1985年2月にサム・ライミが監督した『死霊のはらわた』(1981)が日本で公開された時の衝撃を、どう伝えたら分かってもらえるだろう?すでに1981年に完成し、1983年には全米で公開されていたのだが、日本では一向に公開される気配がなく、一部の映画雑誌がその片鱗を伝えるのみだった。密かに流通していた海賊ビデオなどで作品を観ていたマニアックなホラーファンの口コミで「何だかスゴイ映画があるようだ」と、その存在感だけが広がりを見せ、満を持したタイミングでホラー映画を得意とする日本ヘラルド映画が配給し、公開となったのだ。自分もそのタイミングで劇場に駆け付けたのだが、場内は超満員、期待に胸を膨らませたホラー映画ファンですし詰め状態。一体、どんなものが観られるのか、観客同士の肌からもその熱気が伝わってきた。そして上映後、徹底した残酷描写!息を飲むカメラワーク!低予算とは思えないクオリティ!これぞ新しい時代のホラーと皆が絶賛した。スプラッタームービーという言葉が認知されたのも、この映画があってのことだった。
その後、サム・ライミ監督はシリーズ作を連発し、メジャーの階段を駆け上がっていく。『スパイダーマン』(2002)シリーズでの成功後もホラーへの愛は変わることなく、フェデ・アルバレス監督という新たな才能を発見して、2013年にリメイク作を作らせたかと思えば、自身もテレビシリーズとして『死霊のはらわたリターンズ』(2015~)を手がける。そして今年、第一作の全米公開から40年という節目に、ついにシリーズ最新作が4月に全米で公開された。1200万ドルという低予算ながら、全米で6720万ドル、海外で7950万ドルの大ヒットを記録。当然、日本での公開も期待されたが、残念なことに劇場での公開は見送られ、ソフトスルーという形になった。とはいえ、きちんとした字幕付きで観られるのだから、こんなに嬉しいことはない。
話はいつもの山小屋でスタートかと思わせて、ちょっと違いを見せる。メインの舞台となるのはロサンゼルスにある古いマンション。そこに暮らす家族を恐怖が襲うという設定だ。母子家庭で子どもは女男女の3人という家族構成の元に、妊娠が発覚した母親の妹がやって来る。そんな中、地震が発生し、地下に謎の空間が見つかる。そこには例の死者の書があり、死霊が復活するという流れだ。
ソフトには残念ながら特典の類は収録されていないのだが、筆者が演出する『最新映画情報 週刊Hollywood Express』では全米公開時に監督らのインタビューを放送している。それによると、本作のリー・クローニン監督は「視覚効果をできるだけ控えることを大事にしてきた。観客は本物に反応するんだ」とのこと。特殊メイクを使ったり、魚眼レンズによる独特の表現はあるが、VFXに頼らない姿勢はとても評価できる。また出演者の一人、リリー・サリヴァンは「血のエレベーターのシーンでは、重しがないと浮いちゃうの」と撮影の苦労を振り返っていた。
筆者はソフトメーカーのスクリーナーと、海外版の4K UHDで観たが、実際に起きていることを撮影した力強さは作品をより魅力的にしているし、音響もドルビーアトモスを採用したことで、通常のサラウンドよりワンランク上の恐怖が体験できるようになっている。サウンドバーでも大いに効果を発揮するはずだ。
またシリーズの顔、アッシュことブルース・キャンベルが声の出演で参加していることもファンには嬉しいところ。どこに出ているのか、後で確認できるのもソフトならではの楽しみ方だろう。冒頭の山小屋のシーンが、本編とどう関わっていくのかが明かされていくのも上手い構成となっている。
映画館にかからなかったのは、前に紹介した『スクリーム6』(2023)や『SMILE/スマイル』(2022)同様、非常に残念なことだが、観る人が増え反響が大きくなっていけば、きっと新たなホラー作品の劇場公開につながるはずだ。是非、ご覧頂いて、気に入ったら人に勧めていってほしい。ホラー好きなら絶対大喜びする一本になっている。
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飯塚克味(いいづかかつみ)
番組ディレクター・映画&DVDライター
1985年、大学1年生の時に出会った東京国際ファンタスティック映画祭に感化され、2回目からは記録ビデオスタッフとして映画祭に参加。その後、ドキュメンタリー制作会社勤務などを経て、現在はWOWOWの『最新映画情報 週刊Hollywood Express』(毎週土曜日放送)の演出を担当する。またホームシアター愛好家でもあり、映画ソフトの紹介記事も多数執筆。『週刊SPA!』ではDVDの特典紹介を担当していた。現在は『DVD&動画配信でーた』に毎月執筆中。TBSラジオの『アフター6ジャンクション』にも不定期で出演し、お勧めの映像ソフトの紹介をしている。
【商品情報】
『死霊のはらわた ライジング』
ブルーレイ&DVDセット(2枚組)5,280 円(税込)
発売元:ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント
販売元:NBC ユニバーサル・エンターテイメント
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