殺人鬼に殺害された娼婦 淡々と死体を荒野に捨てる殺人鬼 「聖地には蜘蛛が巣を張る」本編映像

映画スクエア

 2023年4月14日より劇場公開される、2022年第75回カンヌ国際映画祭でザーラ・アミール・エブラヒミが女優賞を受賞した、アリ・アッバシ監督最新作「聖地には蜘蛛が巣を張る」から、冒頭シーンの本編映像の一部が公開された。

 映像は、聖地マシュハドで、“スパイダー・キラー”と呼ばれる殺人鬼により殺害された娼婦のアップから始まる。男は、殺害した娼婦の死体をヒジャブで淡々と包み、バイクの後ろに乗せて運び、夜の荒野に捨てていく。再びバイクで暗い道を進む男の指に光るのは、敬虔な信者の証である赤いメノーの指輪だった。蜘蛛の巣のように広がるマシュハドの街の光の中に男の姿が溶けていき、本作の原題「Holy Spider(聖なる蜘蛛)」が、ペルシャ語と英語で浮かびあがる。

 男の乗るバイク音と重なるように聞こえる音楽を担当したのは、アリ・アッバシ監督の「マザーズ」「ボーダー 二つの世界」も手掛けた、デンマーク出身の作曲家マーティン・ディルコフ。本作にて、ロバート賞(デンマーク・アカデミー賞)作曲賞を受賞した。アリ・アッバシは、「マシュハドの暗黒部が持つ無骨で、工業的な要素に合うものにしたいと思っていた」と音楽について語っている。

 また、アリ・アッバシ監督は本作について、「『聖地には蜘蛛が巣を張る』は、イランで最も悪名高き連続殺人犯、サイード・ハナイの壮絶な一生を描いた作品だ」「犯人が敬虔な信者で模範的な人物であることを踏まえると、イラン社会に対する風刺作品であるともいえる」「ハナイが聖なる街マシュハドで娼婦を襲っていた2000年代初頭は、私もまだイランに住んでいた頃だった。ハナイは、逮捕され、裁判にかけられるまでに、16人もの女性を殺害した。私がこの事件に関心を持ったのは、その裁判が行われている時だった。普通の世界なら、16人も殺した男は犯罪者として見られるはずだ。しかし、ここでは違った。一部の市民や保守派メディアは、ハナイを英雄として称え始め、ハナイは“汚れた”女たちを街から始末するという宗教的な務めを果たしただけだと擁護したのだ。私はそれを知った時に、この出来事を基に映画を作ろうと思った」と語っている。

 「聖地には蜘蛛が巣を張る」は、2000年から2001年にかけてイランで実際に起こった、16人もの犠牲者を出した売春婦連続殺人事件から着想を得て作られた作品。監督を務めたのは、「ボーダー 二つの世界」などで知られる、イラン出身でデンマークやスウェーデンで活躍するアリ・アッバシ。主演の女性ジャーナリストを演じたザーラ・アミール・エブラヒミは、イランで活躍していたが、2008年フランスへ亡命した女優。その後はフランスの映像業界で活躍。2017年にフランス国籍を取得後、意欲的に映画に出演している。

【作品情報】
聖地には蜘蛛が巣を張る
2023年4月14日(金) 新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ渋谷、TOHOシネマズシャンテ他全国順次公開
配給:ギャガ
©Profile Pictures / One Two Films

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