2025年11月7日より劇場公開される、第78回ロカルノ国際映画祭インターナショナル・コンペティション部門で最高賞の金豹賞とヤング審査員賞特別賞をダブル受賞した、「ケイコ 目を澄ませて」「夜明けのすべて」の三宅唱監督最新作「旅と日々」から、新たな場面写真が公開された。
場面写真には、旅に出たものの、なにをするでもなく定食屋で読書をする脚本家の李(シム・ウンギョン)らの姿が収められている。急な来客である李に精一杯のもてなしをしようと台所に立つ、宿の主人・べん造(堤真一)、夏の海辺で風を受ける島の青年・夏男(髙田万作)、同じ島にいるはずなのにどこか陰をおびた女・渚(河合優実)の姿などの様子も見られる。さらに、李がつげ義春の「海辺の叙景」を原作にシナリオを書いた映画のなかで、原作さながらに表現された、嵐の中で海辺の小屋にポツンと座り込む夏男の姿なども捉えられている。
「旅と日々」は、つげ義春の「海辺の叙景」「ほんやら洞のべんさん」を原作に、脚本家の李(シム・ウンギョン)が旅先でのべん造(堤真一)との出会いをきっかけに、人生と向き合っていく過程を李本人がつづる物語。うだつの上がらない脚本家の李は、ひょんなことから訪れた雪すさむ旅先の山奥で、おんぼろ宿に迷い込む。雪の重みで今にも落ちてしまいそうな屋根。“べん造"と名乗るやる気の感じられない宿主。暖房もない、まともな食事も出ない、布団も自分で敷く始末。しかし、べん造にはちょっとした秘密があるようだった。ある夜、べん造は李を夜の雪の原へと連れ出す。
一足先に本作を鑑賞した著名人によるコメントも公開された。コメントは以下の通り。
【コメント】
■濱口竜介(映画監督)
粒子のうごめきを見つめる時間。私たちを生かしているものに思いを馳せる。冷え冷えとした画面を眺めているうちに、体の深部が熱くなるのを感じる。人生に必要な時間が、この映画に凝縮されている。癒やされた。
■瀧本幹也(写真家)
俳優陣の豊かな存在感と、画に映らないほどの匂い立つ気配に満ちた名作。
原風景と心の景色が見事に響き合う映像世界に感嘆した!
■糸井重里(ほぼ日代表)
「こういうのも、ありだ!」という驚きに似た思いをかつて「つげ義春」のマンガで味わったのだけれど、また同じ思いをこの映画で味わってしまった。マンガと映画とは別のものなのに!
■イ・ラン(音楽家/作家)
『生』とは、見知らぬ土地で物たちの名前を覚え、不思議で仕方なかった景色がやがて日常になるその瞬間を待つ、長い旅だ。今も新しい言葉はどこかで生まれ続け、私たちは永遠に言葉を学びながら、いつでも“外人”になる準備をしている。
■上出遼平(テレビディレクター/作家)
私のこころは今ホクホクです。観た後に旅に出たくなる映画はたくさんあるけれど、観ている時間そのものが旅でした。
この作品はもはや国宝だと思います。
■柴田聡子(シンガー・ソングライター/詩人)
海のシーン、映像から溢れ返る詩情が言葉をさらっていった。もう言葉は戻ってこないのかもしれないと思った。けれども雪が引き留めた。人が言葉とぎこちなく可笑しく向き合う様子を映像が見つめていた。
■伊藤亜紗(美学者)
接続詞のない日記みたいにとつとつと転がっていく物語。思わぬ結末にふて寝するべん造の背中が愛おしくて、ケラケラ笑ってしまった。
■奥山由之(映画監督/写真家)
夏と冬、虚と実、ユーモアと哀しみのあわいで心地よく揺らされながら、気がつけば言葉の檻から解放されていた。情緒と静寂がたっぷり染み込んだ三宅監督流ヴァカンス映画、大好きでした。
■佐久間宣行(テレビプロデューサー)
美しさとユーモア。儚さと退屈。刺激と癒し。
人生の相反するようで似ている瞬間が、この映画にはたくさん転がっている。
さりげなく、それはもう滅法面白く。
■伊賀大介(スタイリスト)
「積極的逃避」こそが、人生を豊かにしてゆく。
■金川晋吾(写真家)
つげ義春の漫画でしか経験できないはずの捉え所のない「よさ」が映画という時間のなかにたちあらわれている。なんでこんなことが起こり得るのだろう。これは確かにつげの漫画なのだけれど、同時に全く別の「旅と日々」という映画以外の何者でもないものになっている。
■柴崎友香(小説家)
自分のいる場所が変わると、気持ちも少しずつ変わる。
小さいようで大きいかもしれない旅が、長く心に残り続ける。
【作品情報】
旅と日々
2025年11月7日(金)、TOHOシネマズ シャンテ、テアトル新宿ほか全国ロードショー
配給:ビターズ・エンド
©2025『旅と日々』製作委員会