隠れた名作「墜落大空港」 圧巻の飛行機墜落シーン ムード満点の不可思議な展開 【飯塚克味のホラー道】

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著者名:飯塚 克味

隠れた名作「墜落大空港」 圧巻の飛行機墜落シーン ムード満点の不可思議な展開 【飯塚克味のホラー道】
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飯塚克味のホラー道 第13回「墜落大空港」

 このページをご覧になっている人ならご存知かと思うが、『ホラー・マニアックス』という毎年ホラー映画をリリースしているソフトのシリーズがある。スタートしたのはまだDVD時代、今期でなんと13期というから、いかに人気があるかがお分かりいただけるだろう。

 その13期のトップバッターを飾ったのが、今回紹介する1981年の劇場未公開作『墜落大空港』である。日本では『墜落大空港/ジャンボ機恐怖の爆発・機長生還のナゾ』のタイトルで1983年にテレビ放映され、その後、『ジャンボ・墜落/ザ・サバイバー』としてビデオ化、DVD化されたものの、未だ知る人ぞ知る、隠れた名作となっている。だが、オーストラリア初の大規模作品となったこの映画、90年代に大ヒットしたあるホラー映画の元ネタとして有名で、検索すればすぐ確認できるほどの知名度があるのだ。

 物語は離陸直後に原因不明の理由でジャンボ旅客機が墜落。363人もの乗客・乗員が死亡する大惨事の中、機長ケラーだけが奇跡的に生還。だが彼は事故当時の記憶を失っていた。そんな中、事故原因の調査が始まるが、関係者は変死や不幸に見舞われていく。一方、ケラーは霊感が強いという女性ホッブスと出会い、彼女から死者の声が聞こえると告げられる。事故の真相は果たして…という心霊ミステリーになっている。

 原作はイギリスのホラー作家ジェームズ・ハーバート。監督は『サスペリアPART2』や『欲望』などで俳優としても有名なデヴィッド・ヘミングス。主演はミステリアスな魅力が全開のロバート・パウエル。霊能者ホッブスには、今でもマーベル作品などに出演しているジェニー・アガター。そして神父役で『第三の男』のジョセフ・コットンも出演している。

 とにかく圧巻なのが冒頭の飛行機墜落シーン。映像に予算をかけるとはまさにこのことで、胴体着陸しようとした機体が、木々をなぎ倒し、周辺の人々がパニックになっている様子までダイナミックに描いている。特典映像に入っている撮影監督ジョン・シールのインタビューによると5台のカメラを使って撮影したとのことだが、デンゼル・ワシントン主演の『フライト』やクリストファー・ノーラン監督の『TENET テネット』の飛行機シーンに勝るとも劣らない出来となっている。余りに映像が凄いので、モノラルの音声にもかかわらず、火柱が立つときは右の方から、救急車が駆けつける場面では後方から鳴り響くような錯覚に陥ってしまうほどだ。

 その後の不可思議な展開では、ムード重視のデヴィッド・ヘミングスの演出が冴えわたり、最近のショッカー効果ばかり狙った、凡百のホラー映画とは一線を画すものになっている。ただ公開当時は残念なことに、原作にあった残虐描写は鳴りを潜め、ミステリー色を強調したため、原作ファンやホラーファンの期待を裏切り、結果、興行的な成功を収めるには至らなかった。本ディスクには100分のノーカット完全版が収録されているが、公開時には87分にまでそぎ落とされ、内容が難解にもなっていた。日本での劇場公開が実現しなかったのもそうしたことが原因だったのかもしれない。

 デヴィッド・ヘミングスは本作の興行的不振が原因で、その後、映画を監督することはなく、多くのTV作品を演出。俳優としては『グラディエーター』(2000)や『リベリオン』(2002)に出演し、2004年の『エヴァンジェリスタ』に出演中、心臓麻痺により62歳の若さで他界している。今現在、本作が世界中で再評価されていることを知ったら、どんなにか喜んだことだろう。

 今回のブルーレイには特典映像が93分も収録されていて、現在のロバート・パウエルの姿を拝むこともできる。また「『墜落大空港』撮影現場」は当時のレポート番組で、ジョセフ・コットンやジェニー・アガターの貴重なインタビューも収録。手品を披露してくれるデヴィッド・ヘミングスの映像もあり、本当に楽しそうな様子には、心が温まった。デヴィッド・ヘミングスとロバート・パウエルが、本作の前に共演した異色のスリラー『ハーレクィン』(1980)について語るインタビューも初めて目にするものだった。第14期では、この『ハーレクィン』のリリースも是非実現してほしいところだ。

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隠れた名作「墜落大空港」 圧巻の飛行機墜落シーン ムード満点の不可思議な展開 【飯塚克味のホラー道】

飯塚克味(いいづかかつみ)
番組ディレクター・映画&DVDライター
1985年、大学1年生の時に出会った東京国際ファンタスティック映画祭に感化され、2回目からは記録ビデオスタッフとして映画祭に参加。その後、ドキュメンタリー制作会社勤務などを経て、現在はWOWOWの『最新映画情報 週刊Hollywood Express』(毎週土曜日放送)の演出を担当する。またホームシアター愛好家でもあり、映画ソフトの紹介記事も多数執筆。『週刊SPA!』ではDVDの特典紹介を担当していた。現在は『DVD&動画配信でーた』に毎月執筆中。TBSラジオの『アフター6ジャンクション』にも不定期で出演し、お勧めの映像ソフトの紹介をしている。


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発売元:株式会社ニューライン
販売元:株式会社ハピネット・メディアマーケティング
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