カンヌ映画祭のパルムドールを2度受賞しているジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ監督の最新作「トリとロキタ」(公開中)から、トリとロキタが何者かに追われ逃げる姿を57秒のワンカットで捉えたシーンの、本編映像が公開された。
右足をけがし、足を引きずりながらも必死に走るロキタと、それを支えるトリ。しかし崖にしか見えないボタ山を下りないと、追手に追いつかれてしまう。足を負傷したロキタが下りるのは不可能かと思われるが、機転を利かせたトリは、近くにあるベニヤ板を使って滑って下りることを思いつく。ベニヤ板で滑るには勇気が必要な傾斜にも関わらず、ふたりは迷うことなく山を滑り落ちる。
このシーンは長回しのワンカットで撮影された。ダルデンヌ監督はシーンごとに時間をかけてリハーサルを必ず行うが、このシーンはリハーサルをしすぎるとボタ山が削れて危ないからという理由で、通常よりもリハーサルを重ねずに本番の撮影を行ったという。
「トリとロキタ」は、アフリカからベルギーのリエージュへ流れ着いたトリとロキタの物語。トリはまだ子どもだがしっかり者。10代後半のロキタは、ビザがないために正規の職に就くことができない。祖国にいる家族のために、ロキタはドラッグの運び屋をして金を稼ぐ。偽りの姉弟として生きるふたりは、どんなときも一緒。年上のロキタは社会からトリを守り、トリは時おり不安定になるロキタを支える。そしてロキタは、偽造ビザを手に入れるために、さらに危険な闇組織の仕事を始める。他に頼る者のいないふたりの温かな絆と、それを断ち切ろうとするかのような冷たい世界が描かれる。
【作品情報】
トリとロキタ
上映中
配給:ビターズ・エンド
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