自身の自閉症スペクトラムの弟と父親の関係がモデル 「旅立つ息子へ」脚本ダナ・イディシスインタビュー

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(c)Yanai Techiel

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 子育てに人生のすべてをささげた父と自閉症スペクトラムの息子の逃避行を描く映画「旅立つ息子へ」が、現在公開されている。本作の脚本を手掛けたダナ・イディシスのインタビューが公開された。

 ダナ・イディシスは、1986年にニューヨークで生まれた。その後、イスラエルのテレビシリーズ「On the Spectrum」(2018-)の企画・脚本を手がけ、世界の優れたテレビ番組を紹介する国際コンクールのモンテカルロ・テレビ祭で、最高賞に値するゴールデンニンフ賞を3部門受賞(最優秀テレビコメディ・シリーズ賞、コメディ部門女優賞、男優賞)。国際的な賞を多数受賞を果たしたキャリアを持っている。本作では、自身の自閉症スペクトラムの弟と父親の関係をモデルに脚本を手がけた。

 物語の鍵となるチャールズ・チャップリンの映画「キッド」についてイディシスは、「子供の頃、私は兄弟と、ビデオでチャールズ・チャップリンの映画ばかり見ていました。ほんの数分で、映画の中に引き込まれ、チャップリンは私たちのヒーローになっていました。大人になった今でも弟だけは、毎日のようにチャップリンの映画を観ています。特に観ているのは『キッド』です。弟が、この映画に愛着を持っているのは偶然ではありません。彼と私たちの父との特別な関係が、間接的に描かれているような映画でもあるのです」と語っている。

 父と弟をモデルにしたことついては、「言葉が無くても理解し合えるふたりは、現実から離れて、まるで大きなシャボン玉の泡の中で生きているように見えたのです。時には父親の過保護が過ぎることもあります。この2人をモデルにしたのは、特別だけど、今しかない2人の関係と世界観を伝えたかったからです。父と弟の別れの瞬間が来たとき、どうなってしまうのか…。その不安を皆さんにも感じて欲しいという思いがきっかけです」と打ち明けている。

 最後に本作のテーマについては、「この映画は、自閉症スペクトラムの子供を持つ父親や、特別な支援が必要な難病を患う子供をもつ父親の苦闘を描いた映画ではありません。普遍的な父と息子の物語であり、必ず訪れる親子の別れの物語です」と語っている。

 「旅立つ息子へ」は、深い絆で結ばれた自閉症スペクトラムを抱える息子と父の2人が、引き離されないため逃避行に出る物語。親としての葛藤、子供への深い愛、やがて訪れる巣立ちの時を描いている。監督を務めるのは、東京国際映画祭で2度のグランプリ受賞を果たした唯一の監督である、イスラエルのニル・ベルグマン。息ウリ役を演じた新人ノアム・インベルは、オーディションでこの役を勝ち取り、自然な姿で複雑なキャラクターを体現している。

【作品情報】
旅立つ息子へ
公開中
配給:ロングライド
©︎ 2020 Spiro Films LTD.

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