「サンゲリア」 「ゾンビ」以上に愛されているかもしれないゾンビ映画 【飯塚克味のホラー道】

映画スクエア

著者名:飯塚 克味

「サンゲリア」 「ゾンビ」以上に愛されているかもしれないゾンビ映画 【飯塚克味のホラー道】
サンゲリア -日本語吹替音声完全収録4Kレストア版 (C) R.T.I. S.p.A.- Rome, Italy. Licensed by Variety Distribution Srl - Rome, Italy. All Rights reserved.

飯塚克味のホラー道 第19回「サンゲリア」

 下手をするとジョージ・A・ロメロ監督の『ゾンビ』以上に愛されているかもしれないゾンビ映画『サンゲリア』のBlu-rayが、4Kレストアされた高画質版で、ホラーマニアックスに登場した。

 話は至ってシンプル。ニューヨークにヨットの漂流船が流れ着き、その船主の娘が、行方不明の父親をカリブ海の孤島に記者と一緒に捜しに行く。だがそこでは謎の奇病が流行り、死者が次々と蘇って、生者を襲っては食らう地獄と化していた。見どころは何と言っても腐敗臭漂うゾンビのメイク。墓場から立ち上がるゾンビの眼には大量のミミズがうごめき、骨が傷んでいる様子も衝撃だった。そして今でも語り草となっているのが、前半の見せ場であるゾンビ対サメのシーン。本物のサメを使って、ゾンビが腕を食いちぎられても、サメにしがみつく奇跡の撮影を実現している。

 監督はイタリアンホラーの巨匠ルチオ・フルチ。日本での劇場公開作は本作ぐらいだったが、80年代ホラーブーム時代に『地獄の門』『ビヨンド』『墓地裏の家』などが一挙ビデオ化され、日本でも知名度が大きくアップした。ストーリーなどは破綻していても、こだわり抜いた残酷描写にファンは狂喜乱舞し、96年に他界した後も、旧作が続々リマスターされている。本作のマスターは北米のブルーアンダーグラウンド社が4K化を敢行したもので、ゾンビメイクやスプラッター場面など、公開時より鮮明な映像になっているのが一目で分かるはずだ。

 『サンゲリア』の初公開は今から40年以上前の1980年5月24日。春先の『地獄の黙示録』『影武者』『クレイマー、クレイマー』と言った話題作が落ち着き、夏の大作『スター・ウォーズ/帝国の逆襲』『スター・トレック』『復活の日』の公開が迫ってきた時期である。目玉が串刺しになる寸前、絶叫する女性の映像(当時は許された)を繰り返しテレビで流す強引な宣伝で、オフシーズンながらスマッシュヒット。地方は評価の高かった誘拐サスペンス『ジャグラー/ニューヨーク25時』と2本立てだったこともプラスに作用した。

 だが本作が本領を発揮したのは80年代半ばに訪れたホラーブームの時だった。すでに劇場での上映権が切れていたのか、名画座などではあまり見かけることはなかったが、当時、絶頂期を迎えていたレンタルビデオで、見せ場の多い本作は大人気。特に特殊メイクについてはコマ送りなどして、どうやって撮っているのかを調べるマニアも急増して、本作の腐敗を表現したゾンビメイクは話題沸騰。とうとう、まだ珍しかったノートリミング(当時は両端をカットした4:3のテレビサイズが普通だった)のLDまで発売されるほど、特別扱いされるようになってきていた。その後、DVD、BDと繰り返しリリースされ続けてきた本作、もしかしたら買っている人たちはずっと同じなのかもしれない。だが今回のリリースは、BDとしては最後になってもおかしくないほど、こだわりに満ちたクオリティの高いものとして太鼓判を押したい。

 先に記した本編クオリティの他、今回のために新たに日本語吹替版を制作。主演のイアン・マカロックには東地宏樹、ヒロインのティサ・ファローには甲斐田裕子がキャスティングされている。昔のテレビ放映版も収録されているので、比較してみるのも楽しいだろう。特典は旧版に収録された420分もの特典映像をそのまま移植。ギレルモ・デル・トロ監督が少年時代にメキシコで本作に触れた時の衝撃を語る映像や、イアン・マカロックが自身のキャリアと共に、撮影時の思い出を語るインタビューなど、どれも貴重なものばかり。初回版にはポストカード4枚組も封入されているので、今までソフトを買い控えていた人にも安心してお勧めできる内容になっている。

 因みに本作の原題は『ZOMBIE』や『ZOMBIE FRESH EATERS』など、公開時期や国によって様々なタイトルが付けられている。これは商魂たくましいイタリア映画らしく、他のヒット作にあやかり、少しでも売り上げを伸ばそうとした結果のことである。本編のタイトルが『ZOMBI 2』になっているが、もちろんジョージ・A・ロメロの『ゾンビ』とは何の関係もないので、悪しからず。

 気になっていたけど観たことがない、劇場公開以来観ていないという方も、この機会に是非、手に入れて、『サンゲリア』の素晴らしさを知ってほしい!

「サンゲリア」 「ゾンビ」以上に愛されているかもしれないゾンビ映画 【飯塚克味のホラー道】
サンゲリア -日本語吹替音声完全収録4Kレストア版-SPECIAL (C) R.T.I. S.p.A.- Rome, Italy. Licensed by Variety Distribution Srl - Rome, Italy. All Rights reserved.

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「サンゲリア」 「ゾンビ」以上に愛されているかもしれないゾンビ映画 【飯塚克味のホラー道】

飯塚克味(いいづかかつみ)
番組ディレクター・映画&DVDライター
1985年、大学1年生の時に出会った東京国際ファンタスティック映画祭に感化され、2回目からは記録ビデオスタッフとして映画祭に参加。その後、ドキュメンタリー制作会社勤務などを経て、現在はWOWOWの『最新映画情報 週刊Hollywood Express』(毎週土曜日放送)の演出を担当する。またホームシアター愛好家でもあり、映画ソフトの紹介記事も多数執筆。『週刊SPA!』ではDVDの特典紹介を担当していた。現在は『DVD&動画配信でーた』に毎月執筆中。TBSラジオの『アフター6ジャンクション』にも不定期で出演し、お勧めの映像ソフトの紹介をしている。


■サンゲリア -日本語吹替音声完全収録4Kレストア版-SPECIAL
特典ディスクを含む2枚組
7,800円 (税抜)

■サンゲリア -日本語吹替音声完全収録4Kレストア版-
1枚組
4,800円 (税抜)

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