Vシネ魂が込められた奇跡のお色気アクション爆誕! 永井豪原案 光武蔵人監督 『唐獅子仮面/LION-GIRL』

映画スクエア

著者名:飯塚 克味

Vシネ魂が込められた奇跡のお色気アクション爆誕! 永井豪原案 光武蔵人監督 『唐獅子仮面/LION-GIRL』

飯塚克味のホラー道 第73回『唐獅子仮面/LION-GIRL』

 80~90年代、ビデオが家庭に普及して巻き起こったビデオバブルの時代、邦画の大手、東映がレンタルビデオに特化したオリジナル作品、東映Vシネマの制作を始めた。ガンアクションから、ヤクザもの、お色気系まで、娯楽映画を知り尽くした東映ならではのエンターテインメント性が大いに発揮され、今でもVシネマと言えば、東映Vシネマを思い浮かべる人も多い。そんな東映魂を受け継ぐ東映ビデオが、当時の雰囲気を受け継ぎ、アップデートして世に放つのが本作『唐獅子仮面/LION-GIRL』だ。

 原作は日本人なら知らぬ人はいない永井豪。『マジンガーZ』『キューティーハニー』などのスーパーヒーローものや、『あばしり一家』『ハレンチ学園』などのギャグ漫画、『デビルマン』『手天童子』などのホラーアクションなどなど、タイトルを挙げたらキリがないほど名作が並ぶ日本を代表する漫画家が、極秘裏に書き下ろしたオリジナルキャラクターが本作の主人公だ。

 実写での映画化を実現したのは鬼才・光武蔵人監督。本コーナーでも取り上げた『マニアック・ドライバー』(2021)のほか、アメリカを舞台にしたアクション『女体銃 ガン・ウーマン』(2013)や『KARATE KILL/カラテ・キル』(2016)なども手掛け、本作の監督は他に適任者がいないほどの相性の良さを見せてくれる。

 近未来、謎の隕石群襲来によって壊滅状態になった地球が舞台。無傷で残った関東平野で、隕石の影響で変貌した怪人たちとそれを操る悪人たちに、唐獅子仮面こと、ライオンガールが敢然と立ち向かうというストレートな物語だ。

 『けっこう仮面』を思わせる出し惜しみのないお色気、『バイオレンスジャック』のようなデストピアワールドという永井豪的な世界観に、これまでの諸作で見せてきた光武監督のスプラッター感覚がミックスされ、オリジナル性を発揮。特に実際の撮影地であるアメリカの荒涼感をうまく使った点は特筆に値する。

Vシネ魂が込められた奇跡のお色気アクション爆誕! 永井豪原案 光武蔵人監督 『唐獅子仮面/LION-GIRL』

 ここまで読んで、これはホラーなの?と思った読者も多いと思うが、そこは何を撮っても、ザッツ・ファンタスティック映画になってしまう光武監督。今回も人体の変貌から破壊、生首の扱いなど、しっかりホラーになっている部分が散見されるので、安心してほしい。

 キャストは主人公・緋色牡丹役に『ボルケーノ 2023』(2023)のトリ・グリフィス、『アリータ バトル・エンジェル』(2019)のデレク・ミアーズ、『ソフト/クワイエット』(2022)のステファニー・エステスの他、鍛え抜かれた肉体が魅力のデヴィッド・サクライが『KARATE KILL/カラテ・キル』に引き続き、光武組に参加。同時公開の日本語吹替版では声優の松本梨香が音響監督を務め、内田真礼、関智一、榎木淳弥、森川智之など、トップスターが勢ぞろいしているので、字幕版と合わせて、最低2度は鑑賞してほしい。

 また光武監督が影響を受けたと思われる80年代の名作へのオマージュもてんこ盛り。『ブレードランナー』(1982)や『ターミネーター』(1984)、『ZOMBIO/死霊のしたたり』(1985)のような分かりやすいものから、超マニアックなものまで全編に渡って散りばめられているので、そうした細部をチェックするのも映画を楽しくしてくれるはずだ。

 鑑賞後、個人的には大昔、永井豪自身が監督した『空想科学任侠伝 極道忍者 ドス竜』(1990)を久々に再見したくなったし、光武監督なら、いつか一度も実写化されていない『バイオレンスジャック』を実写化できるのではないかという希望も湧き出てきた。

 派手なばかりで、心を揺さぶられることがすっかり減ってしまった昨今の映画界。この手の娯楽映画が作られていることを素直に喜びたいし、応援もしたい。Vシネ魂が込められた本作を是非、大スクリーンで楽しんでもらいたい。

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Vシネ魂が込められた奇跡のお色気アクション爆誕! 永井豪原案 光武蔵人監督 『唐獅子仮面/LION-GIRL』

飯塚克味(いいづかかつみ)
番組ディレクター・映画&DVDライター
1985年、大学1年生の時に出会った東京国際ファンタスティック映画祭に感化され、2回目からは記録ビデオスタッフとして映画祭に参加。その後、ドキュメンタリー制作会社勤務などを経て、現在はWOWOWの『最新映画情報 週刊Hollywood Express』(毎週土曜日放送)の演出を担当する。またホームシアター愛好家でもあり、映画ソフトの紹介記事も多数執筆。『週刊SPA!』ではDVDの特典紹介を担当していた。現在は『DVD&動画配信でーた』に毎月執筆中。TBSラジオの『アフター6ジャンクション』にも不定期で出演し、お勧めの映像ソフトの紹介をしている。


【作品情報】
唐獅子仮面/LION-GIRL
2024年1月26日(金)ヒューマントラストシネマ渋谷、池袋シネマ・ロサ、シネマート新宿 他 全国ロードショー
配給:エクストリーム
©2022 GO NAGAI/DYNAMIC PLANNING・TOEI VIDEO

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