老人ホームを脱走するウド・キアー 亡き親友のため最後のメイクを 「スワンソング」予告

映画スクエア

 8月26日より劇場公開される、実在のヘアメイクドレッサー、パトリック・ピッツェンバーガーをモデルとした映画「スワンソング」の、日本版予告が公開された。

 日本版予告では、現役生活をしりぞき、老人ホームで過去の栄光にさいなまれる伝説のヘアメイクドレッサーの元に、わだかまりを残して亡くなった元顧客で親友の死化粧の依頼が舞い込むことが描かれる。そして、ジャージ姿で過去の見る影も無くなった浦島太郎状態のパットが、老人ホームから脱走し、葛藤しながらも徐々に輝きを取り戻していく姿が収められている。

 「スワンソング」は、引退したヘアメイクドレッサー、パトリック(パット)・ピッツェンバーガーが、亡き親友の最後のメイクを施す旅を描いた作品。ゲイとして生き、最愛のパートナーを早くにエイズで失っていたパットは、仕事への情熱や亡き親友への複雑な思い、そして自身の過去と現在を思い起こす。監督を務めたのは、17歳の時にオハイオ州のゲイクラブでパトリック・ピッツェンバーガーが踊っているのを見て衝撃を受けたというトッド・スティーブンス。ウド・キアーが、パット役を務めている。

 トッド・スティーブンスのコメントも発表された。発表されたコメントは以下の通り。

【コメント】

■監督:トッド・スティーブンス 

 1984 年、私は初めて故郷の小さな町にあるゲイバー、“ザ・ユニバーサル・フルーツ・アンド・ナッツ・カンパニー”に足を踏み入れた。そこに彼がいた。ダンスフロアでキラキラ輝いている。フェザーボアを首に巻き付け、柔らかなフェルトのつば広帽をかぶり、お揃いのパンツスーツを着た“ミスター・パット”・ピッツェンバーガー。まるでボブ・フォッシーの世界から抜け出したような動きで踊っている。 17 歳の私にとって、パットは神のごとく輝いていた。

 数年後、自伝映画『Edge of Seventeen』に着手しようと思っていた私は、すぐに“ミスター・パット”のことが頭に浮かんだ。彼のことを追跡しようと故郷に戻った私は、彼が動脈瘤を患い、一時的に話せなくなってしまったことを知った。だが、彼の恋人デビッドが私に物語を聞かせてくれた…。パットがかつてオハイオ州サンダスキーでどれほど素晴らしい美容師だったか、彼の有名な女装パフォーマンスについて、1970 年代、彼がどんなふうにキャロル・バーネットのようなドレス姿でスーパーマーケットに買い物に行っていたか―。彼は、常に勇気をもって自分自身でいようとした。それが安全とは言えない時代でも。

 実のところ、“ミスター・パット”に刺激されて私は『Edge of Seventeen』を書いた。重要な“パット”のキャラクターを主人公の良き相談相手として書いていたが、撮影の途中でその役はカットされた。だが私はいつも、自分の女神をいつかはもう一度書くことになるだろうとわかっていたのだ。そして何年もあとに彼はついに戻ってきた。私はもう一度パットを探したが、彼が最近亡くなったことを知った。悲しいかな、パットの有名な手作りのラインストーンのドレスはすべて失われてしまっていた。ただ靴箱がひとつ残っていた。中には、いくつかの色あせた宝石と半分吸いかけの煙草がひと箱だけ。

 『スワンソング』は、急速に消えていくアメリカの“ゲイ文化”へのラブレターなのだ。クィアであることが以前よりずっと受け入れられてきた矢先に、昔栄えていたコミュニティが、あっという間に社会の中に溶けてなくなっていく。同化作用とテクノロジーのおかげで、“ザ・ユニバーサル・フルーツ・アンド・ナッツ・カンパニー”のような小さな町のゲイバーは消えていく運命にある。『スワンソング』を、忘れ去られたすべてのホモセクシャルのフローリストと美容師たちに捧げよう。彼らがゲイコミュニティを築き、私たちの多くが今日までしがみついてきた権利のための道を切り開いてくれたのだ。だが、何よりも、私にとってこれは、もう一度生きるのに遅すぎることは決してないということを教えてくれる映画なのだ。

老人ホームを脱走するウド・キアー 亡き親友のため最後のメイクを 「スワンソング」予告

【作品情報】
スワンソング
2022年8月26日(金)よりシネスイッチ銀座ほか全国順次公開
配給:カルチュア・パブリッシャーズ
© 2021 Swan Song Film LLC

作品一覧