
東京藝術大学大学院映像研究科映画専攻の18期卒業制作作品として発表された、坂本憲翔監督の長編デビュー作「イマジナリーライン」が、2026年1月17日より劇場公開されることが決まった。
「イマジナリーライン」は、映画学校を卒業してまもない山本文子(中島侑香)を描いた作品。アルバイトをしながら音楽好きの親友・モハメド夢(LEIYA)と一緒に映画制作を続けていた文子。ある日、ふたりで訪れた旅先で、夢に”在留資格”がないことが発覚し、入管施設へ収容されてしまう。残酷な運命に引き裂かれるふたりは友情を試される。苦悩の末、文子と夢はわずかな希望を求めて立ち上がる。
2023年に入管法改正案が採択され、入管制度の厳罰化がさらに進んだ。こうした状況をふまえて、本作は東京藝術大学大学院の修了制作として企画された。学生スタッフと俳優たちは、仮放免者や入管の被収容者、支援者への取材を行い、入管内部の実態にまで深く切りこんだ作品を作り上げた。主人公の文子役には、俳優・モデルとして活躍する中島侑香。文子の親友である夢を、俳優・脚本家でもあるLEIYAが演じている。坂本監督は即興演出を取り入れ、俳優のいきいきとした演技を引き出し、本作にリアリティと緊張感を与えているという。

坂本憲翔監督らのコメントも公開された。コメントは以下の通り。
【コメント】
■坂本憲翔監督
2021 年 3 月、名古屋入管での医療ミスにより、被収容者のウィシュマ・サンダマリさんが亡くなった。それから 4 年以上 の月日が経ち、この事件について語られることも少なくなった。その沈黙の隙間をうめるように、街には排外主義的なことばが飛びかっている。遺族、支援者、被収容者、難民申請者の方々の闘いは、今この瞬間も続いているのに。
この事件と入管制度の問題を決して風化させてはならない、これは命の問題だから。たくさんの人にこの映画を観てほしい 。そしてこの国の「今」について一緒に考えてみたい。心からそう願っています。
■中島侑香(山本文子役)
私が演じた文子という役は、どこか自分と似ていました。母の死で止まっていた時間が、夢という対照的な存在によって動き出す。そんな文子が作品の中でどう生き抜いていくのかを毎日考え続け、監督と話しながら丁寧に役作りをしていきました。カメラが回る瞬間、それまで準備していた「文子」を一度脱ぎ、現場の空気に身を委ねたとき、本当に文子として生きられたような気がしました。私にとって思い入れ深いこの作品の旅立ちを、心から嬉しく思います。
■LEIYA(モハメド夢役)
映画『イマジナリーライン』で夢という役を通して、「居場所とは何か」「支え合うとはどういうことか」を深く考えました。日本とガーナにルーツをもつ私にとって、描かれる現実は決して他人事ではありません。制度や言葉の壁によって、当たり前の日常を得られない人がいる。その声に耳を澄ませ、伝えていくことの尊さを身に沁みて感じることができました。
この作品を通じて、目に見えないさまざまな「線引き」について一緒に考えていただけたら嬉しいです。
【作品情報】
イマジナリーライン
2026年1月17日(土)より、ユーロスペース他全国順次ロードショー
配給:Lamp.
©2024 東京藝術大学大学院映像研究科