「許す」ことの難しさや美しさを描く現代の寓話 末吉ノブ監督「Petrichor」制作決定

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「許す」ことの難しさや美しさを描く現代の寓話 末吉ノブ監督「Petrichor」制作決定

 末吉ノブ監督による長編第三作「Petrichor」の制作が決定した。卯ノ原圭吾と武田梨奈が主演し、2026年に劇場公開される予定。

 「Petrichor」は、「許す」ことをテーマとした作品。自分の母親に捨てられた過去を持ち、現代社会の底辺をふらふらと生きる男、富男。母親の影を追い、行き着いたある街で彼は花に出会う。夫・大輔との別離を余儀なくされ、社会から孤立していた花。やがて、彼らの抱える痛々しい現実が明るみになり、物語はすべての人を巻き込んで終焉へと進んでいく。「許す」ことの難しさや美しさを古典的な寓話をベースに描いた、現代の寓話となっている。

 卯ノ原圭吾、武田梨奈、末吉ノブ監督らのコメントも公開された。コメントは以下の通り。

【コメント】

■飯田富男役・卯ノ原圭吾
僕は「富男」という役をいただいて、嬉しいと同時に、不安が押し寄せました。
この役には、底なし沼のような見えないものへの不安と、まるで子供の時のような無限の可能性を秘めていると感じたからです。
僕はまだまだ未熟者でありながら、スタッフさん、キャストの力も借りながら、自ら座組も引っ張っていきたいと思っています。
無意識に人に対して張ってしまうバリアを取っ払って、ありのままの自分で「ペトリコール」に挑みます。
まずはこれから撮影です。
どうぞよろしくお願いします。

■貴島花役・武田梨奈
「Petrichor」という作品と向き合ってから約一ヵ月、日常の見え方が大きく変わりました。
何気なく聴いていた曲や馴染みの映画、いつもの電車やバスの中、信号を待つ時間さえも、まるで景色が変わったような心の変化に触れながら、日々過ごしています。日常の音や香りも、貴島花という人物を通して、新しい意味を持ちはじめています。
末吉監督をはじめ、スタッフ・キャストの皆さんと台本に描かれていない部分まで、細かくディスカッションを重ねる日々。
押し潰されそうな胸の痛みも、やるせない感情も、しっかりと抱きしめながら、この作品の中で生きたいと思います。

■監督・末吉ノブ
人を信じるということはとてつもなくしんどい。
裏切られることもあるし、裏切ってしまうこともある。
でもその積み重ねがその人間の唯一無二の味を作り上げていく。
だから愛おしいと思ってしまう。
美しいと思ってしまう。
信じたいし、許したい。
現実は痛いくらいに厳しいんだけども。

■脚本・阿久津京介
人は、過ちを繰り返す生き物です。
大切に想っているのに取りこぼしてしまったり、気付けば邪険に扱ってしまったり。
必死に生きていると忘れてしまうけれど、この世界は、ぼくたちが思っている以上に多面的なんだと思います。
人の数だけ人生がある。物語がある。
自分にとっての悪人も、誰かにとっては恩人で。
誰かの正義が、今日もどこかで誰かを傷付けています。
それでも。だから。
構想約2年。
前々から興味を持っていた、「許す」というテーマで作品を描きました。
この物語が誰かの心に寄り添えますように。

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