五社英雄監督 全24作品紹介 おすすめ作品満載 迫力のアクション時代劇&艷やかな女性の情念

映画スクエア

 アイデア豊富な演出で、根強いファンを持つ五社英雄監督。初期にはアウトローを主人公とした迫力あるアクション時代劇で人気を博し、中期以降は「鬼龍院花子の生涯」や「吉原炎上」など、女性の悲哀に満ちた人生や情念を艶やかに描いた作品を生み出しました。そんな五社英雄監督の全映画作品を紹介します(短編や一部参加だけの作品などは除いています)。

 1929年、東京の浅草に生まれます。10代で戦争を経験し、海軍の飛行予科練に志願。終戦後は明治大学商学部に入学しました。

 大学卒業後は映画会社への就職を目指しますが叶わず、ラジオ局へ就職。その後、フジテレビへ入社します。連続テレビ時代劇「三匹の侍」などの演出を手がけ、ドラマがヒットしたことから映画監督としての道が開けます。1964年、「三匹の侍」の映画化で監督デビュー。その後も「人斬り」などのアクション時代劇を手がけます。1980年に拳銃の不法所持に関わり、フジテレビを退社。映画界から離れ失意に沈む時期を過ごします。1982年、宮尾登美子原作の「鬼龍院花子の生涯」で監督に復帰。以降、「陽暉楼」、「吉原炎上」など、壮絶な人生を生き抜く女性たちを主人公にしたヒット作を生み出します。1992年、遺作となった「女殺油地獄」が公開された後、63歳で亡くなりました。

三匹の侍 ★おすすめ!

 フジテレビ系列で放送され人気を博した、同名の連続テレビ時代劇を映画化。当時フジテレビのプロデューサーとして演出を担当していた五社英雄が、映画監督としてデビューした作品です。

 浪人の柴左近は、ある村に立ち寄ります。そこでは凶作や重税に苦しむ百姓たちが代官に訴えを起こそうとしていました。左近は村人たちを助け、騒動はいったん納まります。ところが、代官の松下宇左衛門は百姓たちが領主に訴えることを恐れて、不良浪人に百姓たちを襲わせる計画を立てます。

 テレビドラマ版の第1シリーズと同じく、柴左近役を丹波哲郎が演じています。斬新な殺陣のシーンやカメラワーク、刀の効果音を取り入れた臨場感のある演出で、五社英雄の映画監督としての足がかりとなる作品になりました。

  • 作品

三匹の侍

公開年 1964年
製作国 日本
監督  五社英雄
出演  丹波哲郎、長門勇、平幹二朗、桑野みゆき、香山美子

獣の剣

 ニヒルな浪人侍を主人公にしたアクション時代劇で、五社英雄の映画監督2作目です。藩政のために虚しく切り捨てられていく武士の悲しみを、壮絶なチャンバラシーンが引き立てます。

 浪人の平木弦之助は次席家老星野の策略にかかり、城代家老の山岡を斬ってしまいます。追われる身となった平木は、逃げるための資金を得ようと、砂金の取れる山奥へ向かいます。追手たちが迫る中、藩の命令で砂金を採る山根とその妻たかに出会います。

 テレビドラマ版および映画版「三匹の侍」に出演していた平幹二朗が、虚無的な雰囲気の主人公を演じています。また、当時「若大将」シリーズや「網走番外地」シリーズで活躍していた田中邦衛が平木と共に山へ入る丹次役を、山根の妻たか役を岩下志麻が演じています。

  • 作品

獣の剣

公開年 1965年
製作国 日本
監督  五社英雄
出演  平幹二朗、加藤剛、岩下志麻、田中邦衛、木村俊恵

五匹の紳士

 3千万円をめぐり、男たちの思惑が交差するアクションドラマ。主演は仲代達矢で、五社英雄が監督を務めています。

 銀行員の笈田は交通事故を起こして服役し、刑務所で出会った仙石から3千万円を山分けする話を持ちかけられます。出所した笈田は、仙石の指示にしたがって、仙石の情婦・歌子に会います。歌子は笈田に3人の男の殺害を依頼し、笈田は第一の男、元木の元を訪れますが……。

