映画館が見せ物小屋に大変身! 封印されていた呪いの映画たちが登場 『ホラー秘宝まつり2024』

映画スクエア

著者名:飯塚 克味

映画館が見せ物小屋に大変身! 封印されていた呪いの映画たちが登場 『ホラー秘宝まつり2024』

飯塚克味のホラー道 第92回『ホラー秘宝まつり2024』

 いつもは個々の作品を紹介しているこの「ホラー道」だが、今回はまとめて3本の貴重作が上映される『ホラー秘宝まつり2024』を紹介させてもらう。毎年開催されているこのイベントだが、今回は多くの作品を上映するよりも、この3本に絞り込んでいて、とにかく見てほしいという開催者側の強い意志を感じ取ることができる。

 最初の目玉が、『悪魔の毒々モンスター』(1984)で知られるトロマが製作した『悪魔のしたたり』(1976)だ。80年代のビデオリリース時、『ZOMBIO/死霊のしたたり』(1985)が話題になっていたこともあり、この邦題になったと思われるが、当時のビデオ題には原題の『ブラッドサッキング・フリークス』もサブタイトルとして併記されていた。

 ニューヨークのアングラ劇場で少人数を集めて行われている拷問ショー。本物としか思えないその見せ物に、インチキと強く訴える男がいた。ショーを行っているサルデュと助手のラルファスは彼を捕え、裏でいたぶるというのが主なお話。とにかく出てくる人間がみんな異常としか言いようがなく、楽しそうに脳みそをストローでチューチューする場面なんかは、作り物と分かっていても吐き気をもよおす可能性大だ。今作ろうとしても、もう絶対リメイクできない不道徳の極みとなっている。今回、上映に使われるのはアメリカのインディペンデントメーカーVinegar Syndromeが作った4Kマスター。ビデオ時代と違って、傷もなく、見えなくてもいい細部まできっちり再現している。

映画館が見せ物小屋に大変身! 封印されていた呪いの映画たちが登場 『ホラー秘宝まつり2024』
『悪魔のしたたり』

 次に紹介したいのが『ハワード・ザ・ダック/暗黒魔王の陰謀』(1986)の監督と脚本を担当したウィラード・ハイクが1973年に監督した『メサイア・オブ・デッド』(1973)。手紙で連絡を取っていた父親からの連絡が途絶え、心配になった娘が訪ねていった海辺の町は、ゾンビだらけだったというもの。隠れた名作『ゾンゲリア』(1981)を思わせる作品でもある。

 独特の暗いムードが不思議な魅力を放つ70年代ホラーだが、ウィラード・ハイクと製作のグロリア・カッツは、ジョージ・ルーカスと共に『アメリカン・グラフィティ』(1973)の脚本も執筆している。その縁でルーカスの暗黒史とされている『ハワード・ザ・ダック』に起用されたのかもしれない。一応言っておくと、自分は『ハワード・ザ・ダック』大好きです。こちらは今年の頭、イギリスのRadiance Filmsというメーカーから現存する最良の素材から4Kスキャンを行ったブルーレイが出たので、同じマスターだと思われる。

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『メサイア・オブ・デッド』

 最後の作品がジャーロの『デリリウム』(1972)。冒頭、バーを出た女性が襲われ、無残な形で殺害されてしまう。犯人は警察も信頼を寄せる犯罪心理学者のリュータック。しかし、リュータックの犯行に似せた新たな事件が発生し、事態は混とんと化していく。リュータックが妻を溺愛しているのに性的不能者であったり、妻は妻でレズビアンでもあるなど、性的な要素も満載され、原色を使った照明も毒々しい仕上がりになっている。こちらも先述のVinegar Syndromeから、オリジナルの35ミリネガから4Kスキャン&レストアしたソフト化がされており、今回の上映でも同じマスターが使用されている。

映画館が見せ物小屋に大変身! 封印されていた呪いの映画たちが登場 『ホラー秘宝まつり2024』
『デリリウム』

 どの作品も70年代のアングラな空気感が濃厚で、映画を観た後、憂鬱な気分にさせてくれること間違いなし。日夜ホラー漬けで、もはや普通のホラーでは満足できなくなったというあなたには、これ以上はないプレゼントのはず。80年代にレンタルビデオで観て、その時の衝撃が忘れられないという方にも喜んでもらえるかと思う。3本全部コンプリートしてこその映画祭なので、是非、時間を作ってコンプリートしてほしいところだ。こんな素敵なラインナップをニューマスター版の日本語字幕付きで観られる今の時代にも感謝したい。

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映画館が見せ物小屋に大変身! 封印されていた呪いの映画たちが登場 『ホラー秘宝まつり2024』

飯塚克味(いいづかかつみ)
番組ディレクター・映画&DVDライター
1985年、大学1年生の時に出会った東京国際ファンタスティック映画祭に感化され、2回目からは記録ビデオスタッフとして映画祭に参加。その後、ドキュメンタリー制作会社勤務などを経て、WOWOWの『最新映画情報 週刊Hollywood Express』の演出を担当した。またホームシアター愛好家でもあり、映画ソフトの紹介記事も多数執筆。『週刊SPA!』ではDVDの特典紹介を担当していた。現在は『DVD&動画配信でーた』に毎月執筆中。TBSラジオの『アフター6ジャンクション』にも不定期で出演し、お勧めの映像ソフトの紹介をしている。



■映画祭タイトル:「ホラー秘宝まつり 2024」
■開催時期:2024年8月30日(金)開催
■均一料金:一般1600 円(税込) ※各種劇場サービス併用可
■上映劇場
東京:キネカ大森、アップリンク吉祥寺
札幌:サツゲキ/栃木:宇都宮ヒカリ座/千葉:キネマ旬報シアター/名古屋:シネマスコーレ
新潟:高田世界館/京都:アップリンク京都/大阪:シアターセブン/神戸:CinemaKOBE
広島:サロンシネマ1・2/沖縄:桜坂劇場 ほか
※各劇場の上映作品、タイムテーブル、イベント日程等詳細は各劇場HPをご確認ください
■提供・配給 キングレコード

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