佐藤浩市の前に現れる“かえるくん” 幻想と現実が交錯 「アフター・ザ・クエイク」本編映像

映画スクエア

 2025年10月3日より劇場公開される、2000年に刊行された村上春樹の短編集「神の子どもたちはみな踊る」に収録されている4つの短編をベースに、オリジナルの設定を交えて映像化した映画「アフター・ザ・クエイク」から、佐藤浩市演じる片桐とのんが声を務める“かえるくん”が、30年ぶりに再会を果たすシーンの、本編映像が公開された。

 舞台は歌舞伎町の裏路地。早朝にゴミを拾う片桐が、うさぎのぬいぐるみを拾おうとしたその瞬間、網に覆われたゴミの山から「ははははは」と不気味な笑い声が響き、緑の細い手がゆらりと現れる。ゆっくりと立ち上がったのは、かつて片桐と東京を救ったという“かえるくん”だった。驚きのけぞる片桐を前に、かえるくんは「またこうして再会できて嬉しいです」「もしかして僕のこと覚えていないんですか」と穏やかに語りかける。片桐は驚きながらも言葉を探すものの、記憶に結びつかないため困惑する。

 「どちらさまでしたっけ」と片桐が聞くと、かえるくんは片桐に一歩近づき「かえるくんですよ。昔あなたと一緒に東京を救った、あのかえるくんです」と伝える。そしてかえるくんは声のトーンを変え、「僕が片桐さんの前に現れるのは、極めて深刻な事態になった時だけです」と告げる。30年前、東京を救った“約束”を思い起こさせるその言葉に、片桐は再び向き合わざるを得なくなる。佐藤浩市が体現するリアリズムと、のんが吹き込む不思議な温かみを帯びた声のコントラストが、本作の幻想と現実が交錯する独自の世界を際立たせたシーンとなっている。

 「アフター・ザ・クエイク」で描かれるのは、1995年の阪神・淡路大震災以降、それぞれ別の時代・場所で孤独を抱える4人の人生が交錯し、現代へとつながる喪失と回復の物語。1995年、妻が姿を消し、失意の中訪れた釧路でUFOの不思議な話を聞く小村。2011年、焚き火が趣味の男と交流を重ねる家出少女・順子。2020年、“神の子ども”として育てられ、不在の父の存在に疑問を抱く善也。2025年、漫画喫茶で暮らしながら東京でゴミ拾いを続ける警備員・片桐。世界が大きく変わった30年、人々の悲しみや不幸を食べ続けたみみずくんが再び地中でうごめきだした時、人類を救うため“かえるくん”が現代に帰ってくる。

 岡田将生、鳴海唯、渡辺大知、佐藤浩市、橋本愛、唐田えりか、吹越満、黒崎煌代、堤真一、黒川想矢、井川遥、渋川清彦、津田寛治、錦戸亮らが出演。本作のキーとなるかえるくんの声をのんが務める。監督は、ドラマ「その街のこども」、連続テレビ小説「あまちゃん」などを手がけてきた井上剛。脚本を「ドライブ・マイ・カー」の大江崇允が担当している。

佐藤浩市の前に現れる“かえるくん” 幻想と現実が交錯 「アフター・ザ・クエイク」本編映像

【作品情報】
アフター・ザ・クエイク
2026年10月3日より、テアトル新宿、シネスイッチ銀座ほかにて全国公開
配給:ビターズ・エンド
©2025 Chiaroscuro / NHK / NHK エンタープライズ

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