 主人公の笈田を仲代達矢が演じています。

  • 作品

五匹の紳士

公開年 1966年
製作国 日本
監督  五社英雄
出演  仲代達矢、平幹二朗、田中邦衛、桑野みゆき、天本英世

丹下左膳 飛燕居合斬り

 時代劇の人気ヒーロー、丹下左膳が、大金の入った壺をめぐり将軍の側近一味と争奪戦を繰り広げます。昭和初期に活躍した小説家、林不忘の原作を映画化。監督に五社英雄、主演に時代劇のスター、中村錦之助を迎えたアクション時代劇です。

 将軍吉宗の側近である愚楽老人は、小藩である柳生藩を取り潰そうと、日光東照宮の改修という無理難題を命じます。柳生藩藩主の対馬守は、家宝「こけ猿の壺」に隠された黄金百万両を工事費用にあてようとしますが、愚楽の手下が壺を奪おうと襲ってきます。そのとき、どこからともなく隻眼隻手の浪人、丹下左膳が現れ、壺を奪っていくのでした。

 五社英雄は監督だけでなく、田坂啓とともに脚色も担当しました。

  • 作品

丹下左膳 飛燕居合斬り

公開年 1966年
製作国 日本
監督  五社英雄
出演  中村錦之助、木村功、淡路恵子、入江若葉、藤岡琢也

牙狼之介

 天涯孤独の浪人の活躍を描いた剣戟アクション。「丹下左膳 飛燕居合斬り」の脚色を担当した田坂啓によるシナリオを、五社英雄監督が映画化した作品です。

 盲目のお千世は、荒井宿で問屋場を営んでいました。あるとき、江戸の勘定奉行へ届けられる公金3万両が荒井宿を通ることになり、隣の今井宿までの運送の仕切りを任されることに。それを知った殺し屋の秋月左内や、七里役所の仁左衛門は公金を奪おうと画策。お千世は髭面の浪人、牙狼之介を護衛として雇うことにするのですが……。

 五社英雄は劇団俳優座で活動していた夏八木勲を主演として起用。時代劇ながら西部劇タッチの演出も特徴的でした。

  • 作品

牙狼之介

公開年 1966年
製作国 日本
監督  五社英雄
出演  夏八木勲、内田良平、宮園純子、富永美沙子、桜町弘子

牙狼之介 地獄斬り

 夏八木勲主演のアクション時代劇「牙狼之介」の続編。監督の五社英雄、脚本の田坂啓、撮影の吉田貞次といった面々が再集結しています。

 今井宿から流れ着いた浪人の牙狼之介は、 道すがら護送中の罪人たちに出会います。その中のひとり、河津孫兵衛と名乗る男が、自分の父親に似ていると感じた狼之介は護送の後をつけていくことに。やがて狼之介は、孫兵衛と山師・甚六との鉱山の砂金をめぐる争いに巻き込まれていきます。

 五社英雄のスピーディで迫力のある演出は健在です。前作からひき続き、主役は夏八木勲。夏八木は以後も「御用金」「鬼龍院花子の生涯」といった五社作品に出演しています。

  • 作品

牙狼之介 地獄斬り

公開年 1967年
製作国 日本
監督  五社英雄
出演  夏八木勲、西村晃、楠侑子、藤留美子、中谷一郎

御用金

 フジテレビが東京映画と共同で初の映画製作に乗り出した時代劇。日本で初めてパナビションカメラで撮影された作品でもあります。藤巻左門役の三船敏郎が途中降板し、代役として中村錦之助が出演したことでも話題になりました。

 鯖井藩(鯖江藩がモチーフの架空の藩)にある漁村で、村人全員が消える事件が発生。世間は「神隠し」だと恐れますが、実は難破した船から御用金を横領しようとした鯖井藩家老の六郷帯刀によって、秘密隠蔽のため村人たちは皆殺しにされたのでした。真相を知った脇坂孫兵衛は藩を離れて姿をくらましていましたが、再び帯刀が横領と虐殺を企んでいると知り、阻止するために立ち上がります。

 2億5000万円の配給収入を記録するヒット作となりました。1975年のアメリカでは、この作品をベースにした西部劇映画「マスター・ガンファイター」が製作されました。

 フジテレビは映画監督としても活躍していた社員の五社英雄を起用。フジテレビ製作映画の第2弾の「人斬り」とともにヒット作となりました。

  • 作品

御用金

公開年 1969年
製作国 日本
監督  五社英雄
出演  仲代達矢、中村錦之助、丹波哲郎、司葉子、浅丘ルリ子

人斬り ★おすすめ!

