国連施設に押し寄せる2万人超える避難民 「スレブレニツァの虐殺」描く映画「アイダよ、何処へ?」場面写真

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国連施設に押し寄せる2万人超える避難民 「スレブレニツァの虐殺」描く映画「アイダよ、何処へ?」場面写真

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 9月17日より劇場公開される、第93回アカデミー賞国際長編映画賞にノミネートされたボスニア・ヘルツェゴヴィナ映画「アイダよ、何処へ?」から、新たな場面写真が公開された。

 1995年7月11日にボスニア東部の街スレブレニツァがセルビア人勢力の侵攻によって陥落し、数日間のうちに約8000人ものボシュニャク人が殺害された、戦後ヨーロッパで最悪の集団虐殺事件と言われている「スレブレニツァの虐殺」を描いた本作。映画の最後に示されるボシュニャク人の行方不明者8,372人という数字のうち、いまだに1500人以上が行方不明のままで、犠牲者の慰霊の施設と墓地が設けられているスレブレニツァでは、毎年7月11日に1年間で身元が判明した犠牲者の埋葬と追悼式典を実施している。

 その「スレブレニツァの虐殺」追悼の日である7月11日に公開された場面写真では、国連保護軍と踏み入ろうとするセルビア人勢力との間で主人公のアイダが通訳をするシーン、2万人以上の避難民が保護を求めて国連施設に押し寄せるシーン、セルビア人勢力の元司令官ラトコ・ムラディッチ将軍(のちに終身刑となる)の登場シーンなどが切り取られている。

国連施設に押し寄せる2万人超える避難民 「スレブレニツァの虐殺」描く映画「アイダよ、何処へ?」場面写真

国連施設に押し寄せる2万人超える避難民 「スレブレニツァの虐殺」描く映画「アイダよ、何処へ?」場面写真

 本作を手がけたのは、「サラエボの花」「サラエボ、希望の街角」などをはじめ、故郷ボスニアに残る紛争の傷跡を描き続けている女性監督のヤスミラ・ジュバニッチ。綿密なリサーチに基づいて、事件から25年の節目に本作を発表したジュバニッチ監督は「私たちボスニア人にとって苦痛に満ちたこの出来事を、できるだけ正確に世界に伝えたかったのです」と、本作に込めた思いを語っている。

 「アイダよ、何処へ?」は、一貫して故郷ボスニア・ヘルツェゴヴィナの悲劇であるボスニア紛争の傷跡を描き続けているヤスミラ・ジュバニッチの監督作。1995年7月に起きた戦後ヨーロッパで最悪のジェノサイド(集団虐殺)とされる、約8000人のイスラム教徒が虐殺された「スレブレニツァの虐殺」で起こった出来事を、国連平和維持軍で通訳として働く女性アイダが必死に家族を守ろうとする姿を通して描いている。「ノー・マンズ・ランド」以来19年ぶりに、ボスニア・ヘルツェゴヴィナ映画としてアカデミー賞国際長編映画賞にノミネートされるなどの評価を受けている。

【ヤスミラ・ジュバニッチ監督 コメント全文】

5年の歳月をかけ、多くの障害を乗り越えて、ようやく映画を完成させることができました。スレブレニツァ事件はボスニア人にとってつらい記憶です。25年を経た今でも遺体の捜索は続いているし、虐殺を逃れた人たちの多くはまだ生きている。そして、殺害された遺体が新たに発見されたら誰かが刑に処されることになる。だからセルビアでは事件自体を否定する声もあるし、さまざまな感情が渦巻く政治的にも難しい問題なのです。そこに踏み込むのは私には無理だとずっと思ってきました。ですが 5 作品を手掛け、ようやく私にも撮れると感じたんです。それで調査を始めて大勢に話を聞くところから始めましたが、想像以上の大仕事でした。生き延びた人たち―彼らは今も生きているし、実際に起こったことをその目で見ている―へ の大きな責任もある。だから、私たちボスニア人にとって苦痛に満ちたこの出来事を、できるだけ正確に世界に伝えたかったのです。

【作品情報】
アイダよ、何処へ?
2021年9月17日(金)より Bunkamura ル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館、他 全国順次公開
配給:アルバトロス・フィルム
© 2020 Deblokada / coop99 filmproduktion / Digital Cube / N279 / Razor Film / Extreme Emotions / Indie Prod / Tordenfilm / TRT / ZDF arte

  • 作品

アイダよ、何処へ?

公開年 2020年
製作国 ボスニア・ヘルツェゴヴィナ、オーストリア、ルーマニア、オランダ、ドイツ、ポーランド、フランス、ノルウェー、トルコ
監督  ヤスミラ・ジュバニッチ
出演  ヤスナ・ジュリチッチ、イズディン・バイロヴィッチ
作品一覧