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沖縄における私宅監置制度を追ったドキュメンタリー映画「夜明け前のうた ~消された沖縄の障害者~」が3月20日に劇場公開される。公開を前に学生を対象にした特別試写会が16日に実施され、原義和監督らが参加した。
「夜明け前のうた ~消された沖縄の障害者~」は、沖縄を拠点に私宅監置の問題を追いかけ続けてきたフリーのテレビディレクターである原義和が、監督・撮影・編集を務めた作品。私宅監置は精神障害者を小屋などに隔離した制度で、本土では1950年に禁止となった。だが沖縄では本土復帰の1972年まで続いた。隔離された犠牲者についての、公的な調査や検証は行われていない状況にある。
上映後に学生たちは、「若い世代は、私宅監置のことを知らない人が多い。映画をきっかけに伝えていかなければいけない」「今も難民の人を(入管で)長期収容していたりするので、今も続いている問題だと認識すべきと感じた」「病気を患った途端、家族が隔離してしまうというのが驚きだった」などの感想を述べた。原監督は「家族が隔離したというより、私宅監置は法律に基づく社会的隔離であり、隔離したのは社会。家族や本人の責任にすり替えられている現実がある」と説明。学生たちは私宅監置という法制度があったこと自体に驚いた様子を見せていた。
本作では、当事者の顔と名前をぼかさずに描いている。原監督は、「隔離によって見えなくされ、存在を消された人たちをぼかして出すことで、もう一度存在を消してしまうように思え、そうしてはいけないと思った。本人に会って了解を得るのが筋なので、まず本人に会いたいと、親戚を探すなど情報を得る努力をした」と、顔と名前を出すことにした経緯を説明。学生たちからは、「本人の気持ちはわからないから想像するしかないが、顔をぼかしているより、写真と名前が出ることでその人との距離が縮まる。ご家族も顔を隠さず出ていたのがすごい勇気だと思う」などの意見が出された。
さらに、精神科病院のないイタリアと日本の違いなどについて原監督から語られ、学生たちも自身の体験談を交えながら語るなど、闊達な意見交換の場となった。
【作品情報】
夜明け前のうた ~消された沖縄の障害者~
2021年3月20日より東京 K’s cinema、4月3日より沖縄 桜坂劇場ほか全国順次公開
配給:新日本映画社
©️2020 原 義和