ハロウィンシーズンを賑わせるホラーシリーズとして、長年、人気を博してきた『ソウ』シリーズの最新作がようやく公開となる。許されない行いをした者に、連続殺人鬼ジグソウが趣向を凝らした仕掛けで追い詰め、これまでシリーズ9作が作られてきた。10作目となる本作が全米で公開されたのは昨年9月末。同日公開となった『パウ・パトロール ザ・マイティ・ムービー』に僅差で1位を譲ったものの、その後、6週間に渡りベスト10圏内に留まり、世界興収では1億1100万ドルを超えるヒットとなった。原因の一つはトビン・ベルの復活だ。シリーズの顔でありながら、途中から死亡してしまい、その後継者が仕事を引き継ぐという形でシリーズは続いてきた。今回、1作目と２作目の間という設定で、トビン・ベルの復帰が実現し、ファンにとっては正に狂喜乱舞したいところだろう。
そのドラマとは一体どういうものなのか？末期がんで余命数ヶ月と診断を受けたジグソウこと、ジョン・クレイマー。ある時、彼はカフェで同じセラピーに通う友人が奇跡的な治療を受けてがんを克服したことを知る。治療を行う医師の連絡先を教えてもらい、メキシコへ飛んだジョンだが、巧妙な仕掛けで自分が詐欺に遭っていたことが分かってしまう。藁をもつかむ思いでやって来た末期患者たちをだます詐欺師たちに、ジグソウの怒りが爆発。恐るべきクライマックスが訪れる。
主演のトビン・ベルは、数々の映画やドラマに脇役で出演し、2004年の『ソウ』の出演でブレイクを果たす。劇中では3作目で亡くなってしまうので、回想形式やビデオ映像などでシリーズへの出演は続き、8作目の『ジグソウ：ソウ・レガシー』（2017）まで出演は続く。９作目の『スパイラル：ソウ オールリセット』（2021）に出演はなかったので、6年ぶりの復帰となった。監督を務めたのは『ソウ２』（2005）から編集で参加し、『ソウ６』（2009）で監督に進出したケヴィン・グルタート。落ち着いた場面から、後半のスリリングなシーンまで、変幻自在なスタイルを見せてくれる。シリーズを支えてきたジェームズ・ワンやリー・ワネルらも製作総指揮で参加しており、その顔ぶれからは関係者の並々ならぬ意気込みが感じられる。
今回、見てほしいのはジョン・クレイマーの人間的な一面だ。余命宣告された時の表情、メキシコに飛び、サッカー少年と交わす友情、朝日を見つめる優しいまなざし、などなど、これまでのシリーズ作では見られなかった場面が続出する。治療が成功したと思い、公園でメモ帳に拷問器具の草案をスケッチしている場面は、つい笑ってしまう人もいるだろう。
クライマックスに入ってからは、こちらの想像を絶する拷問道具が次から次へと登場。よくも思いつくもんだとある意味、感心してしまうレベルだ。今回は犠牲者たちが明確な悪人で、どんなひどい目に遭っても同情の余地がないので、安心して楽しめるのもポイントが高い。映画は半分以上、ジグソウの復讐に割り当てられているが、全く飽きさせないのも驚きだ。普通、2時間近くもあれば、この手の映画はどこかで緊張が解けてしまい、あくびのひとつも出てくるものだが、本作ではそれが全くないのだ。是非、スクリーンでジグソウの復活を目撃してほしい。全米では本作のヒットを受けて、更なる続編が製作中。2025年の公開を目指しているという。そちらも期待せずにはいられない。
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飯塚克味（いいづかかつみ）
番組ディレクター・映画＆DVDライター
1985年、大学1年生の時に出会った東京国際ファンタスティック映画祭に感化され、2回目からは記録ビデオスタッフとして映画祭に参加。その後、ドキュメンタリー制作会社勤務などを経て、WOWOWの『最新映画情報 週刊Hollywood Express』の演出を担当した。またホームシアター愛好家でもあり、映画ソフトの紹介記事も多数執筆。『週刊SPA！』ではDVDの特典紹介を担当していた。現在は『DVD＆動画配信でーた』に毎月執筆中。TBSラジオの『アフター６ジャンクション』にも不定期で出演し、お勧めの映像ソフトの紹介をしている。
【作品情報】
ソウX
2024年10月18日（金）TOHOシネマズ日比谷ほか全国公開
配給：リージェンツ
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