『ミイラ再生』『オペラの怪人』『大アマゾンの半魚人』・・・4K UHDでクラシックホラーを楽しむ至福

映画スクエア

著者名:飯塚 克味

『ミイラ再生』『オペラの怪人』『大アマゾンの半魚人』・・・4K UHDでクラシックホラーを楽しむ至福
『フランケンシュタインの花嫁』 © 1935 Universal Studios. All Rights Reserved.

飯塚克味のホラー道 第34回 4K UHD『ミイラ再生』『フランケンシュタインの花嫁』『オペラの怪人』『大アマゾンの半魚人』

 今でもCMなどに登場するドラキュラや、フランケンシュタインの怪物、狼男などのモンスターたち。その人気を決定づけたのはハリウッドのユニバーサル・ピクチャーズであることは、ホラーファンなら周知の事実だろう。その後、幾度となくリメイクされ、その人気は子供まで知っているほどの知名度を誇る。そんなモンスター映画の原点とも言うべき、クラシック作品が次々と4K UHD化されている。

 第1弾の『魔人ドラキュラ』(1931)、『フランケンシュタイン』(1931)、『透明人間』(1933)、『狼男』(1941)に続き、昨年11月には第2弾となる『ミイラ再生』(1932)、『フランケンシュタインの花嫁』(1935)、『オペラの怪人』(1943)、『大アマゾンの半魚人』(1954)が発売された。

 『魔人ドラキュラ』と『フランケンシュタイン』は、サイレント時代にも映画化されているが、前の時代と決定的に異なるのは特殊メイクやセット、照明などを駆使したいかにも映画的と呼べる大掛かりなビジュアルだろう。観客の想像を超えるものを提供したいという作り手の思いが、至る所に散りばめられる一方、それまでの表現で生かせるものは上手く使い、娯楽としての恐怖体験を実現してくれている。

 もちろん現在の視点で観れば、映画のリズム自体がゆるく感じるだろうし、キャラクターの造詣も浅いと言われてしまえばそれまでではある。だが、少しでも当時の感覚に近づけるよう、完璧ともいえる修復を施し、現在の最新技術を投入することで、最高の状態でクラシックを楽しむことができることは映画ファンにとって至福の時代と言えなくはないだろうか。

 因みに自分が最初にこれらの作品を観たのは80年代半ばに起きたクラシック映画ブームの時代だった。ただその頃は一部の作品がニュープリントだったものの、粗悪な状態の素材が多く、映画館もまた再生環境が良くなかったため、ぼんやりした映像に聴き取りづらい音響という最悪な鑑賞だったと記憶している。今、これらの作品を高品質で見直す度に、作り手の本当の狙いが見えてきて、印象が激変しているのを実感している。

『ミイラ再生』『オペラの怪人』『大アマゾンの半魚人』・・・4K UHDでクラシックホラーを楽しむ至福
『ミイラ再生 4K Ultra HD + ブルーレイ』 価格:6,589円(税込) 発売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント

 個々の作品について触れていこう。『ミイラ再生』は、1999年に大ヒットした『ハムナプトラ/失われた砂漠の都』のオリジナル作品。冒頭のミイラが復活する場面ではミイラの眼が開く瞬間や、後になって重要アイテムだと分かる指輪のアップが、HDR(ハイダイナミックレンジ)※によって、より強調されているのが一目瞭然。フランケンシュタインのモンスター役として有名なボリス・カーロフのクローズアップのインパクトは、現代の作品とは質の異なる怖さを与えてくれるはず。

『ミイラ再生』『オペラの怪人』『大アマゾンの半魚人』・・・4K UHDでクラシックホラーを楽しむ至福
『フランケンシュタインの花嫁 4K Ultra HD + ブルーレイ』 価格:6,589円(税込) 発売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント

 『フランケンシュタインの花嫁』は前作以上にカルト的な人気を持つ一作。エルザ・ランチェスター演じる花嫁の出番は、最後の方だが、冒頭にプロローグ的なシーンでエルザの素顔を拝むこともできる。4Kならではの見せ場は瓶詰めの小人が出てくるシーンや、ボリス・カーロフ演じるモンスターの各シーン、クライマックスの実験から続く花嫁の登場シーンだ。

『ミイラ再生』『オペラの怪人』『大アマゾンの半魚人』・・・4K UHDでクラシックホラーを楽しむ至福
『オペラの怪人 4K Ultra HD + ブルーレイ』 価格:6,589円(税込) 発売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント

 『オペラの怪人』はカラー作品ということもあり、4K化の恩恵が一番わかりやすい一本となっている。クライマックスのシャンデリア落下シーンでは、眩い灯りを放つシャンデリアの見え方が通常のブルーレイとは全くの別物。音声も4K UHDには5.1ch音声が追加され、オペラのシーンの迫力が大幅にアップしている。2004年の『オペラ座の怪人』のファンにも是非ともチェックしてほしい一作だ。

『ミイラ再生』『オペラの怪人』『大アマゾンの半魚人』・・・4K UHDでクラシックホラーを楽しむ至福
『大アマゾンの半魚人 4K Ultra HD + ブルーレイ』 価格:6,589円(税込) 発売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント

 『大アマゾンの半魚人』は元々3D映画として製作され、ブルーレイも3D対応になっている。4Kの効果は何と言っても半魚人スーツのディテール。細部まで作り込まれ、これを着たまま、水中を泳ぐなんて、それだけでも驚かされる。またこの水中撮影も実に見事で、撮影機材も今ほど軽量ではないはずなのに、どうやって撮ったのかと思わずにいられない。画面サイズも本作だけは横に広いビスタサイズなので、映画的な迫力も存分に味わってもらえるだろう。

 ブルーレイに比べると、どうしても高額になってしまう4K UHDだが、もしあなたのテレビやプロジェクターが4Kに対応しているなら、これらのソフトを観ないでおくのは、本当にもったいないというもの。幸いにもタイミングさえよければ、かなりの割引価格になっていることもあるので、是非、前向きにご検討いただきたい。

※HDR…明るい部分はより明るく、本物らしく、暗い部分はその暗い諧調までも精密に描くことができる4K UHDならではの技術。これによって、映像の持つリアリティが大幅に向上した。

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『ミイラ再生』『オペラの怪人』『大アマゾンの半魚人』・・・4K UHDでクラシックホラーを楽しむ至福

飯塚克味(いいづかかつみ)
番組ディレクター・映画&DVDライター
1985年、大学1年生の時に出会った東京国際ファンタスティック映画祭に感化され、2回目からは記録ビデオスタッフとして映画祭に参加。その後、ドキュメンタリー制作会社勤務などを経て、現在はWOWOWの『最新映画情報 週刊Hollywood Express』(毎週土曜日放送)の演出を担当する。またホームシアター愛好家でもあり、映画ソフトの紹介記事も多数執筆。『週刊SPA!』ではDVDの特典紹介を担当していた。現在は『DVD&動画配信でーた』に毎月執筆中。TBSラジオの『アフター6ジャンクション』にも不定期で出演し、お勧めの映像ソフトの紹介をしている。

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