前作はA面で今作はB面 定番を覆す、油断できないスラッシャーホラー 『スクリーム6』

映画スクエア

著者名:飯塚 克味

前作はA面で今作はB面 定番を覆す、油断できないスラッシャーホラー 『スクリーム6』

飯塚克味のホラー道 第51回 『スクリーム6』

 昨年、大ヒットしたシリーズ第5作『スクリーム』(2022)の続編『スクリーム6』が早くも登場。日本では劇場未公開のまま、配信とソフト化になったが、全米ではこの最新作も1億810万ドルの興収を上げ、海外でも6080万ドルを稼ぎ出した。大ヒットの要因は、世代交代をしつつも、オリジナルをリスペクトし、オリジナルファンも新世代のホラーファンにも素直に楽しめるスラッシャーホラーを追求した一点にあると思う。

 第一作の犯人の娘と言う呪われた血筋にありながら、自分らしく生きようとしているサムとタラのカーペンター姉妹。二人は友人のマーティン兄弟と共に、ウッズボローを飛び出し、ニューヨークで新たな生活を始めていた。だが、ネットでは前作での殺人事件の真犯人がサムではないかとの誹謗中傷を受け、サムはカウンセリングを受ける日々。一方のタラは過去と決別し、大学生活を楽しもうと心を入れ替えていた。だが、何者かがゴーストフェイスのマスクを被り、またもや姉妹とその仲間たちを襲い始める。

 サムを演じるのはもちろん前作に引き続きメリッサ・バレラ。前作では情緒不安定な一面があったが、今回は自己を確立し、堂々としたキャラクターを作り出している。妹のタラも前作と変わらずジェナ・オルテガ。『X エックス』(2022)と『ウェンズデー』(2022)といったヒット作にも出演し、勢いに乗る若手スターに成長した。オリジナルメンバーからはコートニー・コックス。彼女がゲイルとして登場するだけで、画面全体に『スクリーム』感が漂い、シリーズ作としてのまとまりを感じさせてくれる。その他には『ベスト・フレンズ・ウェディング』(1997)などのイケメン俳優ダーモット・マローニーが、刑事役で出演している。

 監督は、前作と同じくマット・ベティネッリ=オルピンとタイラー・ジレットのコンビが続投。リアルにこだわる彼らはデジタル合成を拒否し、アパート4階の部屋から脱出する場面や、地下鉄での襲撃もアナログ的な手法で映像を完成させている。オープニングでは二人が監督した『レディ・オア・ノット』(2019)で主役だったサマラ・ウィーヴィングが登場してくれるのも、嬉しいポイントだ。また脚本は彼らの再登板が決まる前に完成していたそうで、内容にこだわる製作陣の働きぶりも大いに評価したいところ。

 シリーズおなじみの映画のセオリーや知識などについて語る場面は、今回も全編に散りばめられている。最初の方に起こる殺人事件では、被害者がアルジェント映画のマニアだったり、事件が起きたことで今後の展開をあるキャラが語るくだりもオリジナルを思わせる。また登場人物二人が、『エルム街の悪夢』や『13日の金曜日』で何がベストかを語り合う場面もホラーファンなら、つい微笑んでしまうはずだ。

 日本では劇場で観ることができず残念だが、ソフトなら本編の直後に特典映像を楽しむことができる。各5~15分くらいのものだが、7種類ものテーマごとの特典は必見。「前作はA面で、今回はB面。定番を覆すから油断できない」と語るのは脚本と製作を担当したジェームズ・ヴァンダービルト。撮影監督のブレット・ユトキービッチは「アナモフィックレンズから球面レンズに変えてみた。そうしたら我々の求める生々しさ、ダイナミックさが出た」と技術面の話も明かしてくれる。ジェナ・オルテガが、メキシコ系の姉妹が主役なのを喜ぶ素顔もチャーミングだった。

 英語音声がドルビーアトモスで収録されている点も、大きな魅力だ。前半の見せ場のコンビニでの戦いでは、ナイフに加えてショットガンまで登場するが、激しい戦闘と、直後の音を出さないようにしている場面の対比が素晴らしく、サウンドバーなどアトモス対応している設備があれば、臨場感は間違いなく劇場レベルに達するはずだ。

 今回で6作目になるシリーズものなので、全部は見られないよ、という意見もあるとは思うが、できることなら1作目と本作の前章にあたる5作目だけでも十分楽しめるはず。是非チェックしてもらいたい。

 最後まで全く予測のつかない本作。配信でも観ることができるが、できればブルーレイでの鑑賞を薦めたい。ドキドキワクワクしながら、最後まで一気に観てしまうだろう。もしまた続編が作られるなら、次は是非とも映画館での上映を実現してもらいたい。

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前作はA面で今作はB面 定番を覆す、油断できないスラッシャーホラー 『スクリーム6』

飯塚克味(いいづかかつみ)
番組ディレクター・映画&DVDライター
1985年、大学1年生の時に出会った東京国際ファンタスティック映画祭に感化され、2回目からは記録ビデオスタッフとして映画祭に参加。その後、ドキュメンタリー制作会社勤務などを経て、現在はWOWOWの『最新映画情報 週刊Hollywood Express』(毎週土曜日放送)の演出を担当する。またホームシアター愛好家でもあり、映画ソフトの紹介記事も多数執筆。『週刊SPA!』ではDVDの特典紹介を担当していた。現在は『DVD&動画配信でーた』に毎月執筆中。TBSラジオの『アフター6ジャンクション』にも不定期で出演し、お勧めの映像ソフトの紹介をしている。


【商品情報】
スクリーム6 ブルーレイ+DVD
2023年7月12日発売
5,280円(税込)
© 2023 Paramount Pictures.

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