ストーリー・あらすじ紹介　ヒミズ

普通最高！

中学生の住田祐一は、貸しボート屋で母親と2人で暮らしている。ある日住田は、洗濯機の中にある拳銃で自分の頭を撃ち抜く夢を見る。住田は普通であることを願って生きており、クラスメイトの茶沢景子はそんな住田が好きで、住田語録を紙に書いて部屋中に貼っている。ある日、授業中に先生から夢を持つように言われた住田は、「普通最高！！」と叫び、拳を突き上げる。

住田の父

住田の住む貸しボート屋の周りには、東日本大震災で家族や家を失った人々が住み着いている。元社長の夜野正造、田村圭太・圭子夫妻に加え、まーくんと藤本健吉が新たに加わる。ある日、住田の父が母に金をせびりにやって来る。横柄な口をきく住田を殴る父。さらに父は、「おまえなんて溺れた時に死ねばよかった」と口にする。

呪いの石

大雨の日、茶沢は傘のない住田を傘に入れてやり、家まで送る。途中で土手から落ちた茶沢は、住田の家で服を借りる。だが、五七五ゲームを急にはじめて住田をたたく茶沢に、住田が怒る。住田にたたかれて帰るように言われた茶沢は、河原の石を拾い、これから住田に腹が立ったら「呪いの石」をポケットに入れ、いっぱいになったら投げつけると話す。

親を失う住田

住田の母が家財道具を持って愛人と家を出ていく。親を失った住田は、学校に行かずに貸しボート屋で働くことにする。そのことを知った茶沢は、ボートハウスを手伝うことにするものの、住田に嫌がられる。一方、スリのテル彦の腕前を見た夜野は、住田のために金を稼ごうと、テル彦に弟子入りを志願する。だが、テル彦から麻薬の売人の部屋から2,000万を盗む話を持ちかけられ、怖気づいて逃げ出す。一方、茶沢も親から虐待されていることが明らかになる。

ヤクザの金子

住田の父が600万を借りたヤクザの親分である金子が、子分の谷村と一緒にボート小屋にやって来る。父親が戻ってきたら電話するように渡された名刺を投げ捨てた住田を、谷村や金子が殴りつける。それを見ていた夜野がやめるように言い、夜野も殴られる。夜野は、住田を助けるために金を作ろうと、テル彦のアパートを訪れる。

夜野の殺人

売人のアパートに泥棒に入った夜野とテル彦は2,000万円の現金を見つける。帰ってきた売人に見つかるものの、テル彦が売人を殺害する。夜野とテル彦は売人を森に埋めようとする。夜野はシャベルでテル彦を殴り殺し、金を持っていく。一方、茶沢がチラシを配ったおかげもあり、ボート小屋には多くの客が訪れる。そこに金をせびりに父が再び現れ、住田を殴る。住田はコンクリートのブロックを父に向けて振り上げるが思いとどまる

住田の殺人

ある夜、再び住田の父がボート小屋にやって来る。これまでにも何度も言われてきた、「川で溺れた時に死ねば良かった」という話をされる住田。「おまえ、本当に要らねえんだ」と言われた住田は、帰ろうとする父の頭をコンクリートのブロックで殴って殺害する。住田は、泥まみれになり、絶叫しながら川べりに穴を掘り、父の死体を埋める。

オマケの人生

自首もせず、死ぬこともできない住田は、“オマケの人生”を使って最後に悪いやつを殺して、社会の役に立とうと考える。顔中に絵の具を塗りたくった住田は、包丁を紙袋に入れて町の中を歩き回る。金子の元に現れた住田は、手荒く迎えられると思っていたが、金子に優しく迎えられる。住田は、夜野が住田の父の借金を返済していたことを知る。

テープを聞く茶沢

ボート小屋を訪れた茶沢は、住田がテープに吹き込んだ「こんなゴミ以下の命でも、社会のために使いたい」という言葉を聞き、住田に何かがあったとことに気づく。ボート小屋に戻ってきた住田は、夜野に出ていくように言い、茶沢の制止を振り切って再び町をさまよう。ある夜、ストリート・ミュージシャンをナイフで襲う男を殺そうとするが、男は取り押さえられて殺すことはできない。

洗濯機の銃

ボート小屋に帰ってきた住田に茶沢が人を殺したのかを聞くが、住田はウソをつく。住田は勝手にテープを聞いたことに怒り、茶沢を追い返す。その後も町をさまよい歩く住田は、金子と会う。ボート小屋まで車で送ってくれた金子は、住田が包丁を持っていることに気づき、銃を渡そうとする。断る住田だが、金子は洗濯機の中に銃を入れて去っていく。洗濯機の中の銃は、以前に住田が夢で見たシチュエーションと同じだった。

告白

住田は茶沢に、父親を殺して埋めたことを告白する。茶沢は自首するように話すものの、住田は受け入れない。茶沢は住田の自殺を心配している。別の場所に移っていたまーくんは、住田が拳銃で頭を撃ち抜く夢を見て、住田が危ないと考え、夜野たちとボート小屋に戻ってくる。夜野や茶沢たちは、ペンキを塗って貸しボート小屋をきれいにし、大騒ぎをして住田に元気を出してもらおうとする。