「リーインカーネーション」 人は死んだらどうなるのか 人類の疑問に一つの答え 【飯塚克味のホラー道】

映画スクエア

著者名:飯塚 克味

「リーインカーネーション」 人は死んだらどうなるのか 人類の疑問に一つの答え 【飯塚克味のホラー道】
(C) 1974 BING CROSBY PRODUCTIONS. ALL RIGHTS RESERVED.

飯塚克味のホラー道 第15回「リーインカーネーション」

 人は死んだら、どうなるのか?意識や記憶が一体になった魂はどこへ行くのか?人類共通の疑問に、一つの答えを提示したのが1974年に製作され、1977年に日本で公開された本作である。

 日夜、同じ夢にうなされ続ける大学教授のピーター。その夢というのは、湖を泳いでいる最中、近づいたボートに乗ったマーシャという女性にオールで殴り殺されるというものだった。仕事も満足にできなくなったピーターは、精神科医などあらゆる治療に救いを求める。だが治すことにはつながらない。そんな中、夢で見た光景と同じものをテレビで見かけ、現地へと向かい、悪夢の原因を探っていくというのが大まかなストーリーだ。

 タイトルの「リーインカーネーション」とは輪廻転生を意味し、ある意味、ネタバレとも言えるが、ピーターが悪夢の出来事に近づくほど、過去の忌まわしい出来事が見えてきて、特撮や大仕掛けはなくとも、ミステリアスな雰囲気に引き込まれずにいられないものになっている。

 監督を務めたのは『ナバロンの要塞』(1961)や『恐怖の岬』(1962)などを手がけたJ・リー・トンプソン。主演のピーターには、カナダ出身で、当時のイケメン俳優だったマイケル・サラザン。彼を悪夢で悩ませるマーシャ役は、本作の後、1978年版の『スーパーマン』でロイス・レイン役を射止めたマーゴット・キダー。マーシャの娘で、ピーターと恋に落ちるアンには、『おもいでの夏』(1971)や『スキャナーズ』(1981)のジェニファー・オニールが出演している。

 出演者の中ではマーゴット・キダーが大熱演。悪夢の中では若い女性だが、リアルタイムの中では、特殊メイクを施し、老婆になっている。だが、実際のキダーの年齢は、娘役のジェニファー・オニールよりも半年若かったのだ。この見事な特殊メイクを担当したのはトビー・フーパー監督の『死霊伝説』(1979)で一度見たら忘れられないバンパイアを作り出したジャック・ヤングだ。クライマックスで明かされる真相も含め、繊細な表情で多くを語ろうとする演技をじっくり味わってもらいたい。

 ブルーレイに使われたマスターは、オリジナルネガより4Kスキャンされ、レストアされた高画質マスター。所々、フィルム傷や修正しきれない箇所も散見するが、鑑賞の妨げにはならない。色彩やディテールもしっかりしている。モノラル音声は御大ジェリー・ゴールドスミスのスコアが綺麗に響き渡り、非常に聴き易いサウンドになっているのが分かるはず。1980年に月曜ロードショー(TBS)で放送された日本語吹替版は声優陣の演技で、キャラが立っているので、鑑賞がより楽しくなるはず。

 特典は、真相が明かされるバスタブシーンのスペイン版と北米版の編集やショットの違いを見られる比較映像が興味深い。また静止画資料をまとめたスチルギャラリーでは、日本版のポスターやチラシも確認できた。当時、配給した日本ヘラルド映画のもので、キャッチコピーの「お前は誰だ!何をしに現世に舞い戻った…」が強烈なインパクトを与える。映画評論家のリー・ガンデンによる音声解説は、マイケル・サラザンが『真夜中のカーボーイ』(1969)に出演するはずだったことや、細かい脇役俳優の解説、マーゴット・キダーにインタビューした際のエピソードなど、興味深い内容が盛りだくさん。映画をよく知っている先輩の話を聞くような感じで楽しんでほしい。

 旧作ということで、若い世代は敬遠しがちだろうが、本作を観れば、人という生き物の根本的な疑問は何も変わってないことが分かってもらえるだろう。あまりに切ないラストをどう受け止めるかも、いろんな意見が出てくるはずだ。70年代のホラーと言うと『エクソシスト』(1973)や『オーメン』(1976)といったオカルト系が有名だが、実はこうした小品の中にも優れた作品が多いので、ホラーマニアックスにはまだまだ隠れた作品を掘り起こしてもらいたい。

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「リーインカーネーション」 人は死んだらどうなるのか 人類の疑問に一つの答え 【飯塚克味のホラー道】

飯塚克味(いいづかかつみ)
番組ディレクター・映画&DVDライター
1985年、大学1年生の時に出会った東京国際ファンタスティック映画祭に感化され、2回目からは記録ビデオスタッフとして映画祭に参加。その後、ドキュメンタリー制作会社勤務などを経て、現在はWOWOWの『最新映画情報 週刊Hollywood Express』(毎週土曜日放送)の演出を担当する。またホームシアター愛好家でもあり、映画ソフトの紹介記事も多数執筆。『週刊SPA!』ではDVDの特典紹介を担当していた。現在は『DVD&動画配信でーた』に毎月執筆中。TBSラジオの『アフター6ジャンクション』にも不定期で出演し、お勧めの映像ソフトの紹介をしている。


リーインカーネーション -日本語吹替音声収録4Kレストア版-
2022年3月2日~Blu-ray発売中
4,800円 (税抜)
発売元:株式会社ニューライン
販売元:株式会社ハピネット・メディアマーケティング
(C) 1974 BING CROSBY PRODUCTIONS. ALL RIGHTS RESERVED.

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