映画スクエア
48歳でこの世を去ったバーバラ・ローデンの、監督・脚本・主演のデビュー作にして遺作となった1970年の映画「WANDA/ワンダ」が、7月9日より劇場公開されることが決まった。日本初の劇場公開となる。
「WANDA/ワンダ」は、アメリカの底辺社会の片隅に取り残された女性の姿を描いたロード・ムービー。舞台はペンシルベニア州。夫に離別され、子供も職も失い、あり金もすられてしまったワンダ。少ないチャンスをすべて使い果たしてしまったワンダは、薄暗いバーで知り合った男と、いつの間にか犯罪の共犯者として逃避行を続ける。
監督・脚本・主演のバーバラ・ローデンは、虐待を受けた子供時代を過ごした故郷ノースカロライナ州から逃れ、16歳でニューヨークに。ダンサーやピンナップモデルを経て女優になり、エリア・カザン監督「草原の輝き」に出演したあと、舞台でトニー賞を受賞するなど活躍した。その後、カザンと2度目となる結婚。30歳を過ぎた頃、女性らしさに縛られ、女性らしさを売り物にしてきたローデンは、自分のアイデンティティや目標を見いだせない従順な女性像に疑問を持ち、本作につながった。 1980年、乳がんにより48歳でこの世を去った。
1970年のヴェネツィア国際映画祭で最優秀外国映画賞を受賞したアメリカ映画でありながら、アメリカ本国ではほぼ黙殺された本作。フランスの偉大な小説家・監督のマルグリット・デュラスをはじめ、ジョン・カサヴェテス、オノ・ヨーコ、ジョン・ウォーターズ、ソフィア・コッポラなど、名だたる映画作家やアーティストによって高く評価された。
2003年にはイザベル・ユペールが配給権を買い取り、フランスで上映。その後、オリジナルのネガ・フィルムが発見され、マーティン・スコセッシ監督が設立した映画保存運営組織ザ・フィルム・ファウンデーションとイタリアのファッションブランドGUCCIの支援を受け、プリントが修復された。2017年には、アメリカ国立フィルム登録簿に永久保存登録されている。
【作品情報】
WANDA/ワンダ
2022年7月9日(土)よりシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開
配給:クレプスキュール フィルム
(C) 1970 FOUNDATION FOR FILMMAKERS