コメディ要素も加わった伝説のホラー続編 80年代を代表するスプラッターホラー 『悪魔のいけにえ2』

映画スクエア

著者名:飯塚 克味

飯塚克味のホラー道 第96回『悪魔のいけにえ2』

コメディ要素も加わった伝説のホラー続編 80年代を代表するスプラッターホラー 『悪魔のいけにえ2』
『悪魔のいけにえ2 ‒4Kレストア版 SPECIAL‒』 THE TEXAS CHAINSAW MASSACRE 2 © 1986 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. All Rights Reserved.
コメディ要素も加わった伝説のホラー続編 80年代を代表するスプラッターホラー 『悪魔のいけにえ2』
『悪魔のいけにえ2 ‒4Kレストア版』 THE TEXAS CHAINSAW MASSACRE 2 © 1986 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. All Rights Reserved.

 恐らく未来永劫、ホラー映画史に名を刻む『悪魔のいけにえ』(1974)。その後、関連作が山のように作られ続けているが、正史と呼べるのは、同じトビー・フーパーが監督した、1986年のこの続編だけではないだろうか。前作で生き残ったサリーは発狂死したと、前作と同じトーンのナレーションで始まる本作。以前も書いたが、実は『悪魔のいけにえ』は笑える要素も入れた、ホラーコメディのつもりで世に出したのだが、怖すぎるあまり、誰も笑わなかった。そこで続編では、よりコメディ色を強く出すことになったようだ。アウターケースの裏側に使われている一家が記念撮影しているスチールは、当時、流行っていたジョン・ヒューズ監督の青春映画『ブレックファスト・クラブ』(1985)のパクリだし、劇中、いくつも笑いのポイントが分かりやすく配置してある。だが、それでもホラー慣れしていない観客にとっては、思いっきり怖い映画だった。

 『悪魔のいけにえ』で衝撃的デビューを果たしたトビー・フーパー監督は、その後、『悪魔の沼』(1976)『死霊伝説』(1979)『ファンハウス/惨劇の館』(1981)を経て、スティーブン・スピルバーグ製作の超大作『ポルターガイスト』(1982)に着手するが、スピルバーグと衝突してしまうことで、メジャースタジオとの仕事は、ほぼ消滅。その後、エンタメ映画を量産するキャノンフィルムと3本契約。本作は、『スペースバンパイア』(1985)『スペースインベーダー』(1986)に続く作品となった。

 物語は前作と直結する形で進む。行方をくらましていた食人一家。彼らは別の場所でチリソース(もちろん人肉だ)のビジネスを行い、成功を収めていた。そしてビジネスのため、夜な夜な、出没しては殺人を繰り返していた。ある晩、ラジオの生中継に携帯電話でつながっていた若者たちが犠牲になる。彼らを追っていた主人公のレフティは、そのラジオ局に行き、女性DJのストレッチに、犯人捜しのため事故当時の音声を放送するよう依頼する。それはストレッチをも巻き込む、危険な賭けだった。

 とにかくホラーブーム真っ盛りに作られただけに、血のりの量も特殊メイクも壮絶そのもの。1作目のようなざらざらした質感で、本物のような手触りこそないものの、レフティを演じたデニス・ホッパーの狂気に満ちた演技や、ポップな色彩の照明は一見の価値はあるはずだ。

コメディ要素も加わった伝説のホラー続編 80年代を代表するスプラッターホラー 『悪魔のいけにえ2』
THE TEXAS CHAINSAW MASSACRE 2 © 1986 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. All Rights Reserved.

 リアル世代で体験した身としては、何と言っても東京国際ファンタスティック映画祭’86の盛り上がりが忘れられない。気難しいと言われるトビー・フーパー監督だが、渋谷ピカデリーで行われた最初の上映を見た時、日本のファンの熱狂的な歓迎ぶりに大興奮し、2回目の渋谷パンテオンで1300人の大観衆を迎えての上映時は、舞台裏で「もっとボリューム上げて!(MORE LOUD!)」とスタッフに注文していた。自分はまだ学生で、学校の課題として映画祭の記録ビデオを撮影していたのだが、トビー・フーパー監督から労いの言葉をいただけたことも忘れられない思い出となっている。

 それほど映画祭では盛り上がった『悪魔のいけにえ2』だが、映画祭後に始まった通常興行では大苦戦。2週間ほどで公開を終えたと記憶している。配給した日本ヘラルド映画は、ホラー色を前面に出した宣伝をしたが、それがマイナスに作用したのか、まだホラコメというジャンルが観客側に準備ができていなかったかは分からない。だが、その後、本作はパッケージ化される度に再評価され、2016年にはキングレコードが「最終盤」として特典満載のBDを発売。そして今年、Vinegar Syndromeが2022年にリリースした4K UHDのマスターを採用して、国内版が発売されるに至った(通常版とSPECIALの2種類)。

 4K UHDの画質はかなりグレインが乗っていて、モニターが通常設定のままだと、やや目障りなレベルに感じるかもしれない。モニターのシャープネスを落とす等、微調整をして好みの画質に追い込んでもらいたい。プロジェクターでご覧の方はいい感じにグレインが散るので、映画的な雰囲気を感じられるはずだ。「SPECIAL」には、初収録の映像特典も追加されている。目玉はトム・サヴィーニとキャロライン・ウィリアムズの2022年のインタビュー。サヴィーニからは特殊メイクの仕掛けや、トビー・フーパーがドクターペッパーを愛飲していたことが明かされる。ウィリアムズは「80年代のホラーはポルノ映画のような扱いだった」と当時を振り返り、仕事に困っている時、デニス・ホッパーが彼女を助けてくれたことも打ち明ける。両者とも、口を揃えるのは、クライマックスの食人一家が暮らすセットの素晴らしさ。新聞社の建物に、美術スタッフが学生を集めて小道具やら何やら作らせたそうだ。

 ザッツ・80年代ホラーの本作、ヒロインのストレッチを演じたキャロライン・ウィリアムズはインタビューで、こう締めてくれた。「この映画を見ないと絶対損よ!」

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コメディ要素も加わった伝説のホラー続編 80年代を代表するスプラッターホラー 『悪魔のいけにえ2』

飯塚克味(いいづかかつみ)
番組ディレクター・映画&DVDライター
1985年、大学1年生の時に出会った東京国際ファンタスティック映画祭に感化され、2回目からは記録ビデオスタッフとして映画祭に参加。その後、ドキュメンタリー制作会社勤務などを経て、WOWOWの『最新映画情報 週刊Hollywood Express』の演出を担当した。またホームシアター愛好家でもあり、映画ソフトの紹介記事も多数執筆。『週刊SPA!』ではDVDの特典紹介を担当していた。現在は『DVD&動画配信でーた』に毎月執筆中。TBSラジオの『アフター6ジャンクション』にも不定期で出演し、お勧めの映像ソフトの紹介をしている。


【商品情報】
『悪魔のいけにえ2 ‒4Kレストア版‒』
UHD発売中
9,680円 (税込)
発売元:株式会社ニューライン
販売元:株式会社ハピネット・メディアマーケティング
THE TEXAS CHAINSAW MASSACRE 2 © 1986 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. All Rights Reserved.

『悪魔のいけにえ2 ‒4Kレストア版 SPECIAL‒』
UHD発売中
15,180円 (税込)
発売元:株式会社ニューライン
販売元:株式会社ハピネット・メディアマーケティング
THE TEXAS CHAINSAW MASSACRE 2 © 1986 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. All Rights Reserved.

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