伝統文化を保存することの大切さを語る 「ブータン 山の教室」パオ・チョニン・ドルジ監督ティーチイン

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伝統文化を保存することの大切さを語る 「ブータン 山の教室」パオ・チョニン・ドルジ監督ティーチイン

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 ブータンの秘境ルナナ村に都会から赴任した若き教師と村の人たちや子どもたちの心の交流を描いた映画「ブータン 山の教室」が、4月3日より劇場公開される。公開を前にした3月30日に、パオ・チョニン・ドルジ監督によるティーチインイベントがオンラインで行われた。ティーチインは、ブータン留学生の受け入れなど長年ブータンとの交流を続けている星槎グループの学校で行われた、オンライン教室試写会のあとに実施された。

 ブータンの伝統衣装「ゴ」を着て登場したパオ監督。生徒たちからのさまざまな感想を聞き、「映画は観客から認められることが重要だと思っています。そして観てもらってはじめて完成するものだと。観客の皆さんの言葉がアーティストを鼓舞し、もっと作りたいという気持ちにさせてくれますね!」と、うれしそうな姿を見せた。

 「文化を保存することの大切さ」を語ったパオ監督は、谷崎潤一郎の「陰翳礼讃」が本作のインスピレーション元の1つになっていることを明かし、「『陰翳礼讃』を読んで、東洋の伝統や文化を保存することの大切さを知りました。東洋的な文化には、影の中、あるいは暗闇の中に生き、その中から学ぶものがある、と。一方、西洋的な文化は、常にものを光で照らそうとしている。つまり谷崎潤一郎の考えは、暗闇や影を享受し、そこから学ぶことによって、はじめて明るさ、光と言うものを理解できるのだ、ということだと思うのです」と考えを語った。

 そして、「世界がグローバル化して、この映画の主人公ウゲンのようにブータンの若者は光を求めがちです。本作でいうとオーストラリア・シドニーという現代社会に幸せを求めていますよね。ルナナはブータン語で“暗闇の谷”という意味なのですが、本当に一番遠くの僻地で、グローバリゼーションとは真逆のところです。そこを旅する、つまり暗闇の谷を通ることで自分の文化の大切さを、それを保存することの大切さを初めて知るのです」と、作品に込めた思いを語った。

 さらにパオ監督は、「オンライン上の画面越しにたくさんの生徒の顔がみえます。今回、ぜひアドバイスを申し上げるとしたら、みなさん、日本あるいはブータンそれぞれの伝統文化というものを大切にしてください。そしてそれを大切にすることが、教育、学校の定義になってくると思います」と、メッセージを送った。

【作品情報】
ブータン 山の教室
2021年4月3日(土)より 岩波ホール他にて全国順次公開
配給:ドマ
(c)2019 ALL RIGHTS RESERVED

  • 作品

ブータン 山の教室

公開年 2019年
製作国 ブータン
監督  パオ・チョニン・ドルジ
出演  シェラップ・ドルジ、ウゲン・ノルブ・へンドゥップ、ケルドン・ハモ・グルン、ペム・ザム
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