誰だって愛する人ができたら、24時間一緒にいたいと願うもの。だけど、それが過剰になって、身も心も一心同体になったら、どうなる?そんな疑問に答えてくれるのが、この『トゥギャザー』である。作り上げたのはオーストラリア出身のマイケル・シャンクスで、監督と脚本を担当している。オーストラリアで撮影され、昨年1月にサンダンス映画祭のミッドナイト部門で上映されるや、A24、NEON、Apple TV+、フォーカス・フィーチャーズ、サーチライト・ピクチャーズ、Amazon MGM Studios などが全米配給に名乗りを上げ、結果NEONが約1700万ドルで配給権を獲得した。全米では7月末に公開され、オープニング成績1090万ドルを記録。現在までに全世界で3227万ドルを稼ぎ出している大ヒット作だ。
地方への移住を決めたカップル、ミュージシャンのティムと、小学校教師のミリー。送別会には仲間が大勢集まり、大勢から愛されているが、二人の関係はセックスレス状態で微妙なものだった。引っ越した二人は、近所の森を散策中、大きな穴に落下してしまう。彼らはそこにあった泉の水を、口にしてしまうが、それがきっかけとなり二人の身体に異変が起こり始める。
いわゆるワンアイデアの映画だが、練り込まれた脚本と、丁寧なVFX描写で観客を引き込み、全く飽きさせない。後の伏線となるオープニングからして秀逸と言える。行方不明者の捜索隊に同行していた犬2匹が、森にある大きな穴に落下。泉の水を飲み、2匹が変貌する姿を一瞬だけ見せる。監督は大好きなホラー映画としてジョン・カーペンター監督の『遊星からの物体X』(1982)とデヴィッド・クローネンバーグ監督の『ザ・フライ』(1986)を挙げているが、特に『~物体X』の方はお気に入りで、その影響がこのオープニングには露骨と言ってもいいほど、感じられる。
主役のミリー役にアリソン・ブリー。ドラマの『マッドメン』(2007~2015)のトゥルーディ・キャンベル役や『プロミシング・ヤング・ウーマン』(2020)が印象深い。パートナーのティム役には、現実でもブリーの夫であるデイヴ・フランコ。主役の二人が夫婦であることは、監督が自分のパートナーとの関係をモデルにしていることからも重要な要素となって、映画に男女間の関係をリアルに伝えてくるものとなっている。またブリーとフランコは共同でプロデューサーにも名乗りを上げて、映画製作を土台から支えている。
とはいえ本作はあくまでも低予算作品。撮影はわずか21日しかなく、独学でVFXを学んできたマイケル・シャンクス監督の技術面での裏打ちがあったからこそ完成にたどり着けたと言えよう。また監督自身は技術面よりも、感情面をいかに撮影できるかに重きを置いていたそうで、二人の演技をいかに引き出すかに力を入れたと語っている。
素晴らしいのが、ボディチェンジホラーという、この内容で、観客が見たいと思うものをしっかり用意して、見せてくれる点だ。長い間セックスレスだったこのカップルが、不思議な力で引き寄せ合うようになり、一体となったはいいものの、マンガのようなショットが入り、恐らく場内は爆笑の渦になると思われる。一人でも多くの観客と笑いを共有するためにも早めに映画館に行った方がいいだろう。
先に挙げた2本の他には『エイリアン』(1979)や黒沢清監督の『CURE キュア』(1997)にも影響を受けたというマイケル・シャンクス監督。次回作ではA24と、謎めいたホテルを舞台にしたスリラー『Hotel Hotel Hotel Hotel』(原題)を製作することが決まっているとのことなので、そちらの完成も心待ちにしたいところだ。
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飯塚克味(いいづかかつみ)
番組ディレクター・映画&DVDライター
1985年、大学1年生の時に出会った東京国際ファンタスティック映画祭に感化され、2回目からは記録ビデオスタッフとして映画祭に参加。その後、ドキュメンタリー制作会社勤務などを経て、WOWOWの『最新映画情報 週刊Hollywood Express』の演出を担当した。またホームシアター愛好家でもあり、映画ソフトの紹介記事も多数執筆。『週刊SPA!』ではDVDの特典紹介を担当していた。現在は『DVD&動画配信でーた』に毎月執筆中。TBSラジオの『アフター6ジャンクション』にも不定期で出演し、お勧めの映像ソフトの紹介をしている。
【作品情報】
トゥギャザー
2026年2月6日(金) よりTOHOシネマズ 日比谷他ロードショー
配給:キノフィルムズ
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