原一男が20年の歳月をかけた水俣病のドキュメンタリー 上映時間6時間 「水俣曼荼羅」公開決定

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原一男が20年の歳月をかけた水俣病のドキュメンタリー 上映時間6時間 「水俣曼荼羅」公開決定

 「ゆきゆきて、神軍」の原一男監督が20年の歳月をかけて制作した水俣病についてのドキュメンタリー映画「水俣曼荼羅」の劇場公開日が、11月27日に決まった。

 「水俣曼荼羅」は、日本四大公害病の一つとして知られる水俣病を題材に、補償をめぐって根本的解決には程遠い状況について、原監督が20年に渡って取り組んだ作品。密教の曼荼羅のように水俣で生きる人々の人生と物語を映し出した、3部構成・6時間12分の壮大な叙事詩となっている。

 「第1部 病像論を糾す」では、川上裁判によって国が患者認定制度の基準としてきた「末梢神経説」が否定され、「脳の中枢神経説」が新たに採用されたものの、実証した熊大医学部浴野教授は孤立無援の立場に追いやられ、国も県も判決を無視したことなどが描かれる。

 「第2部 時の堆積」では、小児性水俣病患者・生駒さん夫婦の差別を乗り越えて歩んできた道程、胎児性水俣病患者さんとその家族の長年にわたる葛藤、90歳になってもなお権力との新たな裁判闘争に賭ける川上さんの、最後の闘いのいきさつが描かれる。

 「第3部 悶え神」では、胎児性水俣病患者・坂本しのぶさんの人恋しさとかなわぬ切なさを伝える。また、患者運動の最前線に立ちながらも生活者としての保身に揺れる生駒さん、長年の闘いの末に最高裁勝利を勝ち取った溝口さん、溝口さんの信じる庶民の力などが捉えられている。

【コメント】

■原一男監督
完成作品は、6時間を超える超長尺になった。が、作品の中に入れたかったが、追求不足ゆえに割愛せざるを得ないエピソードがたくさんある。
かろうじてシーンとして成立したものより、泣く泣く割愛したシーンの方が多いくらいなのだ。
だが私たちは撮れた映像でしか構成の立てようがない。その撮れた映像だが、完成を待たずにあの世に旅立たれた人も、多い。
ともあれ、水俣病問題が意味するものは何か?水俣病は、メチル水銀中毒である、と言われていますが、その水銀が、クジラやマグロの体内に取り込まれて今や地球全体を覆っています。
日本の小さな地方都市で発生した水俣病が、今や全世界の人間にとっての大きな問題になっています。ことの大きさを強く強く訴えたいと願っています。

【作品情報】
水俣曼荼羅
2021年11月27日(土)より渋谷シアター・イメージフォーラム他にてロードショー
配給:疾走プロダクション
©疾走プロダクション 

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