 幕末に人斬り以蔵と恐れられた剣士、岡田以蔵の半生を描いた作品です。監督は五社英雄で、勝新太郎、仲代達矢、石原裕次郎といった豪華キャストに加え、小説家の三島由紀夫が出演したことでも話題になりました。

 土佐藩の下級武士として生まれた岡田以蔵。ある日、土佐勤王党の首領である武市半平太から執政吉田東洋の暗殺を命じられます。その後、以蔵は武市とともに京へ上り、武市に命ぜられるまま数々の殺戮を繰り返します。

 岡田以蔵を勝新太郎、武市半平太を仲代達矢、坂本竜馬を石原裕次郎が演じました。田中新兵衛役の三島由紀夫は、気迫に満ちた切腹シーンを演じました。

  • 作品

人斬り

公開年 1969年
製作国 日本
監督  五社英雄
出演  勝新太郎、仲代達矢、石原裕次郎、三島由紀夫、倍賞美津子

出所祝い

 当時、東映の仁侠路線の人気を受け、東宝が初めて制作に乗り出した仁侠映画です。下北半島を舞台に繰り広げられる、二つのやくざ組織の抗争を描いています。監督は「御用金」でヒットを飛ばした五社英雄が務めています。

 昭和初期、とある地方都市で木材運搬用の鉄道利権をめぐって勢力を争う榎家と観音組。特赦により刑務所を出所した岩橋清治と小野寺努が榎家へ帰ると、先代から二代目へと代変わりし、かつてライバルだった榎家と観音組は共存共栄の関係を築いていました。

 五社監督はリアリズムを追求し、清治役の仲代達矢ら男性俳優人に角刈りを指示したといわれています。

  • 作品

出所祝い

公開年 1971年
製作国 日本
監督  五社英雄
出演  仲代達矢、安藤昇、栗原小巻、江波杏子、黒沢年雄

暴力街

 関西と関東のやくざ組織の抗争を描いた、五社英雄監督によるハードボイルドなギャング映画です。

 かつて関東東菊会の幹部で江川組の組長だった江川紘一は、やくざの世界から足を洗い、銀座でクラブを経営しています。東京への進出を計画する関西の組織・西日本連合と、それを阻止しようとする東菊会が抗争し、江川が経営するクラブが買収の危機に陥ります。

 「網走番外地」シリーズなどで活躍した安藤昇が江川紘一を演じています。安藤昇、菅原文太、小林旭、丹波哲郎の4大スターの共演が見ものです。

  • 作品

暴力街

公開年 1974年
製作国 日本
監督  五社英雄
出演  安藤昇、小林旭、夏八木勲、丹波哲郎、菅原文太

雲霧仁左衛門

 池波正太郎の同名小説を原作とした時代劇映画です。無実の罪を着せられて盗賊となった男の雲霧仁左衛門と、犯罪取り締まり組織である火付盗賊改めとの戦いを描いています。

 雲霧仁左衛門(辻伊織)はかつて武家組織から公金横領の罪を着せられ、許嫁も奪われた恨みから盗賊になり、雲霧一味を率いています。江戸の町では裕福な商家が次々と襲われ、犯罪を取り締まる火付盗賊改めの長官を務める安部式部は雲霧一味の検挙に全力をあげていました。

 主役の雲霧仁左衛門(辻伊織)を仲代達矢、安部式部を六代目市川染五郎が演じ、男と男の熱い戦いを繰り広げました。また、雲霧一味の七化けのお千代を岩下志麻、木鼠吉五郎を長門裕之が演じるなど豪華キャストが脇を固めています。

  • 作品

雲霧仁左衛門

公開年 1978年
製作国 日本
監督  五社英雄
出演  仲代達矢、岩下志麻、長門裕之、あおい輝彦、倍賞美津子

闇の狩人

 池波正太郎による同名の時代小説を、五社英雄監督で映画化。政治腐敗と金権汚職がはびこる江戸の町で活躍した、闇の狩人と呼ばれる殺し屋たちを描いたアクション時代劇です。五社監督が得意とする、迫力満点の殺陣シーンに注目です。

 田沼意次が首席老中となり権勢を握った江戸中期、五名の清右衛門は殺しを請け負う闇の組織の一派を率いていました。清右衛門はあるとき、剣の腕は優れているが過去の記憶を失っている浪人と出会います。浪人に谷川弥太郎の名を与え、片腕として仲間に引き入れます。

 五名の清右衛門を仲代達矢、谷川弥太郎を原田芳雄が演じています。田沼意次を丹波哲郎が演じているほか、映画デビューして間もない役所広司が桑野の定八役で出演しています。

  • 作品

闇の狩人

公開年 1979年
製作国 日本
監督  五社英雄
出演  仲代達矢、原田芳雄、いしだあゆみ、岸惠子、松尾嘉代

鬼龍院花子の生涯 ★おすすめ!

