2024年8月30日より劇場公開される、「悪人」「さよなら渓谷」「怒り」などの吉田修一の同名小説を原作とした映画「愛に乱暴」から、良き妻、良き嫁を演じていた主人公の桃子(江口のりこ)が暴走を開始する場面写真が公開された。
場面写真では、赤いチェーンソーを大事そうに抱きかかえて泥だらけの姿で床下に横たわる姿、真っ赤なリップを無表情で塗る姿、丸ごとのスイカを抱えて愛人宅に突撃する姿、チェーンソーをかたわらに畳をはがし床下に潜りこむ姿、床下を徘徊(はいかい)する姿、そして夜の町を駆け抜ける姿と、規律を守って生きてきた桃子が、危うさ全開で暴走する様子が収められている。
「愛に乱暴」は、愛のエゴと献身、孤独と欲望の果ての暴走を描くヒューマンサスペンス。夫の真守とともに、真守の実家の敷地内に建つ離れで暮らす桃子は、義母から受ける微量のストレスや、夫の無関心を振り払うように、石鹸教室の講師やセンスのある装い、手の込んだ献立など、いわゆる「丁寧な暮らし」にいそしみ、毎日を充実させていた。そんな桃子の周囲で不穏な出来事が起こり始める。近隣のゴミ捨て場での相次ぐ不審火、失踪した愛猫、匿名の人物による不気味な不倫アカウント、そして夫からの突然の申し出など、桃子の平穏な日常は少しずつ乱れ始める。
主人公の初瀬桃子を演じるのは、「あまろっく」など主演作が続く江口のりこ。手に入れたはずだった平穏な日常が少しずつ不穏な空気を帯び乱れていく桃子を、振り切った怪演で見せる。桃子を空気のように扱う夫・真守役に小泉孝太郎、夫に先立たれ息子への関心が高まる真守の母・照子役に風吹ジュン、真守の不倫相手・奈央役に馬場ふみかが顔をそろえる。監督・共同脚本を務めるのは、「さんかく窓の外側は夜」などの森ガキ侑大。
■伊藤さとり(映画パーソナリティ・映画評論家)
どこまでが偽装?
何が真実?
愛についてのあれこれが 江口のりこによって掻き乱される。
このトリックを一度で見破れるか。
それは言葉から服からほつれ出す。
■岩松了(劇作家・演出家・俳優)
これこそ義理の嫁の話。
観始めたときは「江口のりこ、頑張ってるな」だったのが 観終わる頃には「桃子さん、頑張って!」になってた。
『セーラー服と機関銃』ならぬ『桃子とチェーンソー』 割烹着?いやいや、桃子には着るべき服がない!
■岡山天音(俳優)
「映画」すぎました。
格好良い映画でした。表現が格好良すぎます。
人物に語らせていないのに人物が語りまくっています。
これを書きながら、なんだか文章が上手くまとまりません。
それは僕の語彙力の問題なのか、まっさらでこの映画と出会ってほしいからなのか、わからない。
人生って怖い!悲しい!最悪!
でもこの映画は最高。
■SYO(物書き)
不条理を丁寧にかき混ぜて、型に流し込んで出来上がった 見た目はすべすべ、中身は醜く凝り固まった男性優位社会。
主婦を《おかしく》したのは本当に周囲の《個人》なのか?
日本映画の文法で、埋められた澱を掘り起こす反語の一作。
■児玉美月(映画文筆家)
必死にしがみついていたものを手放してみても、人生は案外しぶとく続くかもしれない。
映画が幕を閉じるとき、始まりを告げる狼煙が上がる。
『愛に乱暴』の放った炎が飛び火して、あなたの燻る心を焦げつかせてゆく。
■早川千絵(映画監督)
暴走する女のヒリヒリした孤独。
痛い。でも愛おしい。
■ひらりさ(文筆家)
夫は無関心。姑も冷たい。 しんどい。ひりひりする。息が詰まる。限界を迎えて暴走する桃子には、一種の魅力がある。「もっとやれ」と思ったし、こちらもつられそうになった。
それでも。孤独に駆け抜けた桃子が到達するラストには、とてつもない人間愛が込められていた。愛に愛を返してもらえない辛さを抱えつつも、自暴自棄になりきれずに必死に生きている人たちへの、心からのエール。
桃子、あなたも私も幸せになれるよ。絶対に。
■光石研(俳優)
森ガキ組が江口のりこに挑む。脅し、突き放し、追い詰め、泥まみれ。しかし、彼女は全く動じない。しっかり森ガキ映画を牛耳ってる。ラストの江口のりこの顔は必見!
僕はこれからも、変わらず江口さんのファンを続ける。
【作品情報】
愛に乱暴
2024年8月30日(金)より、全国ロードショー
配給:東京テアトル
©2013 吉田修一/新潮社 ©2024『愛に乱暴』製作委員会