重い障害の22歳と母 ケアスタッフの12年の記録 ドキュメンタリー「江里はみんなと生きていく」公開決定

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重い障害の22歳と母 ケアスタッフの12年の記録 ドキュメンタリー「江里はみんなと生きていく」公開決定

 「妻はフィリピーナ」「もっこす元気な愛」の寺田靖範監督の、19年ぶりとなる新作ドキュメンタリー映画「江里はみんなと生きていく」が、2024年10月下旬より劇場公開されることが決まった。重い障害のある西田江里さんと母の良枝さん、そしてケアスタッフの12年を記録した作品となっている。

 西田江里さんは、生まれも育ちも千葉県の浦安で、オシャレと絵を描くのが大好きな22歳。重い障害を持つ江里さんは、母・良枝さんと自宅で暮らしている。24時間365日の介助が必要で、家族だけで命を守ることができない。日常を支えているのはケアスタッフで、車いすを押してもらって買い物に行ったり、リサイクルショップで一緒に働いたり、外食したりと、楽しくも忙しい毎日を送っていた。

 「江里はみんなと生きていく」では、そんな江里さんにカメラが密着した作品。12年という撮影期間のなかで、気管切開をして人工呼吸器を装着するか否かの選択を迫られたり、母から自立してひとり暮らしを始めたりと、さまざまな出来事が起こる。楽しい暮らしぶりだけではなく、医療的ケアが必要になっていく不安や葛藤も映し出していく。さらに、新米だったケアスタッフが成長し、彼女たちの結婚・出産という人生の転機にも江理さんは立ち会っていく。

 長い時間を共有するなかで、単にケアをする・されるといった立場をこえて、ともに生きる関係性を育んでいく江里さんと仲間たちの様子を、あたたかいまなざしで映像に収めている。

 寺田靖範監督、西田江里さんのコメントも公開された。コメントは以下の通り。

■寺田靖範(監督)、
浦安の街で生きる西田江里さんと良枝さん。そしてその命を支えるヘルパーや医師や看護師たち。この暮らしぶりを映像にとどめたいと思った。江里さんの障害は重い。食事や排せつをはじめ、呼吸するのも他者の助けが必要だ。ひとりでは何もできないが、実に幸せそうに生きている。それを可能にしているのは、母親の良枝さんが筆舌に尽くしがたい苦労を重ねて、この地に様々な福祉サービスを根付かせてきたからだと言っても過言ではないだろう。
これについては、一般的な図式だと、母親が娘のために様々な福祉サービスをこの街に作ってきたということになるのだが、わたしは、江里さんが母親をしてこの街に福祉サービスを作らしめたのだと考えている。社会福祉法人<パーソナル・アシスタンスとも>は、江里さんが江里さんのために作ったのだが、それは決して自身のためだけでなく、支援を必要とする市民すべてに役立つように作られたものだ。
ここ数年、福祉の人材不足は深刻で、利用者は充分な支援サービスを受けることが難しくなっているが、〈とも〉は100人をこえるスタッフが、地域に暮らす1000人ほどの市民の生活を支えている。
わたしは、無批判に良枝さんや〈とも〉を称賛する者ではない。この取り組みを一般化するのも簡単ではないだろう。しかし、浦安の街で展開されているこの実践は夢物語ではなく、現実だ。この試みが今後、発展していくのか、もしくは衰退していくのか。その将来は楽観できないが、本作が江里さんを中心とした営みが浦安に確かに存在したという証になり、悩み苦しみながら生きている人たちのひとつの道標になれば幸いである。

■西田江里さん
この映画を見て、色々な人が元気になってくれたらいいなと思います。この映画を見て、私みたいに重い障害があっても地域で暮らせるんだなって思ってほしいです。
障害があってもやりたいことや夢を諦めないでほしいです。
私の周りには、たくさんの人が居てくれています。その人たちがいなかったら私の生活はありません。私はその人たちの力や知識を使っています。私だけだったら何もできません。色々な人がいるので、嬉しいことや楽しいこともあるけど、悲しくなったりすることもあります。私はそれも含めて、1人暮らしを続けていきたいです。私のそんな生活の様子を知ってほしいです。

【作品情報】
江里はみんなと生きていく
2024年10月下旬よりポレポレ東中野ほか全国順次公開
配給:おもしろ制作

重い障害の22歳と母 ケアスタッフの12年の記録 ドキュメンタリー「江里はみんなと生きていく」公開決定

【作品情報】江里はみんなと生きていく
2024年10月下旬よりポレポレ東中野ほか全国順次公開
配給:おもしろ制作

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