2025年12月18日
提供:共同通信PRワイヤー
プレスリリース詳細 https://kyodonewsprwire.jp/release/202512171150
本プレスリリースは発表元が入力した原稿をそのまま掲載しております。詳細は上記URLを参照下さい。また、プレスリリースへのお問い合わせは発表元に直接お願いいたします。
サーキュラーエコノミーへの移行を見据え、建材の再利用を検証
2025年12月18日
積水ハウス株式会社
積水ハウス株式会社(以下、当社)はこのたび、CLT(直交集成板)*1再利用の取り組み「旅するCLT」を発表します。当社は大阪・関西万博 日本政府館(以下、日本館)における「CLT再利用パートナー」*2に選定されており、本取り組みを通じて日本館で利用されたCLTパネルの再利用に取り組みます。
大阪・関西万博 日本政府館(提供:経済産業省)
■「旅するCLT」の概要
「旅するCLT」では、CLTパネルを再度建材として利用して建築を行います。一度きりの再利用ではなく、建築物等の複数回の解体・再利用を繰り返し、旅をするようにそれらが全国を巡回することを目指します。
計画としては、再利用における検証や試行を重ねた後、2027年以降には万博の記憶が刻まれたCLTパネルを再利用した建築物等を日本各地で施工・制作。その後、解体と再構築を繰り返す予定です。推進にあたっては、当社の寄付によって東京大学総括プロジェクト機構内に設立した「国際建築教育拠点(SEKISUI HOUSE – KUMA LAB)」、東京大学大学院農学生命科学研究科の青木謙治教授、東京大学大学院工学系研究科の権藤智之准教授とともに、それぞれの専門性を活かして産学協働で取り組みます。
*1 Cross Laminated Timber(直交集成板)。ひき板(ラミナ)を並べた後、繊維方向が直交するように積層接着した木質系材料。国内の森林資源の活用促進や地域経済の活性化など、林業政策の観点からも注目されており、官民を挙げて普及が推進されています。
*2 関係省庁が主導する「大規模イベント等におけるCLT活用推進事業」の一環として、日本館で使用されたCLTパネルを再利用することを目的に、民間企業および公的団体を対象とした公募により選定されたパートナー。5地方公共団体、8企業が選定され、万博終了後に各団体、各社に配分されたCLTパネルの再利用に取り組む。
全体フロー図
■本プロジェクトの位置づけ
当社は本プロジェクトを、2024年12月に発表した、家がまた誰かの家に生まれ変わる『循環する家(House to House)」*3の実現に向けた検証の一環として位置づけています。そのため、建築物等の施工・制作には、日本館で利用されたCLTパネルに加え、当社構法の住宅解体材の再利用も予定しています。さらに、再利用の各プロセスにおける検証や試行を通じて、住宅の分解や再構築を容易にする部材およびシステム、再利用を前提とした住宅解体を可能にする技術や設計手法、デジタル情報の活用等、様々な知見の蓄積や方法論の構築を図ります。これにより、解体材の再利用のみにとどまらず、将来的なサーキュラーエコノミーへの移行に向けた足がかりとなることを目指してまいります。
■解体・再利用における検証テーマ
Design | 既にあるものから、次を描く
解体材を用いた設計は、既にある材料の個性を読み取り、次の風景を構想する行為です。材料の履歴や記憶を尊重しながら、限りある資源の中で新たな魅力を見出す感性が求められます。KUMA LABの活動のひとつである、デジタルデータをもとに3Dプリンターやレーザーカッターなどの機械でものづくりを行う「デジタルファブリケーション技術」を活用しながら、建材の供給に先立って具体的な設計検証を行ってまいります。
Material | 解体材に、第二の役目を与える
解体材の多くは、再利用するための評価指針が存在していないために「廃材」として扱われてしまいます。解体材を再度建築に利用するために、残存性能の把握と評価指針の確立が不可欠です。木質材料の建築物への適用やそれに関する評価・開発・設計などを専門とする青木教授ご指導のもと、建材の履歴把握・残存強度評価・構造耐力計算指標などを検証していきます。
System | 循環を可能にする仕組みを、社会実装する
解体材の再利用を一般化するために必要なのは、設計・生産・物流などの一連の流れが機能するシステムの構築です。これまで分断されていた各プロセスを、解体・再利用による循環が実現できるように結びなおします。建築生産から建築構法までを専門とする権藤准教授ご指導のもと、持続可能な住まいづくりの新しい原型を目指して検証に取り組みます。
Emotional Value | 感性が、循環を豊かにする
再利用材には、機能以上の価値が眠っています。それは、時間を経た木の手触りや、誰かが暮らした痕跡、環境への小さな思いやりといった「感性価値」です。感性価値を大切にする当社のデザイン思想「life knit design」のもとに、感性の力で資源循環を文化として根付かせることを目指します。
*3 「家がまた誰かの家に生まれ変わる『循環する家』Circular Design from House to House」
https://www.sekisuihouse.co.jp/company/topics/topics_2024/20241204/
■スケジュール
2027年まで続く長期的なプロジェクトとして、以下の通り4つのフェーズに分けて進行しています。
準備段階であるPhase 0では、東京大学および外部講師による講義を通じて知見を深めるとともに、学生を交えて打ち合わせを重ねながら、再利用材の仕分け方法や制作物の方向性について検討を行いました。Phase 1では、CLTを用いたモックアップの作成や、当社の資源循環センターへのフィールドワークなどを重ねながら、学生らと共に具体的な企画検討を行いました。Phase1の終わりには、隈研吾氏を交えた再利用企画について意見交換を実施しました。
「国際建築教育拠点(SEKISUI HOUSE – KUMA LAB)」とは
建築学における最先端のデジタルテクノロジーの活用研究と国際的な人材育成を目指す東京大学と、“「わが家」を世界一幸せな場所にする”というグローバルビジョンを掲げる積水ハウスによる、「未来の住まいのあり方」をテーマとした研究の場として発足したのが「国際建築教育拠点(SEKISUI HOUSE - KUMA LAB)」です。
「国際建築教育拠点(SEKISUI HOUSE - KUMA LAB)」は国際デザインスタジオ、デジタルファブリケーションセンター、デジタルアーカイブセンターの三つの活動を展開しています。
(1)国際デザインスタジオ
国際デザインスタジオは、世界から招聘された第一線で活躍する建築家が指導にあたるデザインスタジオの運営、並びに世界の大学との合同スタジオの開講を通じて、東京大学を建築教育における国際的なハブとしての地位を確立します。この取組みにより、国際的に活躍する人材の育成を目指しています。
(2)デジタルファブリケーションセンター
デジタルファブリケーションセンターでは、デジタルファブリケーション技術を活用して創り出される建築が、人々の豊かな人間性を反映した生活にどのように貢献できるかを実践的に研究しています。さらに、建築学科においてデジタルテクノロジーの専門知識を持つ高度な人材を育成することを目指しています。
(3)デジタルアーカイブセンター
デジタルアーカイブセンターは、建築アーカイビングの手法・思想に関する研究や実践によって、建築資料のアーカイビングを主軸とした研究・教育拠点の構築を目指します。学内外の建築家の重要な図面や模型、資料をデジタル化し、国内外の研究者がアクセスできるようなアーカイブプラットフォームの構築に取り組むことで、国際的な建築史研究・教育ネットワークの構築に貢献します。
KUMA LABからは、建築意匠・建築設計を専門とする平野利樹特任講師と建築家でもある齋藤遼学術研究職員を中心に、本取り組みに携わっていただいています。