇場公開される、作家・夢枕獏のベストセラー小説を谷口ジローが作画した同名漫画のアニメーション映画化作「神々の山嶺(いただき)」から、スケッチ画や絵コンテの一部が公開された。

 本作をアニメーション映画化したのは、プロデューサーのジャン=シャルル・オストレロ、監督のパトリック・インバート、大ヒットアニメーション映画「ウルフウォーカー」の製作チーム。フランス政府から芸術文化勲章シュヴァリエ章を授与されるほど、フランスでも人気を誇った谷口ジローは、製作チームのもとを2度訪れ、作画やストーリーの確認に携わっていた。谷口が亡くなる直前の2016年には、脚本と下絵を見ることができたという。

 アニメーション化にあたり、プロデューサーのステファン・ローランツは、「誰もが谷口ジローの作品に敬意を抱いていて、彼をがっかりさせたくない、という強い思いがありました」と語り、緻密な谷口の画力を受け継いだ写実的な表現を追求し、リアルさをキャラクター造形にも取り入れていった。一方で監督は、漫画の原作は大きな指針としながらも、エベレスト登頂に成功した人らの協力を仰ぎ、寒さの感覚、テントの中で寝たときの風の轟音、ロープの結び方、息切れなど、実際の情報を集めてアニメーション化に生かしたという。

 下絵の段階から、監督パトリック・インバートにはキャラクター造形のビジョンが見えていたといい、「漫画の原作はあらゆる創作の拠り所にはなったが、漫画を再現するのとは違う作業が待っていた。谷口の絵には細かいディテールが描き込まれていて、それをそのままなぞるつもりはありませんでした。線の数を減らしたことで、かえってアニメーターは顔の表情に集中することができました。2Dでリアルな顔を描くには、目の位置などの細かい精度が要求されます。片目が少しずれているだけで、観客に違和感を与えてしまいますから」 と、谷口とは別の構図を編み出すことにも挑戦している。

 アニメーション映画「神々の山嶺(いただき)」は、7年の歳月をかけてフランスで制作された作品。「登山家マロリーはエベレスト初登頂に成功したのか?」という登山史上最大の謎に迫りながら、孤高のクライマー・羽生丈二と彼を追うカメラマン・深町誠が、不可能とされる冬季エベレスト南西壁無酸素単独登頂に挑む姿を描く。原作の夢枕獏著の小説「神々の山嶺」は、1998年に第11回柴田錬三郎賞を受賞。同作を漫画化した谷口ジロー画「神々の山嶺」は、2001年に第5回文化庁メディア芸術祭マンガ部門・優秀賞を受賞している。完成した映画は、第47回セザール賞でアニメーション映画賞を受賞した。

谷口ジローの思いを引き継いで映画化 リアルを追求 「神々の山嶺」スケッチ画・絵コンテ公開

谷口ジローの思いを引き継いで映画化 リアルを追求 「神々の山嶺」スケッチ画・絵コンテ公開

谷口ジローの思いを引き継いで映画化 リアルを追求 「神々の山嶺」スケッチ画・絵コンテ公開

【作品情報】
神々の山嶺(いただき)
2022年7月8日(金)新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国公開
配給:ロングライド、東京テアトル
© Le Sommet des Dieux - 2021 / Julianne Films / Folivari / Mélusine Productions / France 3 Cinéma / Aura Cinéma

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