着々と話が進む父の安楽死 不安を募らせる娘 「すべてうまくいきますように」本編映像

映画スクエア

 2023年2月3日より劇場公開される、フランソワ・オゾン監督とソフィー・マルソーが初タッグを組んだ映画「すべてうまくいきますように」から、ソフィー・マルソーとアンドレ・デュソリエの共演シーンが公開された。

 父・アンドレ(デュソリエ)から依頼され、安楽死について調べていたエマニュエル(マルソー)は、父に対してフランスでは安楽死が違法であることを告げる。「じゃあ、どうする?」と不満げな父に対して、エマニュエルは「スイスの協会から連絡待ち。実行は現地で」と新たな提案をする。満足そうな表情を浮かべる父を見て、彼女は複雑な表情を浮かべるのだった。この後、スイスの安楽死支援協会の女性と連絡が取れ、話はとんとん拍子に進んでいくが、彼女の不安は募っていく。

 脳卒中で体にマヒが残るアンドレ役を演じているデュソリエは、頭を剃り、人口装具で口元を変形させて撮影に臨んだという。

 「すべてうまくいきますように」は、安楽死を望む父親に振り回される娘の葛藤を描いたドラマ。脳卒中で倒れ、体の自由がきかなくなった85歳の父アンドレが、娘のエマニュエルに安楽死を願う。小説家のエマニュエルと妹のパスカルは、父の気が変わることを望みながらも、合法的に安楽死を支援するスイスの協会とコンタクトをとる。一方で、リハビリにより日に日に回復する父は、孫の演奏会やお気に入りのレストランへ出かけ、生きる喜びを取り戻したかのように見えた。だが、父は娘たちに安楽死の日を告げる。娘たちは、戸惑い葛藤しながらも、父と真正面から向き合おうとする。

 主演を務めるのはソフィー・マルソー。本音しか言わない父の言動に時には傷つきながらも、父を人として敬愛する娘・エマニュエル役を情感豊かに演じている。父のアンドレ役にはアンドレ・デュソリエ、母のクロードにシャーロット・ランプリング、妹のパスカルにジェラルディーヌ・ペラス、安楽死を支援する協会から派遣されてくる怪しげなスイス人女性にハンナ・シグラが顔をそろえる。「スイミング・プール」の脚本家エマニュエル・ベルンエイムの自伝的小説を基に、「まぼろし」「8人の女たち」「Summer of 85」などのフランソワ・オゾンが監督・脚本を務めた。

着々と話が進む父の安楽死 不安を募らせる娘 「すべてうまくいきますように」本編映像

 また、一足先に本作を鑑賞した著名人によるコメントも公開された。コメントは以下の通り。

【コメント】

■磯村勇斗(俳優)
 誰にでも訪れる家族との最期の時間。自分だったらどうするのか、思考と感情が行き来する。でも一つ言えるのは、誰にも邪魔できない親子の「愛」が大切なんだ。そう教えてくれた。オゾン監督の作品はとても心があたたかくなる。

■くらんけ(「私の夢はスイスで安楽死」著者)
父親から放たれる無遠慮な言葉に翻弄される娘たち。不器用な寄り添いと温度差がもたらす淡々とした展開は限りなくノンフィクションに近いと直感した。
くらんけ(「私の夢はスイスで安楽死」著者)

■胡原おみ(漫画家/「逢沢小春は死に急ぐ」作者)
父のブラック・ユーモアに笑う娘、無言で寄り添う姉妹、短く無遠慮な会話。ひとつひとつのシーンに滲み出る“家族の年季”に親近感と居心地の良さを感じる一方で、これから“安楽死”という結末に向かうことの不安と切なさに胸がしめつけられる。優しさと残酷さが同居する美しい作品です。
胡原おみ(漫画家/「逢沢小春は死に急ぐ」作者)

■斉藤由貴(俳優・歌手)
家族ということ。
父娘ということ。

老いること。
病むこと。
死ぬということ。
送り出すということ。

誰しもいつかは必ずさようならをする、ということ。
全ては移ろいゆくということ。

受けとめること。
受け入れること。

心に残る愛を抱きしめること。

■佐藤玲(俳優)
オゾン作品は、語り合いたくなる密閉された深密さを持っている。
思わせぶりで洗練された画。
ウィットに富んだ会話と、想起される人間関係。
登場人物の人生を垣間見ると、私も誰かから見た物語の中にいるような気分になる。

■SYO(物書き)
前触れもなく日常が変わり、心は後から追いかける。
いつだってそうだ。振り回され、正解はわからない。
外野は正しさを押し付ける。痛みも知らないくせに。

一つだけ信じられるものがあるとしたら、それは愛。
名匠×名優が紡ぐ家族の終焉は、本物で満ちていた。

■津田健次郎(声優)
身勝手な父が押し付けてくる安楽死。その意志を受け入れんとする娘姉妹の葛藤。美と自由を愛する父、世界を拒絶する母、そのまなざしに娘達は映っているのか。長女の生活を切実なテーマと共に淡々と、時にユーモラスに切り取っていく名匠フランソワ・オゾン監督の演出、そして飾らない役者陣の芝居が静かに胸に迫る。

■堀 茂樹(フランス文学者)
安楽死という重いテーマを正面から取り上げ、それを観念的にではなく、人間同士の具体的な感情の交流の中に描き出している。十分にシリアスでありながら悲壮ではなく、ユーモラスでさえある。惚れ惚れするほど洗練された映画だ。

■前田 哲(映画監督)
この胸騒ぎはなんなのだろうか。
そう、人生は美しい!のに・・・、
美しいからこそ、そのような選択もあるのだと、唸らされた。
親を持つ人たち、子も持つ人たち、必見である。
そして、ソフィー・マルソーが、シャーロット・ランプリングが、
とてつもなく素晴らしい!

■宮下洋一(ジャーナリスト/「安楽死を遂げるまで」著者)
家族が安楽死をしたいと言ったら? 終末期でなく、まだ生きる望みがあるならば? 死を個人の権利と捉える欧米社会。価値観を異にする日本は、彼ら親子のような決断を下せるのか。「尊厳ある命」とは一体何なのか……。
宮下洋一(ジャーナリスト/「安楽死を遂げるまで」著者)

【作品情報】
すべてうまくいきますように
2023年2月3日(金) ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館、Bunkamuraル・シネマ 他公開
配給:キノフィルムズ
© 2020 MANDARIN PRODUCTION – FOZ – France 2 CINEMA – PLAYTIME PRODUCTION – SCOPE PICTURES

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