ティム・バートンの出世作となったホラーコメディ続編がソフト化 『ビートルジュース ビートルジュース』

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飯塚克味のホラー道 第109回『ビートルジュース ビートルジュース』

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 昨年、35年ぶりに続編が公開された『ビートルジュース』(1988)。1988年当時はまだティム・バートンの名前も映画ファンには認知されておらず、全米大ヒットの情報だけが流れてきていた。日本での初お目見えは東京国際ファンタスティック映画祭’88のクロージング上映だったのだが、ジャンル系のファンが押し掛けたこともあって、ものすごい盛り上がりだった。この調子なら大ヒット間違いなしと誰もが信じたが、12月に始まった通常興行は期待通りの結果にはならず、海外のホラーコメディが成功する難しさを思い知らされた。

 今回の続編も、全米では約3億ドルを稼ぎ出すメガヒットになり、『ダンボ』(2019)が興行的に失敗したティム・バートン監督の復活を印象づけた。その勢いに乗って、日本でもあらゆる宣伝方法が駆使されたが、残念ながら1作目同様、大ヒットには至らなかった。だが映画自体はティム・バートンのこだわりが随所に詰められ、これまでの総決算的な面白さに満ち満ちている。見逃すにはもったいないゴージャスなエンタメに仕上がっているのだ。

 お話は、前作から30年後、家族の不幸により久々に集まったディーツ家の面々が、再び、ビートルジュースをはじめとする霊界の連中に翻弄されるというもの。ところがそのビートルジュース自体も、バラバラ死体から復活したドロレスに追われ、厄介な方向に展開していく。

 名前を3回呼ぶと出てくるビートルジュースをマイケル・キートン、ディーツ家のリディアをウィノナ・ライダー、その母デリアをキャサリン・オハラが再演。変わらぬ姿を見せてくれる。新たに加わったのはリディアの娘アストリッドに『ウェンズデー』(2022)のジェナ・オルテガ、ドロレスにバートン監督のパートナーでもあるモニカ・ベルッチ、ドロレスを追う捜査官役にウィレム・デフォーと豪華なキャスティングが行われている。

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 映画は冒頭からダニー・エルフマンの楽曲が流れ、最近では珍しいメインタイトルからスタート。舞台となるバーモントを見下ろし、ドラマの世界に入っていく。デリアがアートの世界に暮らし、リディアは霊能者としてテレビに出演するなど、それぞれの人生を送っていたことが分かる。そんな中、一家の長であるチャールズが飛行機事故で亡くなったことが告げられ、葬式のため、家族はバーモントの丘の上にある屋敷に集う。前作でチャールズを演じたジェフリー・ジョーンズが亡くなっていることから、その場面は人形アニメなのだが、ここがまた素晴らしい出来になっていて、嬉しくなってしまった。

 霊界に話が移っていくと、色彩やセットのデザインにティム・バートンのセンスが炸裂し、オリジナルの手作り感が嫌でも映画を盛り立ててくれる。全員が一堂に会するクライマックスまで、あっという間に過ぎる流れは、初期のバートン作品を思わせ、長年のファンはもちろん、そうでなくても満足できるはずだ。

 4K UHDの画質は、森の木々や、道端の枯れ葉の1枚1枚を確認できるほどに鮮明。HDRによって、霊界のカラフルな色彩や、ビートルジュースなど霊界キャラのメイクもクリアに楽しめる。ドルビーアトモス音声は空間の使い方がしっかり感じられ、ミュージカルシーンでも大活躍。ついボリュームを上げたくなってしまう。

 特典は7種のメイキングと音声解説が収録されているが、やはりメインの「メイキング」が一番面白い。製作の理由を語る監督や、各俳優の役への想い、ロケ地の歓迎ぶり、セットの作り方など、細部にわたり追いかけている。ストップモーションのメイキングも、監督のこだわりとそれに応えるスタッフの仕事ぶりに驚かざるを得ないはず。是非、本編鑑賞後にチェックしてほしい。

 そして忘れてはならないのが、豪華声優陣による日本語吹替版の存在だ。山寺宏一、坂本真綾、戸田恵子、森川智之、沢城みゆき、伊瀬茉莉也、山路和弘、小林千晃など、主演レベルの名前がずらり。芸達者な面々による贅沢な吹替版は必聴と言えよう。

 本作をお気に入りの人はもちろん、前作もまだ観ていない人、本作を劇場で見逃した人には、ぜひ、このハイクオリティな仕様のソフトで本作を楽しんでほしい。きっと新しい映画体験ができるはずだ。

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飯塚克味(いいづかかつみ)
番組ディレクター・映画&DVDライター
1985年、大学1年生の時に出会った東京国際ファンタスティック映画祭に感化され、2回目からは記録ビデオスタッフとして映画祭に参加。その後、ドキュメンタリー制作会社勤務などを経て、WOWOWの『最新映画情報 週刊Hollywood Express』の演出を担当した。またホームシアター愛好家でもあり、映画ソフトの紹介記事も多数執筆。『週刊SPA!』ではDVDの特典紹介を担当していた。現在は『DVD&動画配信でーた』に毎月執筆中。TBSラジオの『アフター6ジャンクション』にも不定期で出演し、お勧めの映像ソフトの紹介をしている。


【作品情報】
『ビートルジュース ビートルジュース』デジタル配信中
【初回仕様】 4K ULTRA HD&ブルーレイセット8,580 円(税込)
発売元:ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント
販売元:NBC ユニバーサル・エンターテイメント
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