現在公開中の「空に住む」の青山真治監督と「スパイの妻」の黒沢清監督によるトークイベントが、11月9日に都内で開催された。トークイベントは「空に住む」公開記念として行われ、青山監督の「空に住む」の感想などが語られた。
「空に住む」の感想を聞かれた黒沢監督は、「本当に傑作だと思いましたよ。直実の鬼気迫る表情がとても怖かった。『ローズマリーの赤ちゃん』を思い出しました。直実はラストシーンだけ表情が明るくなるのですが、それまでは終始暗く髪の毛もバサッと顔にかかっていて表情が見えない。またタワーマンションでステキな生活をしているように見えますが、実際よく見ると位牌が飾ってあったり、いつ登場するかわからない不気味な叔父さん夫婦がいたりと。常に死と隣り合わせの狂気を感じました。特に猫が怖いですよね。普通猫って可愛く撮ると思うのですが、この猫がいつ登場するか見当がつかない」と、ホラー映画に造詣が深い黒沢監督ならではの感想を述べた。青山監督は「そんな見方をするのは黒沢さんだけですよ」と言いながらも、「僕もタワマンでの人間関係は『ローズマリーの赤ちゃん』を思い出しましたけども」と黒沢監督の見方に同意していた。
黒沢監督のホラー視点の感想は続き、直実が家族と歩く作家の吉田を遠くから見つめるシーンについては、「あの吉田の後ろを歩くのは愛子の生霊?」と質問。すると青山監督は「あれは吉田の子供です。だから幻影とかではないです(笑)」ときっぱり否定。だが、「ただ直実がなぜ彼女(吉田の子供)のことをしばらく見つめていたのかという疑問はありますけど」と返答に含みを持たせた。
話題は役者の声となり、「演じる上で声って重要だと思います。俳優さんのもって生まれたものだから、独特の声の方はあの人が話しているってわかることは映画を作るうえで非常に重要です。多部さんの声もまろやかでいい声ですよね。あと髙橋洋さんもいい声ですよね」と語ると、青山監督は「(「スパイの妻」に出演する)高橋一生さんも蒼井優さんも目を瞑って聞いても、お2人だと分かる声の持ち主」とそれぞれの作品に出演した役者の声を褒めた。
最後に黒沢監督は「この映画は物語だけみるとホンワカした映画に見えると思いますが、かなりショッキングな相当きわどいゾクゾクする映画だと思います。是非この映画のすごさを周りの人に勧めてください」とコメント。対して青山監督は「黒沢さんの映画で3週連続ベストテン入りしこんなにも長くランキングにいたことのある映画は、『スパイの妻』が初めてだと思います。これは弟子としてはかなり嬉しいことです。このままさらに大ヒットするといいなと思います」と、長年の付き合いならではの独特な表現で互いの作品を勧め合い、和やかなムードの中イベントは終了した。