あの世とこの世の境界をさまよう人気ホラーシリーズ最新作 『インシディアス 赤い扉』

映画スクエア

著者名:飯塚 克味

あの世とこの世の境界をさまよう人気ホラーシリーズ最新作 『インシディアス 赤い扉』

飯塚克味のホラー道 第63回『インシディアス 赤い扉』

 『死霊館』シリーズ(2013~)と並ぶ、人気ホラーシリーズの『インシディアス』最終章が、ついに日本にも上陸した。2010年に第1作が生まれ、日本でも公開されてきた冥界ホラーだ。第1作の主演はパトリック・ウィルソンとローズ・バーン。‟彼方“と呼ばれるあの世とこの世の境界に連れ去られてしまった息子を救うため、ジョシュとルネの夫婦が、怪現象に立ち向かうという話だ。続編の『インシディアス 第2章』(2013)では、その後、再び何者かに脅かされる一家の話だったが、3作目の『インシディアス 序章』(2015)と『インシディアス 最後の鍵』(2018)では前2作に登場した霊能者エリーズのドラマとなり、ちょっと趣を変えたものになっていた。今回の『~赤い扉』では、再びジョシュとルネたち家族の話に戻り、最終章に相応しいドラマ性の高い一作になっている。

 監督を務めたのは、これが初監督となる主演のパトリック・ウィルソン。『死霊館』シリーズでも主演を務める彼だが、スタッフ、キャストともにおなじみのメンツが揃い、下支えをしたのだろう。初監督とは思えない安定した作りになっていて、監督としてもいいスタートが切れたと感じた。その製作陣だが、おなじみジェイソン・ブラム、『パラノーマル・アクティビティ』(2007)のオーレン・ペリ、シリーズの生みの親ジェームズ・ワンとリー・ワネルも名を連ねる。まさに現代ホラーの作り手たちが総動員している印象だ。

 話は第2作の10年後、ジョシュの母ロレインの葬儀から始まる。ジョシュとルネは離婚していて、子どもたちは妻のルネが育てていた。幼かったダルトンは家から離れた美術大学に入学することになる。一方ジョシュは偏頭痛に悩まされ、恐怖現象にも直面していた。ダルトンは授業で自身の内面を見つめるよう指導され、そのことがきっかけで再び、“彼方”に足を踏み入れることになってしまう。

 遠く離れた父と息子のぎくしゃくした関係を描きつつ、過去にまつわる恐怖体験と新たな障害を混ぜていく展開。前半こそ設定的な部分の描写に追われるものの、中盤からの流れは「これぞインシディアス!」と思わせてくれ、ラストのサプライズまで存分に楽しませてくれる。

 筆者が観たのはスクリーナーと呼ばれる事前の視聴用映像で、画質も音質も複製対策のため敢えてツーランクほど落としたものだったが、それでも十分に感じたので、きちんとした状態での鑑賞なら、印象もかなり良くなるかと思われる。サウンドバーなどで少しでもボリュームを上げて楽しんで欲しい。

 ちなみに全米での興行収入は、『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』(2023)を抜き1位で初登場。製作費1600万ドルに対し、オープニングだけで3300万ドル。累計で8210万ドルの大成功を収めている。これとは別に海外では1億ドルもの成績を収めているので、更なる続編の話が出てきてもおかしくはないはずだ。

 ジョシュとダルトンがどのようなエンディングを迎えるか、これまで『インシディアス』シリーズを観てきた熱心なファンなら、無視することは不可能なはず。日本の映画館で観られなかったことはつくづく残念だが、是非とも配信で世界観に浸ってほしい。

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あの世とこの世の境界をさまよう人気ホラーシリーズ最新作 『インシディアス 赤い扉』

飯塚克味(いいづかかつみ)
番組ディレクター・映画&DVDライター
1985年、大学1年生の時に出会った東京国際ファンタスティック映画祭に感化され、2回目からは記録ビデオスタッフとして映画祭に参加。その後、ドキュメンタリー制作会社勤務などを経て、現在はWOWOWの『最新映画情報 週刊Hollywood Express』(毎週土曜日放送)の演出を担当する。またホームシアター愛好家でもあり、映画ソフトの紹介記事も多数執筆。『週刊SPA!』ではDVDの特典紹介を担当していた。現在は『DVD&動画配信でーた』に毎月執筆中。TBSラジオの『アフター6ジャンクション』にも不定期で出演し、お勧めの映像ソフトの紹介をしている。


【作品情報】
インシディアス 赤い扉
デジタル配信中
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