富田克也監督による、映像制作集団「空族」の最新作「潜行一千里 ILHA FORMOSA(イラ・フォルモサ)」が、2025年11月22日より劇場公開されることが決まった。
徹底したリサーチが最大の特色である、「サウダーヂ」「バンコクナイツ」などの映像制作集団「空族」。映画の舞台となる場所をとにかく歩き、そこに住む人々と交流を深め、現地の人々、歴史、そして現在を知るところから映画が始まる。2026年撮影予定の新作映画の舞台となる台湾で、コロナ渦の最中に空族は台湾に何度も飛びリサーチを続けてきた。「潜行一千里 ILHA FORMOSA」は、そのリサーチの過程を記録したドキュメンタリーとなっている。
ストリートに流れる音楽に導かれるように、彼らは台湾原住民たちの住む村に向かっていく。アミ族の住む花蓮県タパロンの集落。そこから3000メートル級の中央山脈を越えてたどり着いたセデック族の集落。そして台湾の最南端に位置するパイワン族の村まで。失われつつある原住民の言葉でラップを始める若者たち、原住民の伝統音楽を現代にアップデートして新しい音を生み出そうとするアーティストたちなど、空族は旅の過程で出会った人々と交流を深めながら、日本も含めたさまざまな国からの侵略の歴史も知ることになる。
過去の歴史をはねのけるように人々はいきいきと踊り、歌い、笑う。フィナーレは毎年タパロンで行われるアミ族最大の豊年祭。つややかな原住民の衣装をまとった人々は、三日三晩踊り続ける。
空族(富田克也・相澤虎之助)のコメントも公開された。コメントは以下の通り。
【空族(富田克也・相澤虎之助) コメント】
台湾と言えば私たちには一般的に大陸との緊張関係に常にさらされている“もうひとつの中国”という中華圏のイメージが強いのですが、原住民の部落に入るとそこにはかつてはオランダ、次に中国大陸、そして日本も含めて数々の強国からの植民地政策を経て、逆にそれらの異文化を取り入れながらも自らの部族とアイデンティティを守り続けている現在の原住民の人々がいました。その原色に彩られた姿は私たちの持っていた中華圏である台湾のイメージを一新し、西洋と東洋の様々な文化の異なる移民たちと、もともと住んでいた原住民たちが長い時間をかけて共に台湾という小さな島でお互いに“共和”の道を模索し歩んでいる姿が浮かび上がってきたのです。
このドキュメンタリーの中で台湾のラッパー、大支(ダーギー)が「台湾の特徴とはさまざまな文化や音楽が融合するところ。そう、メルティングポットなんだ」と語っていますが、特に2020年代から原住民の若者たちが自分たちのルーツミュージックを様々なジャンルの音楽とミックスさせて台湾独自の新しい音楽を創り出しています。そこから何が生まれ出づるのか?まさにこの現在進行形の台湾の姿を観ることはグローバル化、移民の時代を生きる私たち日本人にとっても大きなヒントになることだと考えています。
【作品情報】
潜行一千里 ILHA FORMOSA
2025年11月22日(土)新宿 K’s cinema ほか全国ロードショー
配給:空族
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