製作から50年 色褪せることのないオカルトホラー映画の金字塔 『エクソシスト』

映画スクエア

著者名:飯塚 克味

製作から50年 色褪せることのないオカルトホラー映画の金字塔 『エクソシスト』
【初回限定生産】エクソシスト ディレクターズカット版 & オリジナル劇場版 <4K ULTRA HD&ブルーレイセット>(4枚組/ペーパープレミアム付) © 2013 1973 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.

飯塚克味のホラー道 第69回『エクソシスト』

 オカルト映画の最高峰としてあまりに有名な『エクソシスト』(1973)。あどけない少女リーガンに悪魔が憑依して次々と奇怪な行為を連発。手の打ちようがない母親は教会に相談。悪魔祓いのプロフェッショナル、エクソシストが対決にやって来るというものだ。本作の監督ウィリアム・フリードキンは、2年前の1971年に『フレンチ・コネクション』でアカデミー賞5部門を受賞。怖いものなしの彼は、本作でやりたい放題。寒い部屋を表現するために、セットを覆う巨大な冷蔵庫を作ったり、ジェイソン・ミラー演じるカラス神父が電話でドキッとする場面を撮るために、間近でショットガンをぶっ放す等、今なら絶対許されない演出を次々と行い、映画以上に恐ろしい人物とされていた。

 完成した作品は、世界中で大ヒット。1100万ドルの予算に対し、当時だけで1億9300万ドルのメガヒットとなった。その後もデジタル・リミックス版やディレクターズカット版が生み出され、製作・配給したワーナー・ブラザースを代表する一本と言える。またクライマックスでカラス神父が落下する階段は観光名所となり、続編も製作される度に論争を巻き起こし、その度にオリジナル版の偉大さが世に確認されるという流れになっている。

 そんな『エクソシスト』は、日本では1974年の夏に公開。日本中を恐怖のどん底に落としいれた。1966年生まれ(当時8歳)の筆者はまだ映画館に連れて行ってもらうことは叶わず、初見はテレビ放送となった。記録では1980年の月曜ロードショー(TBS)が最初らしいので、恐らくその時のはずだ。すでに『オーメン』(1976)など、『エクソシスト』の影響を受けた数多のオカルト映画が世に出て、一部は先に観ていたせいもあって、自分の記憶の中では映画館で衝撃を受けた世代の方々ほど、強烈なインパクトを受けてはいなかった。

 だが、その後、ビデオ時代が到来し、LDで再見することになり、大きく考えを改める機会があった。国内版のビデオやLDではずっとモノラルだった本作。だが、輸入盤LDの後期、ついにステレオ化されたものが海を渡ってやってきた。その頃、自分は自宅にYAMAHAのAVアンプを使ったサラウンドシステムを導入し、映画音響の楽しさを実感し始めていた。まだ5.1chというものは世に出ておらず、2chの音声をアンプで疑似的に広げていたのだが、『エクソシスト』のある場面が、もう卒倒するくらいすごい音響だったのである。それは映画の中盤、悪魔に憑依されたリーガンに、カラス神父が聖水をかけ苦しめる場面だ。苦しさに耐えかねたリーガンは、何か不気味な声を発するのだが、その音が面白いくらいに部屋中をグルグル回り始めたのである。後のシーンで、その声はただの逆回転だったことが明かされるのだが、自分にとっては間違いなく、悪魔の声としてインプットされた。

 不思議なのが、そんなによくできたステレオ音声が、その後、どのソフトでも聞くことができず、実質封印されていることだ。日本で最初にDVDが出た時のこと、当時のワーナーがチラシに書かれていた文章の内容が、とても鮮明に記憶に残っている。それは「DVDに収録されるのは、当初ステレオ音声だったはずなのだが、実際、マスターが届いてみたら5.1chになっていた。本国に問い合わせてみても、ステレオを送ったはずと取り合ってもらえなかった」というものだ。DVD制作時の出来事が怪奇現象っぽく書かれていたのだが、とにもかくにも、あの時のステレオ音声に是非、再会してみたいものだ。

 今回、製作50周年、ワーナー・ブラザース100周年を記念してリリースされた4K UHDは、これまでの過去のソフトとは比べ物にならないほど、色彩が濃厚になっていて、フィルムの情報量に改めて驚かされる、極めてクオリティの高い4K ソフトとなっている。冒頭のイラクでモノクロからカラーに変わる効果や、例の緑の吐しゃ物の色がスゴイことになっている。音声はBDの5.1chからドルビーアトモスになり、先のステレオ音声とはまた別の聴きどころがたくさん追加されているので、サラウンド環境をお持ちの方は試して頂きたい。筆者としては、突然家具が動き出す音や、どこからともなく聞こえる不気味な吐息、階段落ちの暴力的な打撃音が印象に残っている。

 製作から50年経っても、全く色褪せないオカルト映画の金字塔『エクソシスト』。究極とも言うべき本ソフトで、その神髄を味わってもらいたい。

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製作から50年 色褪せることのないオカルトホラー映画の金字塔 『エクソシスト』

飯塚克味(いいづかかつみ)
番組ディレクター・映画&DVDライター
1985年、大学1年生の時に出会った東京国際ファンタスティック映画祭に感化され、2回目からは記録ビデオスタッフとして映画祭に参加。その後、ドキュメンタリー制作会社勤務などを経て、現在はWOWOWの『最新映画情報 週刊Hollywood Express』(毎週土曜日放送)の演出を担当する。またホームシアター愛好家でもあり、映画ソフトの紹介記事も多数執筆。『週刊SPA!』ではDVDの特典紹介を担当していた。現在は『DVD&動画配信でーた』に毎月執筆中。TBSラジオの『アフター6ジャンクション』にも不定期で出演し、お勧めの映像ソフトの紹介をしている。


【商品情報】
【初回限定生産】エクソシスト ディレクターズカット版 & オリジナル劇場版 <4K ULTRA HD&ブルーレイセット>(4枚組/ペーパープレミアム付)
10,780 円(税込)
発売元:ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント
販売元:NBC ユニバーサル・エンターテイメント
© 2013 1973 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.

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