 高知県出身の作家、宮尾登美子の同名小説を映画化。五社英雄が監督を務めました。土佐の侠客、鬼政と任侠の世界で生きる女たちの姿を鮮烈に描き、夏目雅子の名台詞「なめたらいかんぜよ」は一世を風靡しました。

 鬼政の名で知られた侠客、鬼龍院政五郎は養女として松恵を迎え入れます。松恵は政五郎の身の回りの世話をし、正妻や愛人、実の娘と生活を共にしながら成長します。政五郎は高校教師の田辺の男気に惚れ込み、実の娘花子と結婚させようとしますが、田辺と松恵は心惹かれ合うようになっていました。

 配給収入は約11億円で1982年公開作の6位となりました。

 夏目雅子は鬼龍院家の盛衰の歴史を見届ける養女の松恵役で渾身の演技を見せ、第25回 ブルーリボン賞主演女優賞を受賞しました。

  • 作品

鬼龍院花子の生涯

公開年 1982年
製作国 日本
監督  五社英雄
出演  仲代達矢、岩下志麻、夏目雅子、仙道敦子、佳那晃子

陽暉楼

 「鬼龍院花子の生涯」に続き、宮尾登美子原作、五社英雄監督のコンビで製作された映画の2作目。昭和初期の土佐を舞台に、花柳界で生きる女たちの人間模様を描いた作品です。

 太田勝造はかつて駆け落ちに失敗し、相手の呂鶴は命を落とします。勝造は呂鶴との間にできた娘の房子を土佐の料亭、陽暉楼に預けます。成長した房子は桃若の名で人気芸妓となっていました。女衒として芸妓の斡旋をする勝造は、後添いのお峯の他に珠子という女を囲っていました。珠子はあるとき陽暉楼を訪れ、桃若に出会います。

 日本アカデミー賞の監督賞最優秀賞を五社英雄、主演男優賞最優秀賞を緒形拳、助演女優賞最優秀賞を浅野温子が受賞したほか、助演男優賞、脚本賞などでも最優秀賞を獲得し、高い評価を得ました。

 仁侠の世界で生きる男、太田勝造を緒形拳が好演。勝造の娘桃若を池上季実子、桃若のライバル珠子を浅野温子が演じ、女同士の激しいぶつかり合いを繰り広げました。

  • 作品

陽暉楼

公開年 1983年
製作国 日本
監督  五社英雄
出演  緒形拳、池上季実子、浅野温子、二宮さよ子、市毛良枝

北の螢

 明治時代の北海道を舞台に、開拓のために強制労働を強いられた囚人たちと看守との対立や、彼らを取り巻く女たちを描いた作品です。五社英雄が監督を務め、映画主題歌の作詞を担当した阿久悠がスーパーバイザーとして参加しています。

 石狩平野にあった樺戸集治監(刑務所)では、典獄(刑務所長)の月潟剛史が囚人から恐れられていました。ある日、月潟の前にゆうという女が現れます。元津軽藩士で危険人物として投獄されている男、鹿孝之進を助けるため、ゆうは月潟とある取引をします。

 鬼の典獄の異名を持ち、囚人たちに君臨する月潟剛史を仲代達矢、男鹿を助けようとするゆうを岩下志麻が演じています。ナレーションを夏目雅子が担当しています。

  • 作品

北の螢

公開年 1984年
製作国 日本
監督  五社英雄
出演  仲代達矢、岩下志麻、夏木マリ、中村れい子、高沢順子

櫂 ★おすすめ!

