”史上最も狂った映画撮影” 空前のスケールでソ連全体主義社会を再現 「DAU. ナターシャ」予告公開

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 空前のスケールでソ連全体主義社会を再現し、スターリン体制下で生きる人々を描いた映画「DAU. ナターシャ」の予告編が公開された。

 公開された予告編は、スターリン体制下の1952年を舞台に、ソ連の秘密研究所に併設された食堂の責任者として働くウェイトレスのナターシャの姿から始まる。だが、食堂が閉店した夜になると雰囲気は一変、ナターシャは同僚ウェイトレスのオーリャと気だるくお酒を飲みかわし、研究所の人たちはハイテンションに宴を開く。さらに、ナターシャと高名な科学者リュックのラブシーン、謎めいた研究装置と実験成功を喜ぶ科学者など、ここで生きる人々の生々しい姿が切り取られている。最後は、KGBに連行されたナターシャが、「答えたら殺す?」と男に聞く声で終わる。

 予告編に登場する人々の映像に挟まれて表示される字幕では、「オーディション人数約39.2万人」「欧州史上最大の1.2万㎡」「主要キャスト400人」「エキストラ1万人」「セット内で生活2年間」「衣装4万着」「撮影期間40ヶ月」「35mmフィルム撮影素材700時間」「総製作期間15年」と、巨大な製作規模が示される。そして、「史上最も狂った映画制作」という「The Telegraph」が評した言葉が表示される。

 本作では、キャストたちは当時のまま再建されたセットの秘密研究都市で約2年間にわたり実際に生活し、至るところでカメラがキャストを撮影した。本物のノーベル賞受賞者、元ネオナチリーダーや元KGB職員なども撮影に参加。町の中ではソ連時代のルーブルが通貨として使用され、出演者もスタッフも当時のものを再現した衣装や食料で生活し、毎日当時の日付の新聞が届けられるという徹底ぶりだった。こうした撮影下で、出演者たちは演じる役柄になりきってしまい、実際に愛し合い、憎しみ合ったという。

 完成した作品は、衝撃的なバイオレンスとエロティックな描写が賛否を呼んだが、空前の構想と芸術性が評価され、第70回ベルリン映画祭では銀熊賞(芸術貢献賞)を受賞。すでに劇場映画第二弾「DAU. Degeneration(原題)」も完成しているという。

 本作の監督のひとりで「DAU」プロジェクトの責任者でもあるイリヤ・フルジャノフスキーは、「ソヴィエトが残した病は記憶喪失です。誰もが覚えておきたいことだけを覚えています。この記憶喪失を克服しない限り、それは何度も何度も繰り返されます。意識的に覚えていないのかもしれませんが、魂は覚えています。反省し二度と繰り返さないための努力をしない限り、何度でも同じ経験をすることになるでしょう」と、本作の意義を語っている。

”史上最も狂った映画撮影” 空前のスケールでソ連全体主義社会を再現 「DAU. ナターシャ」予告公開

DAU. ナターシャ
2021年2月27日(土)シアター・イメージフォーラム、アップリンク吉祥寺他にて上映
配給:トランスフォーマー
© PHENOMEN FILMS

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