2024年8月より劇場公開される、「悪人」「さよなら渓谷」「怒り」などの吉田修一の同名小説を原作とした映画「愛に乱暴」から、不穏な“愛ある日常”を捉えた場面写真が公開された。また、チェコのカルロヴィ・ヴァリ映画祭のコンペ部門への出品が決定したことも発表された。
場面写真では、主人公・桃子(江口のりこ)の、一見穏やかだが心ざわつく日常が切り取られている。先に眠りについた夫の真守(小泉孝太郎)の手を切ない表情で触れる姿や、義母の照子(風吹ジュン)のごみ捨てを肩代わりする様子、台所で物思いにふける姿に加え、帰宅途中の浮かない表情の真守を切り取ったカット、そして女性(馬場ふみか)を挟んで一触即発の一幕まで、愛ある日常に不穏が迫りくるシーンが捉えられている。
カルロヴィ・ヴァリ映画祭は、主要国際映画祭の中ではカンヌ、ロカルノと並び、ヴェネツィアに次ぐ長い歴史を持つ中・東欧最大規模の映画祭。最高賞であるクリスタル・グローブ受賞作には、ジャン=ピエール・ジュネの「アメリ」やケン・ローチの「ケス」などが名を連ねる。歴史ある映画際で、「愛に乱暴」はワールドプレミアを迎える。
森ガキ侑大監督は、カルロヴィ・ヴァリ映画祭の出品について、「ようやくワールドプレミアとして『愛に乱暴』が世界の方々にお披露目できることを嬉しく思います。そして、カルロヴィ・ヴァリ映画祭という歴史ある映画祭のコンペ部門に選んでもらえたことはとても光栄ですし、本当にこの映画が報われた気がします。この映画が世界に羽ばたき、より多くの人の心の中で絶えず生きていくことを切に願っております。映画と一緒に世界の旅ができることにも幸せを感じております」と喜びのコメント。江口のりこも「この度は、歴史ある映画祭で『愛に乱暴』が上映されること、大変嬉しく思います。数ある映画の中から選んで頂けたことに感謝いたします。日本から遠く離れたチェコで、観客の皆様がどのような反応をなさるのか楽しみです」と、コメントを寄せている。
「愛に乱暴」は、愛のエゴと献身、孤独と欲望の果ての暴走を描くヒューマンサスペンス。夫の真守とともに、真守の実家の敷地内に建つ離れで暮らす桃子は、義母から受ける微量のストレスや、夫の無関心を振り払うように、石鹸教室の講師やセンスのある装い、手の込んだ献立など、いわゆる「丁寧な暮らし」にいそしみ、毎日を充実させていた。そんな桃子の周囲で不穏な出来事が起こり始める。近隣のゴミ捨て場での相次ぐ不審火、失踪した愛猫、匿名の人物による不気味な不倫アカウント、そして夫からの突然の申し出など、桃子の平穏な日常は少しずつ乱れ始める。
主人公の初瀬桃子を演じるのは、「あまろっく」など主演作が続く江口のりこ。手に入れたはずだった平穏な日常が少しずつ不穏な空気を帯び乱れていく桃子を、振り切った怪演で見せる。桃子を空気のように扱う夫・真守役に小泉孝太郎、夫に先立たれ息子への関心が高まる真守の母・照子役に風吹ジュン、真守の不倫相手・奈央役に馬場ふみかが顔をそろえる。監督・共同脚本を務めるのは、「さんかく窓の外側は夜」などの森ガキ侑大。
【作品情報】
愛に乱暴
2024年8月 ヒューマントラストシネマ渋谷、新宿ピカデリーほか全国ロードショー
配給:東京テアトル
©2013 吉田修一/新潮社 ©2024『愛に乱暴』製作委員会