 女性を遊郭に斡旋する女衒の一家を描いた作品。「鬼龍院花子の生涯」、「陽暉楼」に続き、宮尾登美子原作、五社英雄監督のコンビで製作された3作目です。3作品とも高知県が舞台になっているため、高知三部作と呼ばれています。

 大正から昭和にかけて、高知で女衒を生業としていた富田岩伍とその妻の喜和。岩伍は商用で旅をする途中、菊という名の少女を拾って帰り、育てることにします。岩伍の金遣いの荒さに悩まされながらもなんとか所帯を切り盛りしていた妻の喜和ですが、そんな彼女にとって、菊の養育はさらなる重荷となり……。

 女衒から高知の有力者として大成する富田岩伍を緒形拳、岩伍の横暴さに振り回されながら耐えて生きる妻の喜和を十朱幸代が演じています。

  • 作品

公開年 1985年
製作国 日本
監督  五社英雄
出演  緒形拳、十朱幸代、名取裕子、石原真理子、井上純一

薄化粧 ★おすすめ!

 実際に起こった事件を基にした、西村望の同名小説が原作。妻と息子を殺害し逮捕された後、刑務所を脱獄した男の逃亡劇を描いています。監督は五社英雄で、緒形拳が主演を務めています。

 山奥の鉱山で落盤事故が発生。そこで働いていた坂根は鉱夫の代表として会社側と補償問題について交渉しますが、会社側から裏金を掴まされます。裏金で金貸しを始めた坂根は、未亡人のテル子と浮気をし、妻と息子を殺害するなど、次第に人生を狂わせていきます。

 眉墨を引き、薄化粧をしながら逃亡を続けた主人公の坂根を緒形拳が演じています。

  • 作品

薄化粧

公開年 1985年
製作国 日本
監督  五社英雄
出演  緒形拳、藤真利子、浅利香津代、川谷拓三、浅野温子

十手舞

 江戸時代を舞台に、悪を懲らしめる影十手として生きた女性を描いたアクション時代劇。原作・監督を五社英雄が務めています。

 斬罪(斬首の刑)を申し渡された弥助は、江戸町奉行の影の存在である影十手として生きる道を選びます。二十数年後、密貿易を行う松平周防守の悪事を暴こうとしていた弥助は、敵である牙の伝蔵の一味、お蝶に出会います。弥助は、お蝶がかつて自分の妻だったお咲にそっくりなことに驚きます。

 五社英雄監督の「櫂」にも出演した石原真理子が、お蝶とお咲の二役を務めています。回船問屋の叶屋源四郎を世良公則、薊のおれんを夏木マリが演じています。

  • 作品

十手舞

公開年 1986年
製作国 日本
監督  五社英雄
出演  石原真理子、世良公則、夏木マリ、川谷拓三、渡瀬恒彦

極道の妻たち

 それまで男たちが主役を演じていた極道の世界を、女性たちの視点から描いた仁侠映画です。タイトルは「妻」と書いて「おんな」と読みます。週刊誌に連載された家田荘子のルポタージュが原作で、監督は五社英雄、岩下志麻が主演を務めています。映画はヒットし、「極妻(ごくつま)」の愛称で以降シリーズ化されました。

 関西を拠点とする堂本組は約2万人の組員を抱える大組織で、粟津組もその傘下にありました。粟津組組長の妻、粟津環は服役中の夫に代わり組を守っていました。そんなある日、堂本組総長が急死したことにより跡目争いが生じ、環は堂本の妻の絹江から抗争終結の仲介を頼まれます。

 環の妹、真琴役を演じたかたせ梨乃が、第11回日本アカデミー賞助演女優賞の最優秀賞を受賞しました。

  • 作品

極道の妻たち

公開年 1986年
製作国 日本
監督  五社英雄
出演  岩下志麻、佐藤慶、世良公則、かたせ梨乃、佳那晃子

吉原炎上 ★おすすめ!

