脱走の目的は死 第二次大戦中の日本人捕虜による集団脱走事件を追う 「カウラは忘れない」公開決定

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脱走の目的は死 第二次大戦中の日本人捕虜による集団脱走事件を追う 「カウラは忘れない」公開決定

 史上最多の集団捕虜脱走である”カウラ事件”の真相に迫るドキュメンタリー映画「カウラは忘れない」が、劇場公開されることが決まった。

 「カウラは忘れない」は、太平洋戦争中の1944年8月に、オーストラリアの田舎町カウラにあった捕虜収容所で起こった、近代戦史上最大といわれる捕虜脱走事件(カウラ事件)を追ったドキュメンタリー映画。日本人捕虜234 人、オーストラリア人の監視兵ら4人が死亡した事件について描き出されている。

 「戦陣訓」に象徴される「捕虜を恥」とする旧日本軍の教義によって、日本人捕虜の正確な目的は「脱走」ではなく「死」だった。一方、収容所で手厚い保護を受けた生活を送るうち、捕虜たちの間には生への執着が芽生えていたが、「生きたい」という思いは、「貴様らそれでも帝国軍人か!」の言葉にかき消されてしまう。脱走の決行の是非は、全員の投票によって決められるのだった。

 同じ状況に置かれたときに大きな声にあらがうことができるかを問い、生存者たちに今なお残る悔恨や、彼らの思いを受け止めようとする若者や演劇人、事件を教訓に和解への道を歩んできたカウラの人々についても取り上げた作品となっている。

 監督を務めているのは、泰緬鉄道における旧日本軍の贖罪と和解に生涯をささげた永瀬隆を20年にわたって取材し続け、ドキュメンタリー映画「クワイ河に虹をかけた男」を手掛けた満田康弘。また、カウラ事件を舞台化した「カウラの班長会議」を作り上げた坂手洋二が本作に協力している。

 本作を製作した瀬戸内海放送の地元である岡山と香川で7月に先行公開され、その後全国で順次公開される予定。

【コメント】

■満田康弘(本作監督)
私にとっては「クワイ河に虹をかけた男」(2016)に続く2作目のド
キュメンタリー映画です。「クワイ河」が捕虜問題のコインの表とすると「カウラ」は裏。戦陣訓に象徴される捕虜の人権無視が泰緬鉄道などでは捕虜虐待に、カウラでは絶望的な脱走を生みました。加えてカウラ事件はその決行へ至る経緯で極めて日本人的な心理が働いています。同調圧力と空気に支配された先の悲劇は、現代の日本人に重い教訓を発しています。

■坂手洋二(本作協力)
オーストラリアで「戦争の狂気」といえば、誰もが真っ先に「カウラ事件
」を思い浮かべる。まわりに何もない大陸の真ん中から、1000人の捕虜たちが、いったいどこへ脱走するというのか。なんという絶望と自己否定の強さ
。その後『カウラの班長会議』という劇を作り、大脱走から70周年の記念行事で上演し、その歴史を抱いたカウラの人たちと交流できたことは忘れがたい。そして今この国で、平和憲法があるという安心感の脆弱さを思う。

【作品情報】
カウラは忘れない
2021年夏、ポレポレ東中野ほか全国順次公開
2021年7月2日(金)~岡山:シネマ・クレール、7月9日(金)~香川:ソレイユ・2先行公開
配給:太秦
©瀬戸内海放送

  • 作品

カウラは忘れない

公開年 2021年
製作国 日本
監督  満田康弘
出演  
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