2人の若きシスターが、世界一有名な恐怖のシスターに挑む 『死霊館のシスター 呪いの秘密』

映画スクエア

著者名:飯塚 克味

2人の若きシスターが、世界一有名な恐怖のシスターに挑む 『死霊館のシスター 呪いの秘密』

飯塚克味のホラー道 第62回『死霊館のシスター 呪いの秘密』

 早いもので『死霊館』(2013)が生まれてから早10年。この間、シリーズはホラー作品としては珍しくユニバースと化し、『死霊館』シリーズが3作、『アナベル』シリーズ(2014~)が3作、現時点では完全なスピンオフの『ラ・ヨローナ ~泣く女~』(2019)、そして本作を含む『死霊館のシスター』シリーズ(2018~)が2作と留まるところを知らないように広がり続けている。

 このシリーズがジェームズ・ワンという類まれな才能を世に送り出す一方で、本作のマイケル・チャベス監督のような新たな才能の発見にも努めていることは、ホラーファンにとって、何よりも嬉しいことだ。正確な年齢は不明だが、インタビュー映像を見る限り、まだまだかなり若く見えるチャベス監督は、CMの演出でキャリアを積み、ミュージックビデオや短編を作った後に『ラ・ヨローナ ~泣く女~』で長編デビュー。その後、『死霊館 悪魔のせいなら、無罪。』(2021)を大ヒットさせ、本作に臨んでいる。見れば分かる通り、これまでの長編作が全て『死霊館』ユニバースの作品。まさに『死霊館』育ちの監督なのである。作品を観れば一目瞭然だが、VFXに精通し、サラウンドを使った大げさな音響もどんどん使う。今どきのホラー映画に必要とされるテイストをどんどん盛り込むサービス旺盛な監督と言ってもいいだろう。

 先に公開されたアメリカでは3週連続トップを独走する大ヒットを記録。現時点で8140万ドルを超える大ヒットとなっている。世界興収はこの倍となる1億6770万ドル。合計2億4910万ドルをたたき出しており、間違いなくこの秋のホラーでは最大のヒットとなるはずだ。

 主演は『死霊館のシスター』(2018)に続き、タイッサ・ファーミガ。本シリーズの主演を務めるヴェラ・ファーミガの年の離れた妹である。TVのホラーシリーズ『アメリカン・ホラー・ストーリー』(2011~)でも重要な役をやっていたが、今回は第2作ということで、キャラをより掘り下げ、意気込みが感じられる演技を見せている。タイッサ演じるシスターアイリーンとコンビを組むシスターデブラを演じるのはストーム・リード。ブラムハウスの『ドント・レット・ゴー -過去からの叫び-』(2019)や『透明人間』(2020)に続き、今年は主演作の『search/#サーチ2』(2023)で主演を務めているので、顔を記憶している人もいるはずだ。

 今回、舞台となるのは1956年のフランス。神父が教会で焼死体となって発見される事件が発生。同様の異常な事件が連続したことを懸念した教会本部は、以前の事件を担当したシスターアイリーンに調査を命じ、現地に派遣する。そこでアイリーンは、諸悪の根源であるシスターヴァラクと対峙することになる。

 冒頭の神父が焼き尽くされる場面での、炎の轟音など、これでもかとド派手な演出が目を引く。そして意外にも怖いかと言われると、ビックリ系の演出は多いものの、鳥肌が立つような残酷描写などは控えられ、一般の人でも見やすい演出になっているのが長所と言えるだろう。

 また各地に残る歴史的な教会でロケを行い、美しい映像を狙っているのも見どころとなっている。ダイナミックなショットが多いので、本作がIMAX、ドルビーシネマ、4D、ScreenXといったラージフォーマットで上映されるのも大歓迎。是非、自分にあった形での上映で観てもらいたい。

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2人の若きシスターが、世界一有名な恐怖のシスターに挑む 『死霊館のシスター 呪いの秘密』

飯塚克味(いいづかかつみ)
番組ディレクター・映画&DVDライター
1985年、大学1年生の時に出会った東京国際ファンタスティック映画祭に感化され、2回目からは記録ビデオスタッフとして映画祭に参加。その後、ドキュメンタリー制作会社勤務などを経て、現在はWOWOWの『最新映画情報 週刊Hollywood Express』(毎週土曜日放送)の演出を担当する。またホームシアター愛好家でもあり、映画ソフトの紹介記事も多数執筆。『週刊SPA!』ではDVDの特典紹介を担当していた。現在は『DVD&動画配信でーた』に毎月執筆中。TBSラジオの『アフター6ジャンクション』にも不定期で出演し、お勧めの映像ソフトの紹介をしている。


【作品情報】
死霊館のシスター 呪いの秘密
2023年10月13日(金)より全国公開
配給:ワーナー・ブラザース映画
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