映画スクエア
2025年9月5日より劇場公開される、第77回カンヌ国際映画祭の「ある視点」部門に正式出品された、ヨルゴス・ランティモス監督の公私に渡るパートナーとしても知られる新鋭アリアン・ラベド監督作「九月と七月の姉妹」から、「関心領域」でアカデミー賞音響賞を受賞したジョニー・バーンが手がけた、不穏な音響デザインが耳にこびりつく本編映像が公開された。
母親と海辺の街へ引っ越してきたセプテンバーとジュライは、陰湿な環境から離れて心機一転、同世代の友人たちにも恵まれ、海辺で笑い合う自由な時間を満喫していた。だが、そこでもジュライは姉セプテンバーの言いなりだった。支配されていることに無自覚なまま「あんなふうに生きたい」とつぶやくジュライだったが、若者たちのはしゃぎ声の背後では、場面にそぐわぬゆがんだ不協和音が鳴り続けている。
音響を手がけたバーンは、「哀れなるものたち」「ロブスター」などヨルゴス・ランティモス監督作品の常連。「関心領域」では、アウシュビッツ強制収容所と隣接地域の日常音を組み合わせ、観客に恐怖と不快感を植えつけた。本作では、「なるべく自然な音、撮影現場で録音した音を使う」という監督の方針ものもと、いびつなサウンドデザインを構築。「ジュライの視点によって音が少しずつ変容し、やがて音楽のようになっていく」というアイデアを具現化しつつ、その結果、監督が語る「ジュライというキャラクターと身体的につながる」体験を生み出すことに成功した。
「九月と七月の姉妹」で描かれるのは、生まれたのはわずか10カ月違いで、いつも一心同体の姉妹であるセプテンバーとジュライの物語。我の強い姉と内気な妹は、支配関係にありながら、お互い以外に誰も必要としないほど強い絆で結ばれている。しかし、学校でのある事件をきっかけに、シングルマザーのシーラと姉妹は、アイルランドの海辺近くにある亡き父の家へと引っ越すことになる。新しい生活のなかで、次第にセプテンバーとの関係が変化していることに気づきはじめるジュライ。ただの戯れだったはずの命令ゲームは緊張感を増していき、外界と隔絶された家の中には不穏な気配が満ちていく。
監督を務めたのは俳優としても活躍し、ヨルゴス・ランティモス監督の公私に渡るパートナーとしても知られる新鋭のアリアン・ラベド。2010年、ヨルゴス・ランティモス監督が制作・出演した「アッテンバーグ」(アティナ・ラヘル・ツァンガリ監督)で映画デビューを果たし、ヴェネツィア映画祭とアンジェ・プレミエール・プラン映画祭の最優秀女優賞を受賞。本作でランティモス監督と出会い、2013年に結婚した。その後、ランティモス監督「ロブスター」にも出演している。2014年には、「欲望の航路」でロカルノ映画祭最優秀女優賞を受賞し、セザール賞の新人女優賞にもノミネートされた。
【作品情報】
九月と七月の姉妹
2025年9月5日(金) 渋谷ホワイトシネクイント、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテほか全国ロードショー
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