 かつて東京浅草にあった吉原遊廓を舞台に、花魁として生きる女たちの悲哀を艶やかに描いた作品。春、夏、秋、冬の四章仕立てで物語が展開し、主人公久乃の視点から花魁たちの生き様が描かれます。監督は五社英雄が務めています。

 吉原の中梅楼に身売りされた久乃は、若汐の源氏名で花魁として生きることになります。中梅楼の一番花魁である九重の下について見習いを始めた久乃は、初めて客を取りますが、怖気付いて客の前から逃げてしまいます。

 様々な花魁たちの生き様に触れ、次第に花魁としての覚悟を芽生えさせていく、主人公久乃を名取裕子が演じています。

  • 作品

吉原炎上

公開年 1987年
製作国 日本
監督  五社英雄
出演  名取裕子、二宮さよ子、藤真利子、西川峰子、かたせ梨乃

肉体の門

 かたせ梨乃を主演に、戦後の東京で娼婦として生きる女たちをエネルギッシュに描いた作品です。監督は「極道の妻たち」の五社英雄。原作は田村泰次郎の同名小説で、5度目の映画化となります。

 終戦から2年後。新橋周辺で関東一家というグループを作り、娼婦としてたくましく生きる女たちがいました。リーダーの浅田せんを中心に、ダンスホール開業の夢を持ちながら、女たちは不発弾の残る廃墟のビルで暮らしていました。そんなある日、新入りの町子が一家の金を持ち逃げしてしまいます。

 太腿にバラの刺青を入れた関東一家のリーダー、浅田せんをかたせ梨乃が熱演。ライバルグループのリーダー澄子を名取裕子が演じています。

  • 作品

肉体の門

公開年 1988年
製作国 日本
監督  五社英雄
出演  かたせ梨乃、名取裕子、芦田伸介、渡瀬恒彦、山咲千里

226

 1936年に起こった陸軍青年将校によるクーデター未遂事件。決起から鎮圧されるまでの4日間を描いた歴史映画です。総製作費20億円ともいわれ、萩原健一、三浦友和をはじめとしたオールスターキャストで撮影が行われました。

 経済不況から貧富の差が拡大し、国民の不満が募っていた昭和初期。陸軍青年将校たちの一部は、天皇を中心とした新たな政権を作ろうと計画します。1936年2月26日の未明、雪の降りしきるなか、22名の将校たちたちは1,500名にも及ぶ下士官を率いて行動を起こします。

 配給収入は11億円を超え、1989年公開作の6位となりました。青年将校のひとりである河野大尉を演じた本木雅弘が、第13回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞しました。

 クーデターの中心人物である野中大尉を萩原健一、安藤大尉を三浦友和が演じています。

  • 作品

226

公開年 1989年
製作国 日本
監督  五社英雄
出演  萩原健一、三浦友和、本木雅弘、勝野洋、佐野史郎

陽炎

 昭和初期の花街を舞台に、女胴師(賭博の親)の活躍を描いた仁侠映画。「極道の女たち」と同じく五社英雄が監督を、高田宏治が脚本を手掛けています。

 女胴師として不知火おりんの名で知られる城島りん。ある日、故郷である熊本の料亭が岩船一家に乗っ取られていることを知ります。熊本へ戻ったおりんは父の仇でもある岩船一家の胴師常次郎との博打に勝ちますが、そのことで岩船一家を率いる岩蔵の恨みを買います。

 主演の樋口可南子が背中に菩薩の刺青を入れた女胴師おりんを演じています。おりんの弟市太郎を本木雅弘が演じました。

  • 作品

陽炎

公開年 1991年
製作国 日本
監督  五社英雄
出演  樋口可南子、仲代達矢、本木雅弘、荻野目慶子、かたせ梨乃

女殺油地獄

 1721年に上演された近松門左衛門の人形浄瑠璃が原作。江戸時代を舞台にした殺人事件を軸に、オリジナルの設定を加え、男と女の情念が絡み合う愛憎劇を静かなタッチで描いています。当時癌を患っていた五社英雄監督は、病室から撮影現場に通い映画を完成させました。この作品が、五社英雄監督の遺作となりました。

 油屋を営む豊島屋の女房お吉はかつて、河内屋の次男であるを与兵衛を乳母がわりに世話していました。河内屋の先代が亡くなり、番頭の徳兵衛が義父になると、与兵衛は次第に金遣いが荒くなり、油屋の元締めである小倉屋の娘小菊と密会するようになります。お吉は与兵衛をいさめて小菊と別れさせようとしますが……。

 あどけなさのなかに魔性を秘めた若い娘小菊を藤谷美和子が演じ、第16回日本アカデミー賞助演女優賞最優秀賞、第35回ブルーリボン賞助演女優賞を受賞しました。

  • 作品

女殺油地獄

公開年 1992年
製作国 日本
監督  五社英雄
出演  樋口可南子、堤真一、藤谷美和子、井川比佐志、岸部一徳
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